第2話 初めての人と魔物

 旅の準備を終えたロッサ達は初めて山を出ることに高揚感を胸に下山する。すると、山のふもとには一面に天然の花畑が咲き誇っており、ロッサ達は初めて見る大きな花畑に感動する。


「わぁ!こんなに大きな花畑見たことないよ!」


 続けてマロンが言う。


「本当だね。凄く綺麗だ!」


 ロッサ達が花畑を散策していると向こうに人影が現れる。冒険者だろうか、装備を纏ってこちらに向かってきている。


 ロッサ達に気づいた冒険者達は即座に武器を取り身構える。そして気づいた時にはもうロッサ達は囲まれてしまっていた。それもそうである。何せロッサの魔力値は人間の数十倍なのであり、普通の人間ではないと目の前の冒険者に悟られたのである。


 そんな冒険者にロッサは語りかける。


「は、初めまして。武器をしまってください。僕は怪しいものじゃないですよ!」


 冒険者は少したじろぐロッサを見てこう言った。


「こんな人里離れた山のふもとでそんなにデカい魔力を持った人間が怪しくない訳ないじゃないか!」


 続けて隣にいる冒険者も言い放った。


「そうだ!神の恩恵を受けた勇者でない限りその魔力値はありえない!まさか亜人か魔族なのか?!」


 ロッサは冒険者の言う事を聞くと色々なことが頭をよぎった。


「神の恩恵?勇者?魔族?亜人?」


 ロッサは転生前に神様らしき人には会っていたが勇者として転生させられた訳ではない。魔族でも亜人でもないなと思っていたロッサは少し興奮しながらこう言い返した。


「この世界には魔族とか勇者とか亜人とかいるのかぁ!!」


 すると冒険者達はロッサのキラキラした目を見て拍子抜けしたらしく簡潔に話した。


「あぁ。いるとも。我ら人間の勇者に魔人や魔物の魔族。そして伝説のエルフなんっかもいるって噂だ!」


 もう一人の冒険者が続けて言った。


「この辺にも強力な魔物がいるって噂だったがお前みたいなやつがいるなんてな。どういうことなんだ?お前が魔物なのか?」


 ロッサは10年もの間目の前の山の奥地でひっそり暮らしていて最近下山してきて旅立ってきたことを話した。


「そうかぁ。間違えてすまなかったな許してくれ。それにしても尋常じゃないほどの魔力量だったから驚いてしまったよ。」


 黒いローブの冒険者はそう言うとロッサはここで自分の魔力が普通の人間や冒険者レベルでは無いことを知った。


 すると話していた脇から巨大な生物が大きな足音を立ててこちらへ向かってきているのが見えた。大きなイノシシの様な見た目だが目が赤くまるで理性のないような勢いでこちらに突進してきている。それを見た冒険者達は顔を真っ青にしながらこう言った。


「あ、あれは!A級の魔物のイノブータンだ!俺達Bランクの冒険者じゃ歯が立たない!逃げるぞ!」


 そう言うと冒険者達は一斉に逃げようとする。しかしロッサは違った。山に魔物はいなかったので経験は無かったが何とか話ができないかと魔物に問いかけた。


「何をそんなに怒っているんだ!少し落ち着いて僕と話をしよう!」


 しかし魔物からの返答は無く魔物はこう叫んでいた。


「人間はこの俺が殺すぅぅ。人間は敵だぁぁぁぁぁ!」


 ロッサの言うことなど聞きもしないで一直線にものすごい速さで冒険者達に突進して行き一人の冒険者が一撃で瀕死の状態にされてしまった。ロッサは危機感を感じ人間とは思えぬ速さで魔物の前に立ちものすごい力で魔物のデカい牙を受け止め、魔物の体を回転させ魔物の目が回っているうちに急所をロッサが持っていた剣に炎を纏わせ一突きし魔物を倒したのだった。そんなA級の魔物を倒したロッサに冒険者達は驚きを隠せずにいた。


「な、なんてやつだ・・・一体どんな力が奴にはあるというんだ・・・」


 そんなことを冒険者が言っているとすぐさまロッサが瀕死にされた冒険者に近寄り山で作った回復薬を飲ませてあげたのである。冒険者の傷はみるみる癒えていき完全に治った姿を見て冒険者はまた驚いた様子だった。


「なんて回復薬なんだ。この傷が一瞬で・・・」


 ロッサは自慢げに冒険者に言った。


「山で採れた薬草から作ったんです。試行錯誤しながらね。我ながら自信作です!」


 なんとロッサは転生前の漫画やアニメから薬学に似たものを習得していたのだった。そんな話をしていると傷の癒えた冒険者が目を覚ました。


「助かったよ。あのままじゃあの魔物に殺されていた。君がいてくれたよかった!」


 ロッサに感謝を伝えると冒険者達が出発してきたというエルサドールという街に行かないかと誘われる。旅をするのだったら街で道具を揃えるのもいいし、何より冒険者になればどこの街でも依頼を受けられ金を稼ぐこともできると言ってくれた。それを聞いたロッサはマロンと相談をしてエルサドールに行くことにしたのであった。


 エルサドールに向かう前にマロンはロッサの強さに対して話していた。


「まさかロッサがこんなに強いとはなぁ。一緒にいたけど分からないこともあるもんだね!」


 ロッサはマロンと話していると、冒険者達に動物と話せるのかと小馬鹿にされたが気にしないでエルサドールの街へ向かった。

 

 道中。魔物に襲われる事が多々あったが冒険者と協力し倒しながらエルサドールに向かい冒険者達と出会って三日目に辿り着いたのである。


「わぁ!これが人間の街かぁ!すごい大きいや!」


 マロンも初めてみる人間の街に驚いていた。


「僕も初めて見たけどすごいね。ロッサ以外の人間がわんさかいるよ!人酔いしそうだよ。」


 ロッサが見る真面目手の街エルサドール。この人間の街で何があるのか目を輝かせているこの瞬間に彼らの旅は始まったのかもしれない。


「初めての街で何するんだろう・・・」



 次回へ続く・・・

















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