第47話 卑怯な策略

「続いてはぁ!第七試合!決勝戦!匿名選手対ロッサ選手ぅぅぅぅ!」


 自分の名前が呼ばれたロッサは武舞台の上へと上がっていく。武舞台の上に上がったロッサは拳を合わせこう言った。


「よし!やるか!」


 ロッサは楽しみでいたのだ。今の脅かすかもしれない相手とたたかえるのだから。そんな様子のロッサを見て魚人の剣豪はロッサに問いかけた。


「楽しみか?俺と戦うことが。」


「楽しみさ。全力でかかって来るんだな。」


 そして司会が試合開始の合図をする。


「さあ、いよいよ決勝戦第七試合!始めてください!」


 大きく鐘が鳴る。


 その鐘の音と共に剣豪が剣を抜き物凄い速さでいきなり斬りかかってきた。剣豪は不意を突いたのだろうがロッサには遅く見えたのだった。


 ロッサも剣を抜きすかさず受け止める。剣豪は少し驚いていたが落ち着き距離を取る。そしてこう言った。


「不意を突いたはずなのだがな。貴様には効かぬか。ならばこれはどうだ。」


 すると剣豪は居合いの構えを見せてきた。剣豪の居合の構えを見るとロッサは鬼の里での修行を思い出していた。


(百人斬りやったなぁ。)


 そう思い出すロッサも居合い斬りの構えをする。会場は二人が全く動かないのが気に食わないのか騒ぎ出した。


「早く動けえぇぇぇぇぇぇ!」


「何やってんだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 そんな観衆には目もくれずにロッサと剣豪は間合いを詰めていく。すると一瞬の出来事だった。二人は誰の目にも止まらぬ速さで斬り合いロッサはその場に立っていた。剣豪はうずくまりロッサに対して称賛を送った。


「見事なり。その太刀筋華麗な一撃であった。」


 そう言われるとロッサは嬉しそうに答えた。


「師匠が良いからね!」


 すると剣豪は立ち上がり目の色を変えこう言った。


「だが!ここで終わるわけにはいかぬ!」


 剣豪は自分の血で剣を染め何やら魔法を唱えていた。


「ブラッディソウル!」


 ブラッディソウルとは自分の血を代償に一時的に身体的強化を施すと言ったいわば捨て身の強化魔法といったところで体力を大幅に使ってしまうデメリットがある。


「行くぞ!」


 先程とは比べ物にならない動きで突進してきた剣豪は素早く重い攻撃をして来た。だが、ロッサはその攻撃を受け止めた。攻撃を受け止められた剣豪は焦っていた。自分の体力が尽きるまであまり時間が無いのだ。ロッサはこんなにも必死な剣豪を見て何かを悟り剣豪に問いかけた。


「何をそんなに焦っているんだ!」


 剣豪は汗をかきながら呟いていた。


「私は勝たなければいけないんだ。勝たなければ。」


 とても強く勝ちにこだわっている様子で剣豪は今までにないくらい冷静ではなかった。ロッサは気になったので剣豪に魔法通信を繋げてみた。


(どうしたんだ!何故そんなに勝ちにこだわっているんだ?!)


(な、頭の中に声が。)


 ロッサは自分が魔法通信で会話をしていることを剣豪に伝えるとロッサと剣豪は戦いながら魔法通信で会話をしていた。


(実はな、家族を魔王ノーティカに連れ去られたのだ。)


 魔王ノーティカに家族をさらわれ無理矢理闘技大会に出場させられ人間を倒して優勝しなければ家族を殺すと脅されているのだという。


(魔王ノーティカは相当クズなんだな。)


 ロッサは一目散に魔法探知を最大限広げると王宮に居る剣豪の家族らしき反応を捉えた。そして魔法通信を待合室で試合を見ていた三人に繋ぎ事情を説明して剣豪の家族を助けるように指示を出した。幸いにも魔王ノーティカはこのコロシアムの一番高い所で試合を見ていて王宮には兵士ぐらいしかいなかったので都合が良かった。


「よし!皆行くわよ!」


 ロッサに指示された三人は早速剣豪の家族を助け出しに行った。


(僕の仲間達が助けに行ったからもう大丈夫だよ。)


(まだ助かっていないのだ!安心はできぬ!)


 剣豪は魔王ノーティカに見張られている以上いつ家族を殺されるか分からない状態だったのだ。すると剣豪は気合を込めて叫んだ。


「私は諦める訳には行かないのだ!」


 更に威圧感を放つ剣豪にロッサは身構えた。剣豪はまた更に激しく荒い剣技を繰り出してきたがロッサには通用しなかった。


 数十分後。剣豪は体力のほとんどを使い果たし立っているのもやっとな状態だった。そんな剣豪は念仏のように繰り返し呟いていた。


「はぁはぁ。負ける訳には・・・。」


 ロッサはどうにかして剣豪を助けたいと思ったがどうにもできない状態であった。するとマナから魔法通信が返ってきた。王宮の地下に牢屋があってそこに女の魚人と小さい男の子の魚人が捕まっていたので助けたと連絡が入った。女の名前はミシャで子供の名前はローリーだと言う。すぐさまロッサは魔法通信を剣豪に繋げ確認をしてみると剣豪は言った。


(そ、それは私の家族たちだ。)


 剣豪はやっと安心したのかロッサに後は任せると言い残すとその場に倒れこんだ。ブラッディソウルの代償は大きく多量出血で死んでしまいそうなほど重症だった。ロッサは近くに行き回復薬をかけてあげた。すると剣豪は安心したような顔で眠っていた。


「決着!優勝は!ロッサ選手!」


 観衆はまたもや凄い大きな雄たけびを上げ興奮して湧き上がっていた。


「うおおおおおおおおおおおおお!」


そして魔王ノーティカは話し出した。


「優勝したか人間よ。それでは私と戦うか?その前に生きていればの話だがな!」


 すると周りに居た観客が全員武装しだして観客席から続々と降りてきてロッサを囲んでいた。そんな様子にロッサは怒りを露わにしていた。


「さっきから卑怯な真似ばかり、許せない。」


 ロッサは剣豪の事といい今のこの現状といい卑怯な手を使って来る魔王ノーティカに怒っていた。


「全員かかって来い!僕が片付けてやる!」


「怒った姿を見るのは初めてかもなぁ。」


次回へ続く・・・。


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