第48話 ロッサの怒り

 魔王ノーティカの策略によって大勢の魚人達に周りを囲まれてしまったロッサは魔王ノーティカに対して怒っていた。


「正々堂々と僕と戦え!」


「いいとも。お前が生きていたらな!」


 魔王ノーティカはそう言うと高台の上から高みの見物をしている。そして魔王ノーティカはこう叫んだ。


「さあ!そこの人間を殺せえぇぇぇぇ!」


 魔王ノーティカの号令で一斉に襲い掛かってくる魚人達にロッサは剣技で薙ぎ払った。


真空波斬しんくうはざん!」


 まるで円を描くように剣を三百六十度に降ると剣の先から波動の刃が飛ばされ襲い掛かって来ていた魚人達を一掃した。


「さあこれで残りはお前だけだ!魔王ノーティカ!」


 魔王ノーティカは面白くないのか少し不機嫌そうにロッサに答えた。


「ふん。雑魚を倒しただけで調子に乗るなよ!」


 そう言うと魔王ノーティカは高台から降りてきた。片手には槍を持っているがそれに対してロッサは片手で持つ日本刀の様な剣でリーチがある槍の方が少し有利だと感じる相性だったのだ。


「さあ!お遊びの時間だ!」


 そう言うと突撃してくる魔王ノーティカ。ロッサは魔王ノーティカの槍の先に魔法が仕込まれているのを見破っていた。


「おらぁ!」


魔王ノーティカは槍を突き刺してくると槍の先が魔法で爆発したがロッサは隠し魔法を見破っていたので上手く間合いを取りその攻撃をかわした。攻撃をかわすとすぐさまロッサも反撃をする。リーチが短い分スピードで補おうとするロッサ。


「おのれぇ。ちょこまかと調子に乗りやがりおる!」


 一年間の修行でとてつもない力を手に入れたロッサの本気のスピードは魔王ノーティカでも追うのに精一杯だった。


 ロッサは魔王ノーティカに斬り掛かるが間一髪でその攻撃をかわした魔王ノーティカは焦りを感じていた。魔王ノーティカからすればロッサは格下だと思っていたからだ。本来ならば瞬殺できる相手なはずなのに予想を遥かに越える実力を見せてきている。するとロッサが魔王ノーティカに言った。


「どうした!魔王の実力はその程度か!」


「な、なんだとぉ!」


 魔王ノーティカは水の魔法を発動させると海底都市アクアを包んでいるドーム状の空気の層から上にある海水を竜巻の様に変化させロッサの方へ襲わせた。その竜巻はコロシアムの中を駆け抜けロッサに向かってきていたがロッサは風魔法を剣に纏わせるとその竜巻を振り払う。


 すると竜巻が風に押し戻され魔王ノーティカの方へ返される。竜巻の中には水で作った刃の様なものがあり竜巻に巻き込まれるとその刃に切り刻まれる仕組みになっていた。魔王ノーティカはロッサに押し戻された水の竜巻を食らってしまった。


「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」


 ロッサは魔王ノーティカに追撃を仕掛ける。水の竜巻の中に雷属性の魔法を混ぜ込み更にダメージを負わせた。魔王ノーティカはその追撃を食らうと非常にこたえていたが己の気合で水の竜巻を打ち消した。


「うぐっ。このような力が・・・。」


 魔王ノーティカは何を想ったのか、逆上したのか分からないが体を巨大化させてきたのだった。


「はっはっは!これで貴様も終わりだ!ぐちゃぐちゃに踏みつぶしてやるわ!」


 しかしロッサにとって巨大化した魔王ノーティカは簡単な相手だった。巨大化する前の魔王ノーティカは槍のリーチがあり上手く攻撃が出来ない相手だったが、巨大化してしまっては攻撃の当たる範囲が数倍にもなるのでロッサの攻撃が面白いほど当てる事ができるのだ。


 超スピードで魔王ノーティカの体に傷を付けていくロッサ。魔王ノーティカは必死に攻撃を当てようとするが何故だか当たらない。


「何故だ!何故当たらん!」


 思考することを怠った魔王ノーティカにロッサは言った。


「そりゃそうさ!いくら巨大化してもスピードが疎かになるんだ!そんな鈍足な攻撃当たるもんか!」


 そう言うとロッサは炎魔法の黒炎弾こくえんだんを最大威力で放った。見事魔王ノーティカに直撃したその魔法は魔王ノーティカを焼き殺せてしまう程に黒く燃え上がらせていた。


 ロッサは気絶している魔王ノーティカの元へ近寄り炎を消してその場を去って行った。


 数分後空き地でマナ達と合流しようとロッサは倒れている剣豪を抱え空き地へ向かった。空き地へ行くと剣豪の家族らしき魚人がそこには居た。


「あなた!」


「パパ!」


 空き地に辿り着くとマナ達に親指を立て救出の成功を喜んだ。剣豪の家族には命に別状は無いと伝えると泣いて喜んでいた。ロッサ達は早くこの国から出ないといけない事を伝えると剣豪が起きだして言った。


「我々家族もこの国には居られなくなったな。どうしたもんか。」

 

 すると剣豪の家族達が剣豪にこう言っていた。


「私はあなた達といられるならどこへでも行くわ!」


「僕もどこだって行くよ!」


 ロッサはどうにかして剣豪達を逃がしてあげられないかと考えた。すると一つの策がを思いついた。


「そうだ!デニス王の所で匿ってもらおうよ!」


「それはいい考えかもしれないわね。恩も売ってあるし・・・。」


 マナは悪い顔をしている。


「デニス王の所かぁ。あそこなら快く受け入れてくれるだろうなぁ!」


 そういう訳で早速デニス王の元へ空間転移しようとすると距離が遠すぎて魔王探知が届かなかった。


「ど、どうしよう。」


 するとマナが素晴らしい助言をくれた。


「魔王ゾールの場所なら分かるでしょ?あいつの所ならオーラがデカすぎるから転移できるんじゃない?グリエルからだったらデリオールに転移できるんじゃないかしら。」


「確かに!」


 そう言うとすぐに魔王ゾールの元へ転移するロッサ達。


「ふっふっふ。まさかもう私の出番が来てしまうとはな!ロッサよ私と戦うのだ!」


 ロッサは転移してきたところ急いでいたので魔王ゾールの話など聞かずにデリオールへ転移して行ってしまった。あっという間の出来事にただそこに呆然と立っていた魔王ゾール。


「・・・え?」


 すると側近の魔人が一言魔王ゾールに言った。


「まだ出番じゃないらしいですよ。」


「そ、そうか。」


 魔王ゾールは少し寂しそうだった。


 そして無事ロッサ達はデニス王の元へ転移できた。


「おぉ!ロッサ達か!いきなり来るから何事かと思ったぞ!」


 するとロッサはデニス王に事情を説明してこの魚人達を匿ってくれないかとお願いしてみた。デニス王は胸を叩き言った。


「そういう事なら私に任せなさい!」


 なんとかデリオールで暮らせるように手配してくれるという。人間界では魚人族は珍しいだろうがデリオールなら大丈夫だろう。何せあの心優しいデニス王なのだから。


 魔王ノーティカを倒したので疲れが出てきたのか急に体が重くなるロッサ達は一晩城に泊まらせてもらうことにした。その晩、魔王ノーティカは復讐心に駆られていた。


「あの人間めぇ!今度会ったら必ず殺してやる!それまで待っていろよ!」


 ロッサは変な寒気がして起きてしまった。すると案の定隣にはもうマナが居た。


「どうしたの?」


「なんでもないよ。」


 ロッサは何事も無かったかのようにまた眠りに着いた。


「あの爺さんとまた戦いそうだなぁ。」


次回へ続く・・・。

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