Column10 外来語の歴史——ポルトガル語

 すでに、他のColumnで外国語のことを書いてしまっていますが、他の言語のことを書く前に、ちょっと「外来語」について書いてみようと思います。


「外来語」とは、「外国語から取り入れられて同化し、自国語のように使われる語」とあります。(『明鏡国語辞典 第三版』より)

 皆さんもそれはお分かりかと思いますが、「日本語のなかにある漢語はどうですか?」と聞かれたらどうお答えになるでしょうか。これは外来語? それとも日本語?

 それについて分かり易く解説しているものがありましたので、『日本語の世界2 日本語の展開』より引用いたします。


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 日本語の中には、いろいろの外国語から入ってきて、日本語化した語がある。これが日本語における外来語である。古く日本語に入って来た外国語として中国語がある。これは、その文字である漢字とともに、日本語の上に大きな影響を及ぼしており、わが国固有の言語である和語に対して漢語という。これに対して、十六世紀半ば以降、日本語に入ってきて、これまた、日本語の上にいろいろと影響を及ぼした西欧諸国の諸言語がある。これを一般に外来語と呼んでいる。広義には、漢語も外来語の一種に含めて扱われる。ただ、漢語は、西洋語系の外来語に比して、いろいろの点で日本語化が進んでおり、西欧語系の外来語とは異なった性格を持っている面がある。それで、一般に日本語の語彙をその語の出自からみた場合に、固有の日本語である和語と、漢字ともに中国語からはいってきて日本語化した漢語と、西欧語に由来する外来語と、この三つに分類することが行われる。和語・漢語・外来語の三つに分類した場合に、外来語とは、主として西欧語系の外来語を指していうのである。

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 つまり、広義では中国から入って来た漢語も外来語ではあるのですが、長い歴史もありますし日本語化してきたものもあるので、室町時代以降に入ってきた外来語とは別にしているということですね。引用文には「外来語とは、主として西欧語系」と書いてありますが、多くの辞書にも「狭義では『欧米諸国から入ってきた語をいう』」と説明しています。しかしすでに、韓国語やタイ語と言った言語から入っている言葉もあるので、今後はアジア系やアフリカ系の言語なども包括していくのだろうなと想像します。

 ただし、近代、現代の中国語からのもの「餃子」などは、外来語に含めることもあるようです。


 さてさて。

 西欧語系の外来語として、最も早く日本語に入って来たのはポルトガル語でした。

 皆さんもご存知の通り、室町時代の末、1543年にポルトガル人が種子島に漂着して鉄砲を伝えました。ちなみに、「種子島」は火縄銃の異名でもあります。

 彼らが持ち込んだ外来語は、キリスト教の布教が始められたことからキリスト教関連の用語もあったのですが、後に禁止されたことから、ほとんどが自然に消えたと言われています。


 ですが、「カッパ(capa)」「タバコ(tabaco)」「ボタン(botão)」「テンプラ(tempero)」「カルタ(carta)」などは今も使われていますよね。これらは漢字も当てられています。「合羽」「煙草」「釦」「天婦羅(天麩羅)」「歌留多(加留多・骨牌)」、ほぼ借字です。「釦」は中国語から来ているようで、「骨牌」は漢語表記です。


「骨牌」は麻雀マージャンをしたことがある方からすると、「獣骨などで作った麻雀の牌じゃないか?」とおっしゃるかもしれませんが、「カルタ」のことも指すんですね。(『新明解国語辞典 第八版』より)


 しかし、このうちの「合羽」や「煙草」などは漢字表記の慣習が出来ているために、外来語の意識が薄れ、日本語に馴染んできているなと思います。

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