第36話 魔王の素質

 魔人の町グリエルに滞在することになったロッサ達は魔王に呼び出されたった今魔王ゾールの目の前にいるのだった。


「さて、私からの提案なんだが・・・。ロッサよ。お前魔王にならないか?」


 その言葉を聞くとロッサ達は声を合わせて驚いた。


「なんだってえぇぇぇぇぇ!」


 一同驚いた後にマナが否定的な意見を言う。


「ロッサが魔王になんてなるわけないでしょ!」


「まぁそう言うな。魔王と名乗れば何かと楽しいぞ!」


 するとロッサはその楽しいことを聞いてみた。


「どういう風に楽しいの?」


「ふむ。例えばな自分の領地を開拓したり国交を広げたり言うなれば自分の国や町が作れるのだ!そうすれな自分のやりたいことができるぞ!それに魔王を名乗れば手を出そうとしてくる奴なんて滅多にいないからな。」


 ロッサはそれを聞くと興味を少し見せたが今はどうでもいいような感じで答えた。


「ふーーん。まぁ自分の町や国とか持つのは興味あるけど・・・今はいいかな。」


 するとマナが何か妄想をしながら呟いていた。


「私とロッサの国・・・。」


 それを見ていたグローリにツッコまれた。


「なーに妄想してんだぁ?顔がふやけてるぞ?」


「う、うるさいわね!」


 マナとグローリが何やら騒いでいるが気にせずに魔王ゾールは続けて言った。


「お前自身にその気がないのなら無理強いはせぬが他の魔王に狙われる可能性もあるのでそれだけは覚えておけよ!」 


 ロッサはなぜ自分が狙われるのか魔王ゾールに聞いてみた。


「そりゃ狙われるだろう。魔王に匹敵する力を持った冒険者がいるんだ。自分の脅威となる存在は消したいだろう。」


 そう言うと魔王ゾールは他の四人の魔王達を教えてくれた。一人目は海に住んでいるという魔王ノーティカ。海の都に住んでいて種族は魚人だという。


「魔王ノーティカはかなり頑固なジジイでな。大きな槍で戦う魔王だな。」


 ロッサはそんな魔王ノーティカの説明を聞くとある事を思った。


「(へぇ。なんかポセイドンみたいな感じだなぁ。)」


 二人目の魔王の名前は空の王者魔王カイス。天使のような翼を生やした天使族だという。空高くにある天界に住んでいて空中戦が凄いらしい。


「何気に私より強いからな!甘く見れんぞ。」


 するとマナがドヤ顔で何か言っていた。


「天使の魔王とかいるのね。私のような天使に敵うかしら!」


 魔王ゾールはマナの言う事を無視して話をつづけた。


 三人目は吸血鬼族で夜の魔王だという。名前は魔王ロックハート。違う言い方をすればヴァンパイアだという。なんとマナと同じヴァンパイアだったのだ。


「わ、私と同じ種族の魔王がいるなんてーーー。」


 マナは若干棒読みで叫んだ。


「四人目は私だ!魔人の魔王だ!」


 ロッサはそれは知っていると軽く流し最後の魔王を聞いた。


「最後の魔王はな、五人の魔王の中でもダントツに強いぞ!」


 ロッサ達は息を飲み魔王ゾールの言葉を待った。


 魔王ゾールによる最後の魔王の名前はディア。悪魔族の魔王だという。魔族とは違う位置にいるらしく魔王ゾールでも魔王ディアには敵わないと言う。何やら何者かにこの世に召喚されてからこの世界に留まりあまりの強さに付いて行く者も多くいて大きな国家を築いているらしい。


「性格がなぁ。残虐性が高くてな他の魔王もあいつだけは嫌っておるよ。一番凶暴な奴だ。」


 ロッサはそれを聞くとこう言った。


「魔王ディアか・・・。僕よりも断然強いんだろうなぁ。」


 すると魔王ゾールがロッサに言った。


「多分な。しかしロッサ自身が進化すれば分からんぞ?」


 ロッサ達は進化と言う言葉が気になり聞き返した。


「進化って何?」


「俺も初めて聞いたぞ!」


「進化ねぇ。嘘くさいわね。」


 魔王ゾールはそんな風に疑われるのを撤回させるかのように説明し始めた。


「本当だとも。戦闘経験を積みすぎると魔人でも人間でも行き詰まるだろう?すると魔王の素質がある者はある時光り輝き進化と言うか覚醒するのだ。その素質がお前にはあるのだ!」


 魔王の素質というのがあるのを知ったロッサは自分にそんな素質があるのかと疑問に思っていた。


「僕にそんな素質あるわけないじゃないか!」


 ロッサはそう言うと魔王ゾールが自信満々に言った。


「いや、あるな。私がお前と戦った時感じたあの波動は魔王の物だ。魔王の素質がなきゃあの波動は感じ取れん!」


「うーん。波動と言われてもなぁ。自分では感じ取れないなぁ。」


 魔王ゾールは気長に見てくれと言うと話を終わらせて解散させた。王の間からでた瞬間マナからこう言われた。


「ロッサが魔王の素質をねぇ。あんた魔王になる気?」


 マナに責められているような感じのロッサは否定をした。


「な、ならないよ!そりゃさっきも言ったけど国作りとかは興味あるけどそれは魔王じゃなくてもできるでしょ?魔王になったら何かと面倒くさそうだし・・・。」


 するとグローリとアリッサがロッサにこう言った。


「私はロッサが魔王になったとしてもついて行くぞ!」


「あぁ!そうだな!俺達は仲間だもんな!」


 魔王の素質について考えるロッサは一旦魔王の事は置いといてまた旅に出る前にいくつかクエストをこなそうと冒険者ギルドに向かっていた。夕方までにこなせる簡単な依頼を受けたロッサは目的地に向かって片づけた。


 その夜。ロッサは魔王に関してまたベッドの上で考えていた。


「魔王か。魔王になったら今よりも強くなって守りたいものも守れるようになるのかな?」


 するとマロンに言われた。


「ロッサが魔王になっても僕達はずっと仲間だ!って言ってもいつ魔王に覚醒するか分からないんでしょ?」


「何かキッカケが必要なのかな?まぁいっか。寝よう。」


 今晩は珍しく考えすぎてあまり寝付けなくなっていた所にいつもロッサのベッドに潜り込んでくるであろう時間にマナがやって来た。まだ起きているロッサにマナは言った。


「あ、起きてたの?」


「あ、うん・・・。」


 そう言うとマナは近づいてきてロッサの横に寝転んだ。


「いいわよね?」


「は、はい!」


 一緒に朝まで眠るロッサとマナであったが夢の中に神様らしき人影が出てきて言った。


「ロッサよ。魔王の素質は特別な物じゃ。しかし魔王の道のりは険しいぞ!覚悟を決めておくんじゃその時まで・・・。」


 そんな夢を見たロッサは神様の度々の忠告を胸にまた眠るのであった。


「ロッサは尻に敷かれるタイプかもなぁ。」


次回へ続く・・・。

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