第62話 グローリの成長

 ロッサとグローリは武闘大会に出ていて、丁度最後の四人になったところで予選が終わったころである。


「おーっと!ここで最後の四人が決まりました!はたして本戦ではどのような戦いを繰り広げてくれるのでしょうか!」 


 司会が観客達を煽っていると、控室で待っている四人の元へ受付の男がやって来て抽選箱らしき箱を持って来た。


「これから本戦のくじ引きをやりまーす!」


 そう言われると最後まで残った四人は抽選箱の前に立つ。


「いやぁ、誰と誰が戦うのかなぁ?!」


 それを聞いていた四十二番のイスラという選手がグローリに挑発していた。


「よくそんな図体で残れたな!運に味方してくれたってか?調子の良い奴だ!」


 グローリは自分が煽られているとも知らずに大声で笑っていた。するともう一人の選手で七十五番のマクロという名の選手がイスラを諫めていた。


「やめるんだ。挑発したってその男には効かないようだ。底知れぬ精神力の持ち主なんだろう。そんなオーラを感じるぞ。」


「このおっさんがねぇ・・・。」


 そんな話をしていると受付の男が困り顔で言ってきた。


「あのぉ、早く引いてください・・・。」


 そう言われると四人は箱の中に入っている棒を一斉に引き抜いた。棒の色は赤と青の二色でそれぞれ同じ色が次の対戦者になるということだった。


 四人の引いた棒の色はこうだ。グローリとイスラが赤色、ロッサとマクロが青色でちょうど四人は良い具合に別れるとグローリが言った。


「これで決勝はロッサと戦えるな!」


 するとイスラはイライラしているのかグローリに向けて言った。


「もう勝った気でいるのかデカブツ!本戦でボコボコにしてやるから覚えとけよ!」


 イスラは怒ってしまい何処かへ行ってしまった。


「いやはや、私の相手はあなたですか。強敵ですね。気を付けてかからないと危なそうだ。」


 ロッサは常にオーラを隠しているのでオーラを小さくしているがこのマクロという男には何か見抜かれているような気がしているロッサだった。


 くじ引きをして数分後。やっと準備が整ったのか司会のコールが会場全体に響き上がる。


「さぁ会場の皆様!いよいよ本戦が始まりまぁぁぁぁぁす!第一回戦はグローリ対イスラ選手です!武舞台に上がってください!」


 武舞台に上がると司会者が選手紹介をグローリからし始めた。


「グローリ選手はさすらいの旅人でありSランク冒険者の肩書を持つ大剣使いの大柄の男がこの大会で素手で戦うというのだ!皆さん注目して見ていてくださぁぁぁぁぁぁい!」


 次にイスラが紹介される。


「続いてはイスラ選手!イスラ選手は全大会の準優勝者であり、かなりの実力を持った格闘家だぁ!素早い攻撃にグローリ選手は太刀打ちできるのでありましょうか!」


 司会が選手の紹介をした後に会場が静まり返り司会が試合開始の合図をする。


「それでは!第一試合初めてください!」


「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 観客が大きな声で騒ぎ立てる。


「凄い熱気なんですけど・・・。」


「そうだな。観客も熱くなっているようだ。」


 観客席にいたマナとアリッサは暑苦しそうだった。


 そして試合が今始まる。


 イスラは構え素早い横移動でグローリの目をかく乱をさせようと移動しながら近づいてくる。グローリは拳を握るとその素早い動きを捉えるかのように近づいてきたイスラにパンチを食らわせた。


「な、なに!」


 イスラは驚いていた、超人とも言える速さで動いていたのをいとも簡単に捉えられグローリの一撃を食らってしまったのだ。しかもそのグローリの攻撃は非常に重くイスラの体力を大幅に削った。


「俺だってなぁ鍛錬してきてるんだ!素手でも戦えるって所を見せてやるぜ!」


 グローリが重そうな足取りでイスラに近づくとイスラは避けようとするがしかし避けた先にグローリの重い拳がまた飛んできたのである。


「ぐはぁ、何故だ!何故当たる!」


「お前のスピードは俺にとっては遅すぎるんだよぉ!」


 グローリは何度もえげつない速さの戦いを見てきた上で、イスラの速さ程度ではあまり凄いとは感じなくなり普通に見えていたのだ。そして次々とグローリの攻撃がヒットするイスラはよろめきながら距離をとり、何かをしそうな雰囲気に包まれていた。


「お前なんかに負けてたまるかぁ!」


 そう言うとイスラの周りのオーラが高まり始めイスラの様子がみるみる変わって行った。髪の毛が逆立ち目が赤くなりいわゆる狂人化と言う状態変化を繰り出してきた。その様子を見たグローリはイスラに言った。


「戦いの中で理性を失っちゃあダメだぜ!」


 そう言うグローリだったが一瞬の間合いでイスラが攻撃を仕掛けてきた。グローリの腹に入った攻撃を見てイスラは大声で笑った。


「はっはっは!あーっはっはっは・・・え?」


 グローリは腹に一発食らったがダメージはあまり入っていなかった。


「狂人化ってすげぇな!パワーもスピードも段違いだぜ!楽しいなぁ!」


 イスラはその言葉を聞くと頭に血が上ったのかグローリを殺す勢いで攻撃をし続けた。だがしかし、グローリはそれに耐えながら的確に攻撃をイスラに食らわして行った。


「狂人化も長引くと辛いだろう?ここで終わりにしてやるぜ!」


 そう言うとグローリは拳を正拳突きのように構え遠い所にいるイスラめがけて拳を突いた。すると空気が拳で突かれその一撃はイスラの体に命中してとてつもない威力で武舞台の外へ飛ばした。最後にグローリが呟いた。


「名付けて真空拳と言った所かな!」


 場外に飛ばされたイスラの狂人化は解け気絶していた。その時、司会からアナウンスされた。


「第一試合!勝者はグローリ選手!」


 観客は大声で騒ぎだしグローリに注目を集める。グローリは勝った喜びを感じつつ観客に手を振った。


「ま、あんな奴に勝てなきゃダメよね!」


 マナは仲間が勝てて少し嬉しいのか笑顔で言った。


「近接戦闘もいけるようになるとは私も勉強しなくては。」


 アリッサはグローリの成長をひしひし感じていたのだった。


 控室に戻ってきたグローリはロッサの元へ歩み寄った。


「勝ったぜ!」


 満面の笑みでそう言うグローリに対してロッサは「やったね!」と言い後は何も語らず椅子に座ったグローリ。次はロッサの番だと言わんばかりの空気を漂わせロッサも武舞台へ進んでいく。


 武舞台に上がるとマクロが話しかけてきた。


「うん。キミはなかなかやるようだから全力を出しても良いみたいだね。」


 ロッサはマクロがそう言うと楽しみなのかマクロに言った。


「さぁ!戦おうか!」


 ロッサはマクロの言った事がどういう意味なのか分からないでいた。


「死なないでくださいよ・・・。」


「え?」


「それでは第二試合初めてください!」


 果たしてマクロの言った事はどういう事なのか、ロッサに降りかかる脅威となるのかロッサはまだ知らない。


「あいつ強そうだなぁ。」


次回へ続く・・・。



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