Column4 辞書比べ —— 「外来語」or「和製英語」

『ことば』の連載を始めてから気づいたことですが、どうやら辞書によって「外来語」と「和製英語」の線引きが違うようなのです。


 例えば、「モーニングコール」。『明鏡国語辞典 第三版』と『新明解国語辞典 第八版』は外来語として捉えているのですが、『ウィズダム英和辞典 第4版』と『三省堂国語辞典 第八版』は和製英語で捉えています。


 思うに、前者は「他言語の言葉から、表記をそっくりそのまま持ち込んだもの(もしくは存在するもの)は外来語」として捉えており、後者は「他言語の言葉から形をそっくりそのまま持ち込んだとしても、原義と違う意味で使っているものは和製英語に分類している(もしくは日本人が組み合わせて作ったものが、偶然にも英語にもあった)」からではないでしょうか。

(詳しいことは辞書に書いていないようですし<私が見落としていない限り>、それぞれの辞書の外来語・和製英語を全て引いて比べたわけではないので、あくまで私の推測です)


 例を使ってもう少し詳しく見てみましょう。

「モーニングコール」は、「ホテルなどで、指定された時間に電話をかけて客を起こすこと」です。(『明鏡国語辞典 第三版』より)

 これは日本語でしか通じない意味ですが、「morning call」自体は英語にも存在します。意味は「社交訪問」。用法としては古いようなので最近は使われていないかもしれませんが、分離複合語としてあります。


 つまり「『morning call』自体は英語にあるから、外来語と捉えている辞書」と、「『morning call』の意味が英語と違うから、和製英語と捉えている辞書」に分かれていることがお分かりいただけると思います。


 あとは「モーニングコール」の場合は、「morning 」+「call」の組み合わせた言葉というのも、理由の一つとしてあるかもしれません。


 国語辞典では、英語やフランス語などの言葉から「」だけ入ってきたものに関しては、外来語として分類しています。以前登場した「smart」も、日本語でしか使われない意味が存在していますが、持っている辞書を調べた限り外来語で捉えているものばかりでした。きっと、「どこの言語から入って来た言葉なのか」というのを大切にしているのだろうなと思います。

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