第14話 ドワーフの国ドルガリン

 馬車でゆっくりと進んでいたロッサ達はまだ見ぬ目的地に向け一歩一歩進み続けていた。東の国ブラウンから出発してから三日目あたり経過していた休憩中にロッサは新しい魔法を作り出そうとしていた。その名も空間転移。要するに転移魔法である。魔力を持った生物がいる場所になら一瞬で飛んで行ける優れものでこれを覚えてしまえば食料が尽きても買いに行けるし、ある人が危ない時は一瞬で飛んで行けると非常に役に立つ魔法なのである。ただ、魔力を感じられない人や場所には転移できないというデメリットもあるが転移できるに越したことは無いのでロッサは空間転移をマスターしようとしていた。


 空間転移の仕組みは人や生物の魔力を感じ取りその魔力と自分の魔力を繋いで転移すると言った方法である。既にロッサが習得している魔法探知を使い魔力を察知して転移できると考えているロッサは早速やってみた。


「ここから感じ取れる魔力の強い人は・・・エリカかな。ちょっとやってみるか!」


 ロッサはそう言うと自分の足元に転移するための魔法陣を展開させ魔力を繋ぎ飛んで見せた。


「ふぅ。やっぱり風呂は気持ちが良いな!」


 ざばーーーーーん。大浴場に水しぶきが上がる。エリカの目の前で大きな水しぶきが上がったためエリカはすかさず警戒態勢に入った。


「し、侵入者か?!」


 しかし目の前にいたのは何が起こったのか分からないでいたロッサがそこにはいた。


「ほへっ?ここは一体・・・」


 ロッサの目の前には真っ裸のエリカがそこに居て彼女の豊満な体を堂々とと見てしまったロッサは慌てふためいた。エリカは目の前にロッサがいきなり出てきて焦ったが裸を見られたことに対して怒っていた。


「見たなぁ!ロッサ!どこから湧いて出たのだ!」


 ロッサは逃げ腰で謝りマナ達がいる場所へと逃げ帰った。


「ご、ごめんなさぁぁぁぁい!」


 逃げ帰った先でロッサは鼻血を出しながらずぶ濡れで息を切らしてへとへとになっていた。その様子を見たマナがロッサに言った。


「なぁにぃ?まるで女の裸でも見たような感じじゃなぁい?」


 図星である。一応空間転移の魔法は成功したロッサは喜びつつも罪悪感も感じていて半分半分な気持ちで良く分からなくなってしまった。ロッサは十分に休憩したであろう皆に先へ進もうとはぐらかしながら言った。


「さ、さぁ!そろそろ行こうか!」


 エリカをマナは知らないがロッサが鼻血を出すほど刺激が強い女の裸を見たのかと思うと少し妬いてしまうマナだった。マナには豊満な体が無いのだから。


「何か妬いちゃうなぁ。」


 マナが呟くとそれを聞いたグローリが大きな声でマナを茶化した。


「がっはっは!マナは本当にロッサが好きだなぁ!!」


 グローリに言われると満更でもない様子で顔を赤らめてグローリに向かって何処から取り出したか分からない石を投げつけ照れを隠しながら怒った。


 そんな事があった後馬車に乗り数時間走らせると目の前に大きな岩山がありその岩山の入り口らしき所に門がありそこは町というか国というか良く分からない場所だった。


 馬車を止めて様子を窺うと門番がいて何やら一人一人身分証や冒険者プレートを確認して中に入れているようだった。


 ロッサ達は行列に並び謎の場所に入るために待った。待っている時間の中で前にいる旅人らしき人にここはどこか確認してみた所。ここはドワーフの国ドルガリンという名前の国だという事が分かった。行き当たりばったりで行き着いたドワーフの国ドルガリン。ドワーフと言えば身長がとても低いがとてつもない怪力を持つ種族であると同時に鍛冶や裁縫等制作物に携わっている優秀な種族だと言う。


「へぇ。それじゃあ特殊な鉱石やレアな鉱石もあるのかなぁ?そしたらまた強い武器を作れるぞ!」


 期待に胸を込め門番の前まで進んだロッサ達は門番に冒険者プレートを見せていた。


「さて次はお前達か。身分証を見せるんだ。ふむ、冒険者か。このドルガリンには何の目的で来たのだ?」


 急な質問にロッサは「観光です!」と嘘をついてしまったが、すかさず隣にいたマナが自分達は旅人で旅の途中で気になったので立ち寄った事を伝えると門番に少し怪しい奴を見る目をされたが一応心配は無いだろうと中に入れてくれた。


 中に入ると全体的に暗く岩山の中にあるので天井は少ししか空いておらず空気も少しだが重苦しい感じである。するとマナが率直な意見を言った。


「へぇ。ここがドワーフの国かぁ。なんか物を作ってますよって感じね。」


 いかにも鉄の匂いや色々な匂いが入り混じっていた。


 馬車置き場に馬車を停めるとすぐに職人街のある場所に向かった。予想通り他の場所では入手できない不思議な鉱石や、やたら硬い金属やらが売られており興奮が収まらないロッサは鉱石を買い漁ってしまった。たくさん買い物をしているとグローリとマロンに一言言われた。


「おいおい!買うのは良いけどよ。宿代とか残ってるんだろうなぁ?」


「少し考えてお金を使った方がいいかもね。」


 二人に諭されてしまったロッサは少し頭を冷やした。稼いだお金はまだたんまりあるが旅には何が起こるか分からないので慎重に使うべきだと言うのはロッサにも分かる事だ。


「まぁまぁ。そこまでにしといてあげなさいよ。」


 マナに少し庇ってもらえたロッサはきちんとしないとダメだと思うのであった。


 とりあえず宿屋に着くと久しぶりのベッドですぐに眠ってしまいそうになるが食事がまだだったので食事にすることにした。宿屋の近くにある酒場に向かうと出てきたのは肉。肉。肉のオンパレードだった。ドワーフが好むのは肉と酒。非常にボリュームのある肉が驚きの安さで出てきてロッサ達は肉にかぶりついた。じゅわぁとあふれ出てくる肉汁に顎が疲れるほど分厚い肉に頬が落ちそうになっていた。


「うまぁ!」


 マナが夢中で食べているとグローリは酒を浴びる程飲んでいた。


「酒も美味いぞお!」


 旅の疲れを癒すかのように飲み食いをするとドルガリンでの初日を終えたロッサ達は食事に満足しながら疲れ果てた体をベッドに沈め眠ったのである。


 朝起きるとロッサ達は何かクエストが無いかと朝一番で冒険者ギルドに向かった。するとSランクのクエストが貼られていた。内容はこうだ。国の近辺に現れるドラゴンの討伐だという。その内容をロッサは確認すると悪い顔をしながら言った。


「ドラゴンかぁ。いい素材が獲れそうだなぁ。」


 意気揚々とクエストを受けるロッサ。依頼書を受付嬢に手渡すと驚かれた。


「こ、これを受けるんですか?非常に難しいと思いますけど・・・」


 そう言う受付嬢にマナは自信満々で答えた。


「大丈夫よ!任せておきなさい!」


「は、はぁ・・・」


 受付嬢は大丈夫かと思っていたが一応受理してくれた。


 国の近辺に出るというドラゴンを探しに行くロッサ達に何かが待ち受ける。


「なんだかんだ冒険者のランクってSランクになってたんだよね。」


次回へ続く・・・






















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