第4話 巨大なトロールとの戦い

 グローリの言いなりで初めてのクエストに挑むことになったロッサ達は早速クエストの目的地に向かっていった。クエストの目的地はエルサドールの町の南東にあるトンネの村。小さな村で討伐対象の巨大なトロールが村で暴れては消え暴れては消えての繰り返しで困っているという。


「ここからトンネの村はそう遠くないぜ!さっさと片づけて報酬を頂こうぜ!」


 そうは言うが一応この依頼はAランクのクエストだ。慎重に行きたいと思うロッサに対してお構いなしにグローリは突き進む。そんな感じのグローリを見て黒猫のマロンは心配をする。


「何も考えていない感じだけど大丈夫かな?」


 マロンの心配する声にロッサが答える。


「経験豊富な冒険者らしいからきっと大丈夫だよ。多分ね。任せておこう!」


 そんな話をしながら約三時間ほど歩いていると遠くにトンネの村が見えてきて明らかにボロボロで荒らされていると見られる有様で見るに堪えない状態だった。


 トンネの村に到着するとこの村の村長の所へ顔を出しに行き話を聞くと、何人かの人間が殺されてしまい家も壊されて皆疲れ果てているということなのだ。


「お願いします!どうか!助けてください!報酬ならありますからどうか・・・」


 グローリは村長の話を聞くと村長に言った。


「まぁ、なんだぁ!とりあえず俺達に任せておけって!な!ロッサ!」


 急にふられたロッサは戸惑いながら答えた。


「は、はぁ・・・やれるだけやってみます。」


 ロッサは村の期待に応えられるか自信がなかったが助けたいと思うと急に家の外から悲鳴が聞こえてきた。


「うわぁぁぁぁぁ!またあのトロールが来たぞぉぉぉぉ!」


「食われるうぅぅぅぅ!助けてえぇぇぇぇぇ!」


 すぐさま外に出て状況を確認するとロッサ達が入ってきた村の入り口の反対の入り口の方角からトロールが壁を壊してやって来ていた。幸い襲われている人はまだいなかったので一目散にトロールの前にロッサとグローリは立ち塞がった。


「こりゃあやりがいのある敵だなぁ!ちょっと苦戦しそうだぜぇ!」


 予想より巨大な体格を誇るトロールにグローリは笑みを浮かべながら額から汗が滴り落ちる。そしてグローリが大きな声で言った。


「行くぜぇぇ!うおおおおお!」


 大剣を引き抜き突撃するグローリと大きな拳で相対するトロールがぶつかり合い金属が弾け合うような音が広場に広がっていた。何度かぶつかり合った末にグローリは仰け反り流石のAランクの冒険者でもトロールの力が大きかったためか力負けしてしまった。それでもすぐさま体勢を立て直しトロールと距離を取る。


「こいつ見た目によらずかなり強いぜ!しかもドデカい図体のくせにかなり早い!」


トロールは余裕の笑みでロッサにしか聞きとれない言葉でこう言った。


「そんなもんか人間!それじゃあこの俺様には勝てないぞお!」


 ロッサはトロールの言葉を聞くと今度は自分の番だとグローリの前へ出るとトロールにこう言い放った。


「トロール!お前は僕に勝てない!これ以上お前の好きにはさせないぞ!」


 トロールとグローリの戦いを見て完全に見切った上でのロッサのセリフだった。ロッサの勝利宣言とも言える言葉を聞いたトロールはロッサに対して言った。


「そんなひょろひょろの体で俺と戦おうってのか!笑わせるな!」


 そんなことを言っているトロールを無視してロッサは攻撃を仕掛ける。まず土魔法と水魔法の掛け合いでトロールの足元の地面をドロドロに溶かし足を動けなくさせ、すかさず火の矢を魔法で作りトロールの右目を射った。


「ぬわぁぁぁぁぁ!!こ、小賢しい真似しやがってぇ。これで終わりだと思うなぁ!!」


 トロールはようやく足場の悪い小さな沼から抜け出した後ものすごい速さで走ってきて繰り出したのはグローリをも仰け反らした巨大な拳が飛んできた。ロッサはなんとその拳を片手で受け止めトロールの腹に正拳突きを食らわせるとトロールの腹に大きな穴が空きそのままトロールは倒れ死んでしまった。


 それを見ていた村の人々は歓喜に包まれていた。ようやくトロールから襲われる地獄から抜け出せたのだった。


「ま、まじか・・・。すっげぇ強いじゃねぇか!」


 グローリは驚いていたがまたいつものようにロッサに近づき背中を叩きこう言った。


「いやぁ驚いた!ステータスを見たがまさかここまで強いとはなあ!まいったまいった。俺より強いなお前!!」


 グローリに感心されていると村の人々が集まってきて村長も近寄ってきた。お礼の言葉と今夜は盛大な宴にしてくれるという。それではとロッサ達は宴に参加して楽しい一時を過ごした。


 翌朝。村長に呼び出されたロッサ達はこんなことを告げられた。


「昨日はありがとうございました。これはせめてものお礼です。村中でかき集めたお金です。受け取ってくだされ。」


 差し出してきたのは袋いっぱいのお金だった。しかしロッサとグローリは顔を合わせ頷くとロッサがお金はいらないと言った。そのお金で村の復興資金にしてくれと言い村を後にした。


 村を出た後グローリがロッサに言った。


「いやぁ、あの爺さん泣いてたな。」


 それに応えるかのようにロッサが言う。


「報酬金は無いけど人助け出来たからそれでいいよね!」


 初のクエストは一文無しのロッサには手痛いことだったが村の人達のことを考えたらそんな事は出来なかった。すると肩に乗っているマロンが慰めてくれた。


「ま、いいんじゃない?またクエスト受ければいいんだし、一先ず初めてのクエストお疲れ様。」


 マロンと会話をしているとグローリは不思議に思ったらしく聞いてきた。


「もしかしてお前さん。動物と話ができるのか?トロールとも話してた感じだったし。」


 ロッサはグローリには話しても良いと思い自分が生き物と話せる事を伝えた。するとグローリはすんなりと受け入れてくれた。


「そんなこったろうと思ったぜ!何があっても驚かねぇよ!」


 グローリはすぐさま理解してくれた。何気に物分かりが良いのか何も考えてないのか分からないが良い奴なのは確かだ。グローリとだったらこの先の旅にいたら心強いのになあと思っていたらグローリから思わぬ言葉が飛んできた。


「なぁ!これから旅を続けるんだろう?ならこの俺も連れて行ってくれねぇか?ぶっちゃけエルサドールの町で一番だと思ってたが俺より強い奴が現れたんだ。そんな奴の生き様がどんなものなのか近くで見てみたくなっちまってよぉ。頼む!俺を連れてってくれ!!」


 そんなお願いにロッサは迷いもなく頷いた。グローリは嬉しそうにロッサの肩を叩きながらお礼を言い、初めての旅仲間が出来たと喜んでいた。


 そうしてエルサドールの町のギルドに帰ると、なんと報酬金が用意されていた。この報酬金は村からではなく町からの報酬金らしい。あのトロールは町への影響が出るかもしれないという名目で町から大々的に依頼を出す予定だったらしい。それならばとちょうど無一文だったロッサ達には都合がいいことなのでその報酬金1000GAランクのクエストクリアでランクが三つ上がりDランクになった。


「やったね!これで食料買えるよぉ」


 続けてマロンも言う。


「ひもじい思いしなくてよくなるぅ」


「がっはっは!良かったな!それじゃあ日も暮れてきたことだし宿屋に行くか!」


 宿屋に着いた一行は一晩10Gの宿に泊まり、初めてのクエストクリアで疲れたのかロッサはすぐさま眠りへと落ちていったのであった。


「お疲れ様。ロッサ。」


次回へ続く・・・































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