第13話 思いがけないお礼

 やっと魔物の作ったダンジョンから帰還したロッサとマナはダンジョンの入り口で伯爵のカルロスに話しかけられていた。


「無事に生還することができたな。助けてくれた礼の相談をしたい。明日私の屋敷に来てくれないか?」


「分かりました。」


 そう言うと別れを告げたロッサの元にグローリとロウガとマロンがやって来た。


「おぅ!なんか大変な事に巻き込まれてたみてぇだな!無事で何よりだ!」


 続けてロウガが雄たけびを上げながらロッサに近づいてきた。


「主いぃぃぃぃぃぃぃ!」


 ロウガは勢いよくロッサに覆いかぶさるとロッサの顔を舐め回した。ロッサは「やめろよぉ。」と嬉しそうにロウガを落ち着かせると後ろに隠れているマナに気付く。恥ずかしそうに木の後ろにいるマナを手招きし自己紹介をさせた。


「わ、私の名前はマナよ!こう見えて百十八歳のヴァンパイアよ!」


 自己紹介を聞いたロッサ以外の仲間たちはとても驚いていたがロッサの近くで起こる事にはもう慣れてきているので一応信じてくれた。


 夕暮れ時にダンジョンを抜け出したのでちょうどお腹も空いてきたロッサ達は宿に戻り食事をした。リンのお母さんの作る飯を一口食べてみるとマナは目を輝かせながらこう言った。


「うんまぁぁぁぁ!久しぶりにこんなに美味しいご飯食べたんだけど!」


 それを聞いたリンの母は嬉しそうに言った。


「そうかい?そんなに喜んでくれると嬉しいねぇ。」


 するとお母さんの隣で宿娘のリンが呟く。


「事件に巻き込まれたと思ったら、こんなに可愛い娘を引っかけて来るなんて・・・」


 ロッサ達は食事を済ませるとすぐさま部屋に戻る。すると一つ問題が生じた。


「ベッドが二つしかない・・・どうしよう・・・」


 そう言うとグローリが自分は床で寝ると言い出しマナはそれに甘えると言ってベッドで寝てしまった。グローリのおかげでベッドの問題は解決すると、ロッサも疲れていたのですぐに眠りに着いた。


 次の日。約束通りカルロスの住んでいる屋敷に助けた礼の相談をしにロッサ達は向かった。屋敷に着くとカルロス自身が出迎えをしてくれた。


「やぁ!待っていたぞ。さぁ中に入ってくれ!」


 中に入ると綺麗な作りになっていて豪華な塗装でこれぞ貴族のお屋敷という典型的な屋敷だった。カルロスに客室まで案内されると早速俺の話ををしてきた。


「さぁ、君達は冒険者だろう?装備やらを新調した方がいいんじゃないか?それとも金の方がいいかな?」


 ロッサはカルロスの提案を聞くと自分の要望を言ってみた。


「お金を貰って装備を買うのもいいですけど、自分で作ってみたいんですよね。なんかこう、その場で鍛冶ができるような物なんか無いですかね?」


 ロッサからの要望を聞きしばらく考え込むカルロスはハッとした表情をして自分の持っている倉庫に良いものがあると急ぎ足で取りに行ってくれた。急ぎ足で帰ってきたカルロスは何やら鍛冶台の様な物を持ってきた。カルロスは持って来た物の説明をしてくれた。


「これは魔法の鍛冶台。素材をこの穴に放り込んで出てきた塊をハンマーで叩くと作りたい物が作れると言う優れものさ!」


 カルロスはそう説明してくれると早速使ってみてくれと言い鍛冶台をロッサに渡した。ロッサは早速素材を収納魔法から取り出し魔法の鍛冶台の穴に素材を入れると穴が光出した。鍛冶台の下の穴から光輝く塊が出てきたのを確認するとロッサは塊を付属のハンマーで叩きだし剣のイメージをしながら作ってみた。すると塊が徐々に剣の形に変わっていき立派なアイアンソードが出来た。グローリの大剣とどちらが良いか魔法鑑定で見てみる。グローリの大剣がBランクだとするとロッサの作った同じ大剣のアイアンソードはAランク程度の性能だった。


 作り終えたアイアンソードをグローリが見ると興奮しながらロッサにこう言った。


「うおおお!すげぇなこれは!切れ味良さそうだぁ!ロッサ!これ俺にくれねぇか?!」


 良いよと言うロッサにグローリは感謝すると年甲斐もなくはしゃいでいた。すると上手く鍛冶台を使いこなすロッサを見てこう言った。


「それが一番良さそうだな。良し!それを持って行ってくれ!そして君達の役に立ててくれ!」


 ロッサはカルロスに感謝すると屋敷を後にした。


 ロッサ達が市場に顔を出すとダンジョンで助けたローンと言う商人がその場におり、お礼をしたいと言うので話を聞くことにした。ロッサは自分達が冒険者をしながら旅をしているという話をするとローンは二頭引きの馬車をお礼としてあげるというのだ。ロッサは唐突なプレゼントに驚いて断ろうとした。


「そ、そんな!受け取れませんよ!馬車だなんて!」


 そう言うロッサにローンは笑顔でこう言い返してきた。


「いいんですよ。命が無かったら商売なんて出来ませんからねぇ」


 ローンに押され馬車を貰ってしまったロッサ。ロッサは馬車を貰ったが扱い方が分からないでいた。するとそれをマナは悟ったのかロッサにある提案をして来た。


「馬車は引いたことあるの?無かったら私が教えてあげるけど?」


 そう言ってくれたマナにロッサは馬車の引き方を教えてもらうことにした。馬車の引き方を色々教えて貰った後にマナの今後をどうするか相談をした。


 するとマナはロッサに対して言った。


「私もあんたに付いてく!どうせ独りだし。あんた達と一緒にいた方が楽しそう!」


 そう言うマナにロッサは快く向かい入れ今後の旅にマナも連れて行くことにした。


 その後。数日かけて色々とブラウンでクエストを行いお金を少し貯めて体を休ませた後、とうとう出発の日になってしまった。


 出発する直前にグローリが言う。


「装備も新調したしこれでまた強くなったぜ!」


 すかさずマナはグローリにツッコむ。


「装備を変えただけで強くなるわけないでしょ!」


 マナもこの数日で大分他の仲間達とも慣れたようで良かったとロッサは思った。そしてロッサが言った。


「さぁ!次の目的地はまだ分からないけどとりあえず進もうか!」


 目的地が分からない旅もまた一興とロッサは言うと気ままに馬車を走らせ旅を再開させるのであった。


「次はどこに行くんだろうなぁ・・・」


次回へ続く・・・







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