第9話 スズメバチの大ボス
その日の夜、オレたちは作戦を決行した。
予めギルドに報告をして、チーム編成をしてもらってある。
ボスはこちらで倒す。その際に、兵隊のスズメバチを追い払う。
「そのための武器が、こちらになります」
オレは、丸太を用意した。先端を尖らせている。
「おお、ドンギオ特製投げヤリですねっ!」
「そうそうメルティさん。こちらに氷魔法を施して吹雪爆弾を起こすんです!」
路上販売のような口上で、二人きりで話し合った。深夜のテンションで、お互いもうワケがわからない。
「おりゃあああ! 特大アイスジャベリン!」
大木に向かって、氷魔法を施した丸太を投げ飛ばす。
敵のボスに、突き刺すわけじゃない。兵隊を退散させるためである。
音と氷のダブルショックで、ハチ共が散っていった。
冒険者たちには、逃げたモンスターハチを村に越させないようにしてもらう。
デカい兵隊モンスターは、思っているより少ない。夜にハチは動かない。動きも鈍っているはず。
氷魔法で羽をやられているのか、逃げたハチの動きが鈍い。
「よし、乗り込むぞ!」
警備が手薄になったのを見計らい、大木型ダンジョンへ。
ハチというより、クマが出入りしていそうな入り口だ。
「天井も高いな! どれだけ巣食っているんだ?」
大木の地下に、こんなダンジョンがあったとは。
「司令塔大型スズメバチ発見!」
「メルティ、弓を」
オレが敵の方角を指し、メルティが弓をつがえる。
「ほっ!」
一発目は、羽をかすめた。
「惜しい! あと一三度くらい左!」
「はっ!」
二発目の矢は、足を切断する。
「もうちょっと!」
「よっ!」
「OK!」
腹に一撃を喰らい、大型スズメバチが悶絶した。そのまま全身が凍っていき、動かなくなる。
二匹目のスズメバチボスが、オレの頭上を通り過ぎていく。
「ホーミング・アローッ!」
振り返りもせず、オレは上空へ矢を放った。
氷魔法に追跡の魔法を施して、大型スズメバチのボスの背中に突き刺す。
同じように、大型の敵は落下して絶命した。
「ずるい!」
「弓のスキルを上げたの! メルティこそ、エルフだろ?」
「狩猟は風魔法でやっていたので」
近接以外は、頭に入っていなかったらしい。
やたら広々とした空間まで、オレたちは出てきた。
「ドンギオ、見てください! 奥で寝ているのが、女王です!」
なんだ、あの巨大スズメバチは? 三〇メートルはあるじゃないか
兵隊ハチのように、腹部分が巣になっている。
女王が、こっちを見た。
「今のうちに」
弓を構え、メルティが矢をつがえる。
「待て! なにか来る!」
女王の腹がうごめいた。中から、真っ白い女性の体型をしたモンスターが。
先端に針がついたムチを、手に持っている。
モンスターは女王を守るように、オレたちの前に立つ。
「こいつは、戦闘用の女王か」
「人間を食べて、形成したようですね」
オレとメルティは、連携して弓を放った。
しかし、弓はムチで弾き飛ばされる。オレが魔法を施したホーミングアローも、叩き落されてしまった。
「強い!」
「大丈夫です! このモンスターは、女王と連結しています」
つまり、こいつを倒せば女王も死ぬ。
「ワタシがヘイトを稼ぐので、ドンギオは女王を!」
「よし!」
オレは、戦闘型女王の横を通り抜けようとする。
戦闘型女王も、ムチを二本構えた。
「うわっと!」
行く手を、ムチが妨害する。
「倒さないといけないようだな!」
どうせ、次の街でも何かと戦うだろう。経験は積んでおくか。
戦闘型女王の戦闘力は、凄まじい。メルティを相手にしつつ、オレの足止めも忘れない。
メルティだって、結構戦えてるほどの経験値は獲得したはずだ。攻撃面や防御面も、オレが見直した。が、押されている。
オレがきになるのは、やはり体中に突き出た魔輝石だ。あれがヤツを、パワーアップさせているのだろう。
魔輝石に、そんな使い道があったとは。
「本気を出さなければいけないか!」
魔法を使って攻撃したいとは、思っていた。こんな力でなかったら。
オレはハンマーに魔力を注ぎ込む。
ハンマーの先が、ハート型に変わった。青い氷型のハートが、完成する。
なぜか、女王が驚きの顔を見せた。この力に関して、なにか知っているのか?
とはいえ、言葉を話せない相手に情報を聞き出すのはムリだ。倒させてもらう。
「トルネード!」
コマのように身体を旋回させて、跳躍した。
「からのぉ、ビッグバン・プレス!」
空中で身体を横へ向けて、ハンマーを振り下ろす。
戦闘型女王が、ムチで塞ごうとした。
「やらせません!」
メルティが、ムチの先を剣で切り裂く。
むき出しになった女王の頭に、オレはハンマーを叩き込んだ。
女王も抵抗していたが、逆方向へ背骨が折れた。
「黙って潰れとけ!」
渾身の力を込めて、オレはハンマーを沈めていく。
ハンマーは女王の表皮を砕き、肉を押しつぶした。
戦闘型女王の身体が潰れ、あとは魔輝石だけが残る。
奥で眠っていた女王の身体が、ビクンと跳ね上がった。
そのまま、女王の身体がしぼんでいく。
身体が灰色に変色していき、最終的に女王は化石のように固まった。
「やりましたね、ドンギオ!」
「ああ。課題も多かったが、うまくいった……ん?」
オレは、洞窟の奥に何者かの気配を感じる。
だが、オレが視線を向けるとフッと人影は消えてしまった。
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