第12話 上級魔族
魔物によって地下ダンジョンに落とされたロッサとマナ。早速ダンジョンを攻略しながら地上へ進もうとしたところもう一度現在地を確認しようとした。するとある程度ダンジョンのマップが分かった。何故分かるかのか答えは一つ。ロッサの魔法探知の応用で空間理解という魔法を習得していたのである。空間理解とは魔法探知で得た情報からその場所の地形が分かると言った優れものなのだ。それから分かる情報としてロッサ達が一番下層に落とされておりそこから一番上へ一本道の簡単なダンジョンになっている。非常に道が右左にうねっているが簡単な構造になっていた。
「これは簡単すぎる・・・」
「そうなの?じゃあ早くこの薄暗いダンジョンから出ましょ!」
そう言うと先に進みだすマナに続いて歩みだすロッサ。
すると前方から魔物らしき影がマナに襲い掛かった。マナは素早く敵の攻撃をかわし魔法を放った。
「サンダースピア!」
雷属性の魔法のサンダースピア。雷をやりに変えて片手で持ち、相手に突き刺し感電させる攻撃魔法だ。マナが戦う姿を見てロッサはマナに言った。
「やっぱり強いんだね!」
ロッサにそう言われると胸を張って答えた。
「そりゃそうよ!だって私ヴァンパイアだもんね!」
ロッサの見立てではマナの実力は冒険者で言うとエルサドールの町にいたエリカ並みかそれ以上の実力を隠していそうだと見ていた。するとマナから思わぬ言葉が飛んできた。
「私の実力はこんなものじゃないわよ!何せオーラを隠しているからね。ロッサもオーラを隠しといたほうがいいわよ。教えてあげる!」
そう言うとロッサはマナからオーラの抑え方を教わった。ぐっと体の内に力を抑え込むような感じでオーラを抑えるらしい。ロッサは言われた通りやってみる。
「そうそう!覚えが早いわね。そうやってオーラを抑えるのよ!そうすれば必要な時だけ魔力を使えるし疲れずらくもなるわ!後は面倒ごとに出くわさくなるかもしれないかもね。」
ロッサはマナからオーラの抑え方を教わると先へ進もうとダンジョンを上へ上へと進み続ける。
数時間魔物と戦い続けながら進んだところでちょっとした広場の様な場所に出たロッサ達が見たものは、茨が壁のあちこちから生え出ており三人の人間が捕まっていた。右から貴族の様な見た目の男。真ん中には太っていて悪そうな顔立ちをした男。左には市場でマナを奴隷として連れていた男が捕まっていたのである。するとロッサ達に気付いた貴族の様な見た目の男はすかさずロッサ達に助けを求めた。
「私はこの国の伯爵カルロスだ!早く助けてくれ!」
助けぬ訳にもいかないと思ったロッサは茨のツルから短剣でツルを切断しカルロスを助けた。助けられたカルロスはロッサ達に感謝を告げた。
「助かった。ありがとう。このダンジョンから出られたら礼を授けようではないか。」
太った男も助け出すと名を名乗ってきた。名前はローンと言うらしい。悪人顔とは裏腹に明るくて良い奴そうだった。そしてローンもロッサ達に感謝を告げてきた。
「ありがとうございます!この御恩は忘れませんぞ!」
そして最後に残った男はどうしようか迷っていたらマナが男に早く助けろと急かされていた。男がマナの方を見るとまだ自分の奴隷だと勘違いしている様でマナに強い口調で命令していた。マナはそんな男に対して一言言い放った。
「こんなクズに構っている時間は無いわ!先を急ぎましょ!」
命令を聞かないマナに男はへりくだり言った。
「ま、待て。悪かったから助けてくれぇ!」
マナは火の魔法を茨に向けて放ち茨が焦げ落ちたのを確認するとその場を去っていった。
男は「危なかった・・・」と呟き一人その場所で座り込んでいた。
ロッサはマナにこれで良かったのか聞いてみた所。
「私の魔法が勝手に茨の方へ飛んで行っただけよ!」
マナはそう言い結果男を助けてあげたのだった。ロッサはそれでいいのかと思うがマナが良いなら良いかと思い先へ進む。
更にダンジョンを休憩しながらお互いの事を話しつつ進んでいくロッサ達。空間理解でそろそろダンジョンの出口までたどり着くかと思ったその先に、先程とは比べ物にならない程大きい広場に出た。そこには何十人もの一般人や兵士達が魔物と戦っていた。男や兵士は前衛で魔物と戦い後衛では魔法が使える者と女や子供が中心で陣取っていた。
遠くで少し様子を見てみると人間側の方が少し劣勢だった。すかさずロッサ達は戦いの間に割って入って魔物を一掃した。戦いに勝利した人々は歓喜してやっと外に出られると喜んでいた。
その時。ダンジョンを作った目玉の魔物がやってきてこう言った。
「そう喜んでいられるのも今の内だ!この私が死なない限りこのダンジョンは抜け出せ・・・」
するとマナが不意打ちを食らわせる。
「アイスアロー!」
水属性の魔法のアイスアローを目玉の魔物に向かって放った。そしてマナは言った。
「これで出られるわね!」
目玉の魔物は不意打ちを食らい驚きながらこう言った。
「は、話している途中に撃つ奴がいるかよ・・・これで終わりだと思うなよ・・・この身を生贄に最強の魔物を呼んでやる!」
そう言うと目玉の魔物の下の地面に魔法陣が展開され目玉の魔物はその魔法陣の中へ入っていくと新たに巨大な魔物が召喚されてしまった。
「我が名はイシダン。上級魔族である。」
目玉の魔物は上級魔族を召喚して消え去っていった。その魔族の見た目は牛の様な顔をしていて体は人間に近く筋肉質。体長は五メートル近くある巨体であった。
その魔物を見た伯爵のカルロスが人々の前に立ち上級魔族に向けて言い放った。
「我が国の国民を守るのは貴族の役目!くらえ!ファイアボール!」
そう唱えると炎の玉が数発放たれた。しかし、イシダンにはまるで効いていなかった。全く効いていない様子を見るとカルロスは驚いていた。
「な、何!私の中級魔法が効かないだと!」
自分の魔法が効かないカルロスは落胆したが続いてマナが前に出た。
「ここは私に任せて!」
マナはオーラを全開にさせる。マナの周りには魔力が満ちておりまるで別人かの様に強さがはっきりわかる程に上がっていた。その様子を見ていたロッサは腕を組みながら感心していた。
「マナも凄い力を隠し持ってんたんだなぁ。」
するとマナは高威力の魔法を放った。
「食らいなさい!最大出力のホーリーシャワー!」
光属性のホーリーシャワーは相手の真上に魔法陣を展開しその魔法陣から光の刃が降り注ぐ強力な魔法だ。マナの魔法を食らったイシダンは激しい音を立てて倒れる。それを見ると勝利を確信したマナ。
「これで私の勝ちよ!」
マナは倒れているイシダンに向かって歩いていく。死亡したのを確認しようとした時。マナの体が宙に浮く。イシダンは生きていたのだ。マナはイシダンの右手に掴まれ苦しそうにしている。イシダンはマナに向けて言った。
「これで終わったと思ったのか?俺も甘く見られたものだなぁ!でもなかなかの威力だったぜ!危うく死ぬところだった。」
苦しんでいるマナを見ていると居ても立っても居られずロッサは剣を抜きイシダンに向かっていった。
「剣技!瞬刃斬(しゅんはざん)」
物凄い早い太刀筋でイシダンの腕を切り落としたロッサ。とても低い声で苦しむイシダンに向けて追い打ちの魔法をロッサは叩き込む。
「ホーリーホール!」
光属性の魔法で光の空間に魔物を閉じ込め消滅させると言った物凄い魔法だ。それを見たマナは「すごいわぁ!」と口ずさみ頬を赤くする。今度こそイシダンを倒したのを確認すると皆大喜びで歓声を上げロッサに感謝して長かった地下ダンジョンから一人の犠牲者も出さずに帰還したのだった。
「早く戻って来てくれぇ・・・」
次回へ続く・・・
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