第11話 魔物と吸血鬼

 翌朝。ロッサは起きるとグローリ達と朝飯を食べた後「ちょっと外を歩いてくる。」と言い残し外の風にあたりながら散歩をしていた。しばらく歩いているとある広場に人間の集団が群がっていた。その集団の先には昨日市場で見かけた白い髪に赤い瞳をした少女が石を投げられているではないか。少女は鎖に繋がれ動けないので飛んでくる石から逃げられないでいる。


 ロッサはその状況を見ると驚愕した。


「なんでこんな事になっているんだ!」


 そうロッサが思っていると集団の中にいる一人の男が叫んだ。


「そいつは魔物の手先だぁ!やっつけろぉ!」


 ロッサは彼女のオーラを感じ取ることができるため男が叫んでいる内容が信じられなかった。少女のオーラは純粋で白く輝いていてとても魔物とは思えない程綺麗だった。


「なんてことを!あの娘はそんな邪悪な存在じゃない!むしろ逆で白く純粋な存在だ!」


 そんな純粋な少女が邪悪な存在じゃないことを分かっているロッサは周りで叫んで煽っている男達を手刀で一人一人気絶させた後、石を投げられている少女の元へ行き少女を庇った。


「何故こんなことをする!彼女は魔物の手先なんかじゃない!!」


 少女を庇うロッサに対して集団の中から声が聞こえてきた。


「そいつはあそこに座っている男の奴隷だろ?あいつが自分の事を魔物だと言ったんんだ!」


 すると少女の奥で笑っている男がいた。その男は昨日少女を連れて歩いていた男ではなく別の人物だったのである。


 紫髪で長髪な男はこう言った。


「ちょっとぉ。邪魔しないでくれるぅ?やっと負のエネルギーが集まってきたんだからさぁ!」


 探知魔法で確認すると確かに邪悪な気配をした人物だった。探していたやつはこいつだとロッサは驚きながらも身構えた。


「お前!本当に魔物なのか?正体を現せ!」


 すると紫髪の男は言った。


「いいだろう!ちょうどエネルギーが溜まってきた所だ!正体を見せてやる!」


 男は奇声を上げると同時に体から大きな目の形をした魔物が出てきた。男の体に寄生していたのであろう。男の体から出てきて大きな声で響くように言った。


「へっへっへ!これが正体だぁ!早速このエネルギーでダンジョンでも作るかぁ!」


 人々は魔物が目の前に現れたので逃げ出そうとしていたがその時。大きな魔法陣が町の一角に張られ光り輝いた後にまるで沼に飲み込まれるように魔法陣の中へ落ちて行った。


 どれくらい時間が経っただろう。ロッサは目覚めると周りを確認した。まるで洞窟の様な雰囲気で探知魔法によると入り組んだダンジョンの様に複雑な形をした洞窟になっていた。傍には少女が横たわっておりロッサは優しく話しかけてみた。


「おーい。大丈夫?」


 意識は無いが息はあるようで少し安心したロッサだったがすかさず少女の体を揺らし起こしてあげた。すると少女は少し寝ぼけながらロッサの言葉に反応するように目覚めた。


「うーん。どうなっちゃったの?」


 少女はゆっくり目を開けると辺りを確認しながらロッサを見ると少し驚きを見せたが平然を保ち聞いた。


「ここはどこなの?」


 ロッサは少女の問いかけに答えた。


「ここは多分さっきの魔物が作ったダンジョンの中だと思う。」


 そう言うロッサの言葉に納得したのか次に名前を聞いてきた。


「名前は何て言うの?」


「名前?僕はロッサ。冒険者をしながら旅をしているんだ!」


 それを聞くと少女も名乗り始めた。


「私の名前はマナ。歳は見た目によらず百十八歳よ!」


 そう言い放つマナにロッサは驚いた。百十八歳は嘘だろうと問い詰めたがどうやら本当らしく、マナが言うには自分はヴァンパイア。吸血鬼とも言える種族らしいのだ。ロッサは疑問に思った。ヴァンパイアなら人間よりも明らかに強いはずだが何故奴隷になんかされたのか聞いてみた。


「ヴァンパイアだったら強いでしょ?なんで奴隷なんかになってたの?」


 するとマナは少し恥ずかしそうにしながらロッサに言った。


「ちょ、ちょっと外で眠っていたらこの鎖で力を封じられて奴隷にされちゃったのよねぇ。力が出ないのよ。」


 ロッサは鎖に触れてみた所確かに力が抜ける感じがしたがロッサには関係なかった。力づくで鎖を引きちぎりいとも簡単に砕いて見せた。それを見たマナは驚きながらロッサに言った。


「噓でしょ?簡単に壊しちゃうなんて何者?」


「まぁ僕はただの旅人だよ。」


 そんな話をしていると音が響くこの部屋にマナのお腹の音が鳴り響いた。マナはすごく恥ずかしそうにしていたがロッサはオリジナル魔法の収納魔法を編み出していたので収納していたサンドウィッチを出してみせるとマナに差し出した。


 マナは「いいの?」と言ってきたがロッサは「食べなよ。」と言いマナはそれに甘えるとすごい勢いでサンドウィッチを平らげた。食事を済ますとマナは満足した様子を見せながらロッサに言った。


「美味しかったわぁ!まぁ、血と比べると味は劣るけどね。」


 舌なめずりをしながらロッサの首筋を眺めるマナ。そんなマナの視線を感じ取りロッサは言った。


「な、なんか狙われてる?」


 ロッサは首を抑え身構えたがマナに笑っていなされた。そして一段落した所でロッサはマナに言った。


「さぁ。とりあえずこのダンジョンを攻略しないとね!行くよマナ!」


 マナはロッサの言葉に同意する。


「うん。行こ!」


 これから二人でこの大きなダンジョンを攻略していくロッサとマナ。一体どんな壁が二人に待ち受けているというのか。


「ロッサは出て行ったきり戻ってこないなぁ・・・」


次回へ続く・・・




























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