第11話 スキルの見直し

 オレたちはギルドから、パレード本番の警備を任されることに。といっても王様を直に守るのではなく、周辺の警護なのだが。


 パレードが始まる日まで、街とダンジョン潜りを往復する。


 女王スズメバチを撃退したダンジョンの他に、怪しい人物がいないかのチェックも兼ねた。


 とはいえ、例の怪しい人影がいる気配はない。


 遺跡型のダンジョンだから、潜伏しやすいかなと思ったのだが。


「暗視魔法、便利だな」


 真っ暗だった壁が、はっきりと見える。


 これがあれば、暗いダンジョンもしっかりと見渡せる。


「ただドンギオ、気をつけてください。暗視魔法は光があると」


「うわ!?」


 スケルトン魔法使いの火炎魔法が、オレの眼前に。オレは一気に、視界を奪われた。


「ドンギオ、大丈夫ですか?」


 シールドで殴って、メルティがガイコツを倒す。


「すまん」


「暗視は便利といえば便利なんですが、あんな感じで光があると眩しすぎるんです」


 その弱点をついて、強い光を相手に当てる攻撃もあるらしい。


「わかった。おとなしく照明魔法を使う方がいいな」


「ですね」


 燭台に、メルティが火を灯していく。


「強いモンスターが、たくさんいるな」


 最初の街と比べると、強めの魔物が多かった。これはいい狩り場である。元冒険者なのか、スケルトンが特にレベルが高い。同じスケルトンでも、ずいぶんと強さが違った。


「レベルがどんどん上がって、ポイントが有り余っています。ビルドについて、相談したかったんですよ」


 特にメルティは、スキル振りに問題がありそうだ。それも個性と言えるが。少しアドバイスをすれば、かなりの戦力になるはず。


 一旦引き上げ、拠点に戻る。


「スキル表を見せてくれ」


「はい」


 スキルを見せてもらった。


「おお……【アーマーナイト】を取ったのか」


 重装歩兵中の重装歩兵職じゃないか。

 線の細いエルフでは、まずアーマーナイトは選ばない。


「メルティ、【フェンサー】って選択肢はなかったのか? あっちも一応、回避タンクという役割がある」


 フェンサーは、レイピアと小型盾を主体とした、回避型の戦闘スタイルを持つ。

 エルフで戦士職を目指すなら、フェンサーが主流だろう。


 抜群のルックスを誇るメルティなら、レイピア片手に貴族姿でフェンサーとして活躍できそうだが。


「ドンギオ、どうしました?」


 至近距離で、メルティがオレの顔を覗き込む。

 おお、妄想が過ぎてしまったか。


「な、なんでもないよ。それよりフェンサーを選ばなかったのはなぜだ?」


「考えてはいましたが、それだと顔を隠せません。覆面になりますからね。身体のラインも隠したかったので」


 あくまでも、全身ヨロイで身を包む必要があったと。

 この辺は、無理強いできない。


「あとは、【シャーマン】と」


 回復魔法主体の、巫女とも呼ばれる職業だ。


 生産職は、【ハーバリスト】を持っている。


「この調子で行けば、魔法戦士か、パラディンかなぁ」


「どっちも中途半端になりそうなのです」


 攻撃魔法付与寄りのビルドにするなら、魔法戦士だろう。


 回復・防御を中心に伸ばしたいなら、パラディン一択となる。


「防御面を強化して、【ハーバリスト】のスキルも伸ばしていくとなると、パラディンのルートだな」


 攻撃は、オレがメインになったほうがいいな。


「自分で回復もできるのは、いいですね! そうします」


「とはいえ、好きにやらせたい。その方針は変わらないからな」


「いいんですか? ワタシ、ポンコツのままになりますよ」


「オレ自身が、好きな振り方をしているからな」


 で、オレの方は。


「オレは、【バトルメイジ】を目指している」


 近接に寄せた、魔法使いだ。両手持ち武器を使った近接特科職の【バーバリアン】と、攻撃魔法に優れた【ウィッチ】を取っている。


「ほぼ魔法に、寄っていますね」


 魔法使いになりたかったオレは、レベルアップで入手したステータスポイントも【INTインテリジェンス】、つまり知力に多少は振っている。


「てっきり頭がよくなるだろうと振っていたが、いくらポイントを振っても天才にはならなかったんだよな。なんでだ?」


「INTは、魔力上昇の効果しかありません。魔法の知識を学べるわけじゃないんです」


「なんだ。上げ損じゃないか」


 自頭が良くないと、魔法の知恵は身につかないんだな。


「学習しないと、魔法の使用法などは手に入りません」


「ポイント振りで楽をしたらダメってことか。よくわかったよ」


「ですが、ドンギオに魔法使い、というか魔法少女の素養があるのはたしかです」


 そんな素養はいらないんだが。


「どんな要素があるってんだ?」


「魔力の量です」


 どうもオレは、ほぼ無限の魔力量を誇るらしい。


「おそらく筋力が多少犠牲になって、魔力に変換されているみたいです。ステータスポイントをINTに振っているでしょ? その影響力が三倍になっています」


 知らなかった。なんとなく振っていたのだが。


「魔法攻撃力が上がっていないので、わからなかったのでしょう」


「で、魔法の攻撃力ってのは、何で上がるんだ?」


「それが、INTなんですよねえ」


 メルティが、頭を抱えた。


「おかしいんです。INTを上げれば、魔法攻撃力も上がるはずなんです。しかし、魔力の総量だけが上がっていますね」


「使用している魔法が、【エンチャント】だからでは?」


「エンチャントでも、魔法攻撃力は武器の攻撃力に依存します。魔法攻撃力に武器の攻撃力、使用者の攻撃力ステータスを合わせて、攻撃力は加算されるはずなんですが」


 INTが高い割に、オレの魔法は腕力依存なのだそうだ。


「この謎が解明されないと、攻撃力アップは難しいかもですね」

「わかった。じゃあ当面の間、装備面を見直すことにする」


 装備の強度が高ければ、攻撃力も上がるとわかった。ならば、装備の威力を上げればいい。




 パレード本番まで、オレは装備面をガラッと変えることにした。


「よっしゃ。今回もダンジョンへ行こうぜ」


「はい。おや?」


 道中、メルティがなにかの騒ぎ声を聞き取ったらしい。


「あっちです!」


 メルティが、街道まで進む。


 豪華な馬車が、ケンタウロスなどの魔物に襲われているではないか。


「国王様の馬車ですよ、あれは!」


 ケンタウロスに、馬車が体当たりを食らった。


「あいたーっ!」


 幼い少女が、馬車から吐き出される。白いローブを羽織っている少女は、小さいながらも高い魔力を発していた。こめかみにあるのは尖った髪留めと思われたが、違う。角だ。


「あれは、竜人族か!」

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