第26話 新たな仲間

 ダークエルフ化したエルフ達と戦闘を始めていたロッサ達。ロッサ達の武器は温泉に入るときに預かると言われ手元に無いので多分隠されているだろう。ロッサはまだ格闘ができるだろうしマナは元々魔法を使って戦う戦闘スタイルなのであまり戦闘に響かないがグローリは違った。グローリはいつも大剣を使った戦闘スタイルなので格闘戦闘の経験があまり無いらしく不安がっていた。


 「素手はあんまり得意じゃないんだがなぁ!やってみるしかねぇ!」


 ロッサはロウガにマナを守るように命令した。いくら魔法が使えるからと言ってもこの距離じゃ死角に回り込まれるのは必然だろう。ロウガは大きくなるとマナの前に立ちダークエルフ達を威嚇した。


「いいかい皆!殺しちゃだめだよ!」


 ロッサがそう言うと肩に乗っているマロンが言った。


「みねうちってことだね。」


 するとキアムがダークエルフ達に杖を振りかざして命令を下した。


「さぁ!お前達!邪魔者を消せ!」


 キアムの命令で襲い掛かってくるダークエルフ達は物凄い勢いでこちらに向かってきていた。


「うおおおおおおおおお!」


 ロッサはダークエルフ達が向かってきている最中キアムの持っている杖を魔法鑑定して見てみるとその杖は精神支配とダークエルフ化を促す邪悪な魔力が施されている魔法の杖である事が分かった。その事が分かるとロッサはキアムに言った。


「その杖でエルフ達を操っているのか!」


「そうだ!魔王様から貰ったこの魔法の杖でここの住民はすべて私の手中にあるのだ!」


 すぐさま杖を折らなければと思ったロッサは空間転移でキアムの目の前に一瞬で移動して杖を奪い取り一気に折ってしまった。そうすると精神支配を解かれたダークエルフ達は皆倒れこみダークエルフ化も次々と解かれていった。するとキアムは頭を抱えながら身もがいていた。


「な、なんだと!私の杖がぁ!魔王様から貰った杖がぁ!」


 そんなキアムにロッサはある行動を取る。


「これでも食らえ!」


 そう言うとロッサは握り拳を作りキアムが死なない程度に思いっきり腹に一発入れた。


「ぐはぁぁぁぁぁ!」


 一発で気を失うキアム。キアムを縄で縛り隠された武器を探し出しエルフ達が起きるのを待った。


 数分するとエルフ達は次々と起き始めどうして自分達がこの広場で寝ていたのか訳が分からずにいた所をロッサ達は懇切丁寧に説明した。


「その話本当か!」


 声のする方へロッサは顔を向けた。するとキアムより年上そうで落ち着いた雰囲気の女エルフが話しかけてきた。話によると彼女はこのエルフの集落の本当の長だという。


「申し遅れた。私の名前はエリー。もう一度言うがこの集落の長じゃ。」


 ロッサはまた騙されているんじゃないかと思い確認する。


「ほ、本当に長?本当に?」


 ロッサは少し疑ったが軽く笑われエリーにに落ち着かされた。するとエリーがロッサに言った。


「さっきの話が本当ならばこの集落全体でお礼をしなければならないな。」


 そう言うとさらに別の女の声が耳に響く。


「その話は本当です。エリー様!キアムの奴が魔王様に貰った杖で集落の皆をダークエルフに変えて操っていたのです。」


 突然現れた女エルフにロッサは問いかけた。


「君は・・・?」


 弓矢を担いでいるエルフが林の奥からやって来て名前はアリッサだと名乗った。


「私は森の中にいたんだが運よくキアムの洗脳から免れたのだ。エリー様!その方たちの言う事は本当です。」


 アリッサの話を聞いたエリーは次にこう言った。


「そうか・・・。それではキアムを牢に入れよ!キアムはこちらでどうにかするでな。」


 エリーはそう言うとロッサ達に次の日まで待っててほしいと言われその日の晩はすぐに寝てしまった。


 次の日。朝から騒がしいと思えばなんと宴が開かれていた。部屋にアリッサが訪れ事情を説明してくれていた。


「長が洗脳から解かれたお祝いとロッサ達殿の活躍によりこの集落が助かったお礼として今日は一日中宴だそうだ。」


 そう言うアリッサに連れられエリーの元へやってきたロッサ達は改めて感謝をされた。


「今日は一日中宴じゃ。飲んで食べて行ってくれ!」


 ロッサはこの世界の住人は宴が好きだなと思っていたがロッサも宴が好きなので思い切り騒いだ。その途中で集落一番の弓の使い手だというアリッサとも仲良くなった。


「そうか!旅をしながら冒険者をしているのか!」


「そうなんだよね!中々楽しいよ!」


 するとアリッサは羨ましそうに言った。


「いいなぁ。私は生まれてこのかたこの集落を出たことが無くてな、外の世界を知らないのだ。何度か行ってみようかと思っていたが中々勇気が出なくてな・・・。」


 ロッサは少し考えるとアリッサに自分達と一緒に旅をするかと誘ってみた。するとアリッサは目を輝かせながら「行くぞ!」とすんなり付いてくることになった。


 そんなこんなで一日中宴を楽しんだ次の日。


「もう行くのか?」


 エリーの問いかけにロッサは答える。


「はい!ここでの用事はもう済んだのでずっといてもお邪魔だろうし、何せ僕らは冒険者ですよ!旅をしないと!」


 グローリがロッサの言うことに笑いながら言ってきた。


「はっはっは!そうだな!」


 隣ではマナが何やら呟いていた。


「な、なんか女の子が一人増えてるんですけど・・・。」


 アリッサは小声でマナに言った。


「よ、よろしくな。」


 そして集落を出ようとした時エリーから忠告をされた。


「キアムを尋問した所この地にやって来るであろう人間を迎え撃てという命令をされたらしい。ま、それを吐いた瞬間キアムは死んだがな。気を付けるんだぞ。魔王はお前達を何故か警戒しているようだ。」


 するとロッサはため息をつきながら言った。


「はぁ、また魔王か・・・。忠告ありがとうございます!」


 それぞれ挨拶をすると集落全体で見送ってくれた。


 転移門で無人島に戻ってくるとエルフの集落に行く前に海に落ちかけた話をアリッサにしてみたロッサはアリッサに不思議そうな顔をされ言われた。


「周辺に魔法石が無かったかな?」


 ロッサは周辺を確認すると海に少し光りながら頭を出している岩を見つけて言った。


「海にぴょこんと出ているあの岩の事?」


 するとアリッサは言った。


「そうあれだあれ。あの岩に魔法の矢を撃つと・・・ほら!橋が架かったぞ!」


 ロッサ達は顎が外れるくらい驚いていた。まさかこんな方法があったとはと呆れるロッサ達はまた新しい仲間のアリッサと旅に出るのであった。


「新しい仲間はエルフかぁ。」


次回へ続く・・・。

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