第2話 業物 -Karma-
広大な外の世界を避け、
しかし、限定された世界の中では、時として外の世界をも
その一つが、
海外では早くに主流となっていた蒸気機関を採用せず、火薬や
中でも『
たとえば、刀身から発火し、城一つを単体火力で焼失させた『
たとえば、無尽蔵に
たとえば、
「こちら、修理のご依頼をいただいていた
都の郊外、
見事な
「どうぞ、ご確認ください」
「うむ、
刀を受け取った小柄な老人は、その刀身を引き抜いた。
「おぉ……」
シャラリと音が鳴り、刃が狐の尻尾のように床へと
ムチのような柔軟性と、刀の切れ味。
これを手に戦国を駆けた
「おお、こりゃあ命を取り戻したかのようだね。流石、
「恐れ入ります」
相手はとある
年から逆算するに、
生ける伝説に属する大物だ。
しかし、今は枯れ木のように乾ききった顔に、ニコニコと笑みを浮かべている
「まさか、
ご
「
「ですが、そんな達人も
「ああ。逝原の
「ところで、
「……」
ご
次に言われるだろうことが、おおかた予想できたからだ。
「先生はその才能を継いだ当代一の
ご
「夢だったんだよ。若い頃は、自分だけの
「
「それは、
「……」
ご
ムカムカと、
「剣ももうロクに握れない、年寄りの身体だ。ただ眺めてかつての戦国に思いを
ご
「もちろん、先生の腕にふさわしい
「……恐れながら」
「新たな
「なぜだね」
「
そういう
だから、太平の世とはいえ都の夜はシンと静まり返っているのだ。
「私は、変なことに
「刀や鉄砲がそこにあるだけでおっかないように、
「だったら、私が死ぬまで秘密にしよう」
「では、死後は? あなたさまのご家族が、
「それに……」
「近頃は、
「馬鹿な。仮に本当だとしても、幕府が功労者の私を狙うはずがないよ」
「あくまで
これで、三度目だ。
「どうか、太平の世に生きる
「むぅ、そうか……先生ほどの
ご
「しかたない、か。戦国は……戦いの時代は、もう終わってしまったんだものね」
自分の中にいる何者かに言い聞かせるかのように、ご
「そう。それでいいのです」
深く頭を下げたまま、
「さっきの話は、お互い忘れることにしよう。また何かあれば、頼らせてもらうよ」
「もったいなきお言葉、痛み入ります」
ご
「若先生、この辺りからの景色がまたいいんでさ」
「ほら、
都の中央で天を
視線を下ろすと、立ち並ぶ
張り巡らされた水路では、無数の小舟たちがすれ違いながら
高く上った日に照らされ、都は暑い夏の日の平和を
しかし、
「浮かない顔ですね、若先生。酔いました?」
「いや……」
「そう遠慮するこたぁないですよ。気を付けて行きますから、どうぞお休みになっててくだせぇ」
人足はそう言うと、再び
「今も、この都のどこかに潜んでいるはずだ。七年前、
一見、平穏そうに見える陽向であっても、一つ岩をひっくり返せばそこには醜い悪意の虫が
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