第45話 魚人族との戦い

 いよいよ本戦が始まろうとしている闘技大会。ロッサの第一試合の相手は武術を使う魚人であった。


「いっけえぇぇぇぇ!人間なんてぶっ飛ばしちまえぇぇぇぇ!」


 観衆は完全に魚人の方を応援していてロッサには敵意丸出しだった。


「まあ、こうなる事は最初から分かってた事だけどね。」


 試合が今始まろうとしていた。司会者が始まりの号令を掛ける。


「さあ!そろそろ第一試合が始まります!よーい、始め!」


 大きな鐘の音が響き渡ると格闘家の魚人はいきなり一歩踏み込んできて突撃してきた。並みの人間ならかわせないほどの速さで流石は魚人と言った所である。猛烈な連打でロッサに襲い掛かる魚人はどんどん攻撃を続けて行った。


「ほらほら!どうした!人間ってのはその程度か?!」


 すると自分が優勢だと思い込んでいる格闘家にロッサが呟く。


「最初の相手はこのくらいかぁ。」


 その言葉を聞いた格闘家は驚きを隠せないでいた。


「な、なに?」


 そう言うとロッサは相手の懐にとてつもない強打を一発打ち込んだ。


「ぐほぉ!な、なんだ、と。」


 そう言い残すとその場で倒れこんだ格闘家の魚人は意識を失っていた。その瞬間会場が静まり返った。ロッサがあの格闘家を一発で沈めた事に皆驚きを隠せないでいたからだ。


「お、おい。まじかよ。一発でやりやがったぞ。」


「相手は結構名のある格闘家だぞ?」


 すると観衆は先程のロッサへの態度を忘れたように奮い立ち大歓声が沸き上がった。


「うおおぉぉぉぉぉ!すげぇぞあの人間!」


 それを待合室で聞いていたマナが堂々と胸を張り言っていた。


「当然よ!」


「マナが胸を張ってどうするんだ。」


「まぁいいじゃねぇか!」


 ロッサは武舞台から待合室に帰ってきた。すると真っ先にマナがロッサの元へ駆け寄りハイタッチをして言った。


「楽勝だったわね!」


「油断はできないよ。さぁ次はマナの出番だよ!」


「チャチャッと終わらせて優勝するわよ!」


 マナが武舞台に向かう。次の相手は片手剣使いの魚人だった。ロッサによる魔法鑑定によると戦闘力はかなりあり近接攻撃の魚人対遠距離攻撃のマナだと分が悪いのは後者だった。しかし、マナは近接戦闘も一年間の修行で少しは鍛えていたのだ。いつも身に付けているロッサに作ってくれた短剣で戦おうとしている。武舞台に上がると司会が号令を掛ける。


「それでは!第二試合!始めてください!」


 鐘が鳴った後マナは対戦相手の魚人に叫んだ。


「さあ!かかってきなさい!」


 魚人は堂々と胸を張るマナに対してこう言った。


「見るからに魔法使いじゃないか。私の方が有利だと思うが?」


 そう言う魚人の戦士にマナは何の躊躇もなく魔法陣を展開させながら言った。


「そんなに余裕ぶっこいてたら怪我するわよ!」


 その瞬間マナは魔法をぶっ放しその魔法の威力で相手の盾を破壊すると何か八つ当たりをする様に魔法を追加で放ちまくった。盾をとてつもない威力の魔法で壊された戦士の魚人はマナの鬼のような形相に恐れをなして武舞台の上を逃げ惑っていた。


 逃げ惑う戦士の魚人は為す術無く何を血迷ったのか知らないが自分の半身でもある片手剣をマナに向かって投げつけてきたのである。修行で身体能力も上がっていたマナは軽々とそれを避けると魔法の爆風で魚人の戦士を武舞台から吹き飛ばし場外に落とした。場外に落とされた魚人の戦士は何が起こったのか分からずに口を開けたまま意気消沈していた。


「あっあっ。あ?」

 

 あまりにも呆気なく終わった試合に戦士はおろか観衆もキョトンとしていたがまた暫くすると大歓声を上げた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!今度はあの少女が勝ったぞおぉぉぉぉ!強いな!なんだよあの魔法の威力は?!」


「ふん!」


 武舞台から帰ってきたマナは余裕そうな態度で待合室の椅子に座ってこう言った。


「相手が不甲斐ないせいで不完全燃焼だわ!」


 その言葉に反応するかのようにロッサがマナに言った。


「あれだけ魔法を使っても不完全燃焼だなんて!成長したね。」


 そんな話をしていると武舞台から次の試合の選手発表が聞こえてきて次はグローリの出番だった。


「さぁ。次は俺の出番だな!見ててくれ!」


 ロッサは次グローリが戦おうとしている相手を魔法鑑定で強さを測っていた。正直に言うとグローリに勝ち目は無いと思うぐらい実力差は明白でかなりの強敵と戦うグローリであった。


「無事でいてくれよ。」


 相手に魚人は片目が剣の斬り傷で潰れて和服の様な服を着ており剣を腰につけていいるいわゆる剣豪と言う名にふさわしい姿をしていた。


 グローリも薄々自分より強い相手だと分かっていたのか最初から全力を出す気でいた。両者武舞台に上がると司会から号令が掛かる。


「それでは第三試合!始めてください!」


 グローリは大剣を抜きとてつもない叫び声を上げながら剣豪に向かって斬りかかる。グローリの大剣を剣豪は受け流した。グローリは反対に力を泳がせ後ろから剣を当てようとしていたが剣豪の素早く重い太刀筋がグローリを襲う。一瞬にして斬られたグローリはよろめく。


「く、くそ!」


 グローリは思考を変え素早い攻撃にシフトする。しかしその攻撃も剣豪には当たらず避けられてばかりだった。


「この程度か・・・。」


 そう剣豪が呟くと一瞬の出来事だった。剣を納める音が聞こえたと思っていたらグローリが武舞台の上から飛ばされており場外に落ちていたのである。グローリは気絶している。そんな状況になりマナとアリッサが目を凝らして言っていた。


「な、何が起こったの?」


「全然見えなかった。」


 だがしかしロッサにだけは剣豪の動きが見えていたのである。一瞬にして剣の柄の部分で急所を叩き蹴りで場外まで飛ばしていたのである。その剣豪の動きを見てロッサは言った。


「なかなかやるなぁ。」


 グローリは担架で待合室まで運ばれてきた。運ばれてきたときグローリの意識は戻っていた。


「すまねぇ。負けちまった。」


「相手が悪かったんだよ。しょうがないよ。」


 そう慰めるロッサだったがグローリは納得がいかない様子だった。


 次の試合はアリッサの出番だが相手は女魔法使いのような格好で遠距離攻撃対決だったが難なくアリッサが勝った。


「よし!」


 アリッサは軽くガッツポーズをする。


 第四試合が終わった時点で暫く休憩を取ることになった出場者達は各々次の試合まで万全の準備をするのであった。しばらく休んだ後武舞台に上がるように言われた二人の出場者は思わぬ組み合わせだった。司会にコールされ武舞台に上がったのはロッサとマナだったのだ。二人の戦いはどうなるのか、修行を乗り越えた二人はどのくらいの差があるのだろうか。全てはこの瞬間で決まるのであった。


「改めて見ると初対戦なんだなぁ。」


次回へ続く・・・。

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