第4話
エヴォルターは荒い息をつく。
ノープが放つ攻撃は音波と巨体による拳だけではなく、アンテナから光線を放つこともできた。とはいえ、どの攻撃も単調で注視していれば回避することはたやすい。だから、疲れは肉体的なものというわけではなく、主に精神的なものだ。
エヴォルターが行使する力は、マイナスの感情がもとになっている。怒りとかそういった負の感情は長続きしない。エネルギーが大きすぎて、疲れてしまうのだ。誰にだって一時は怒っていても、その怒り自体はすぐになくなってしまうだろう。それはエヴォルターも似たようなもの。
エネルギーを維持するために、怒りを浮かべ続ける。その怒りには後悔が伴っていた。
自分はどうしてノープと戦ってしまったのか。
それは、ラブシャインに対する怒りにしかならない。ノープへと向けられるものではなかったから、どうしても威力が下がってしまう。対魔法少女に特化しているゆえの弱点であった。
逃げるという選択肢もあっただろう。だが、エヴォルターのプライドがそうはさせなかった。
エヴォルターは歯を食いしばり、体を動かす。トリガーにかけた人差し指に力をこめ、頼りない光の光弾を射出する。
疲れは、エヴォルターの判断を確実に鈍らせている。不断なら、見落とさなかったであろうがれきを、エヴォルターは踏んでしまった。
「まずっ……!?」
体勢が崩れる。避けようとしていたからだが、地面へと倒れていく。スローモーションに倒れていくエヴォルターへと、ガイドライン代わりの紫の線が、狙いを定めて――。
太い光線がエヴォルターへと襲い掛かる。
エヴォルターは目を閉じない。ただ、その胸の中に浮かんでいたのは、こんなところで死んでしまうのか、という強い後悔だけであった。
死を覚悟したように動こうとしない彼女の前に、影が躍り出た。
眩い光が遮られる。
驚きをもって、目を凝らせば、影は少女の形をしていた。
自分よりも少し小さくしたような体型の女の子。光へ剣を突き立るその姿が誰だなんて考えるまでもない。
紫色の光線が、掻き消える。
少女が剣を地面へと突き立て、エヴォルターの方を振り返った。
桃色の輝きを身にまとったその姿は、まごうことなき魔法少女。魔法少女ラブシャイン。
「今更遅くねえか」
その声には先ほどよりもずっと力がみなぎっていたし、言葉ほどラブシャインのことを責めてもいない。
「うん、ごめん。戦っているのがわかったから急いで来たんだ」
「別に来なくてもよかったわ。つーかそっちの方がいいだろ。あたしがいなくなった方がせいせいするだろうし?」
胸がチクリと痛んだ。どうして胸が痛くなるのだ。
困惑するエヴォルターの前で、ラブシャインの首が横へと振られる。
「そんなことない。わたし――わかったよ」
「何が――」
「あなたが、わたしのおねえちゃん、なんだよね?」
「――――」
エヴォルターが息を呑んだ。それだけで、ラブシャインは理解した。本当にそうなのだ。あの夢に見たことは紛れもない事実。一人っ子だと思っていたみのりは、実は双子だった。そして、双子の姉は、死産してしまった。それは、どういうわけか、みのりには教えられることがなく、みのりは一人っ子だと思っていたのだ。
その双子の姉は、アロマとしてこの世によみがえった。実の妹に対する怒りと憎悪と嫉妬を植え付けられて。姉妹で戦いあうように。
――ごめん。
一言だけ、ラブシャインは言った。
エヴォルターは返事をしない。ただ、顔を背けた。
ラブシャインはそれ以上の言葉を紡ぐことができなかった。暴言が来ようとも、銃で撃たれようとも、文句を言うつもりはなかった。
だが、何もやってこない。
ふらつくラブシャインへと近づいてきて、隣に並ぶ。
一歩先へ。
「何ぼさっとしてんだ。あいつを倒しに来たんだろ」
指さす先には、いまだ倒れようとしない少女たちに対する怒りを全身で表現するノープがいた。
思いもよらぬ言葉に虚を突かれていたラブシャインだったが、頷く。
「あれを倒さないとみんなが」
「だが、どうする。攻撃が届かないぞ」
「届かせるしかないよ。でも、このまま攻撃するわけにも――」
言葉の途中で、バサバサと翼が動く音。
背後を振りかえれば、上空から天使がやってこようとしていた。いきなり飛び出していったラブシャインに、やっと追いついたのだ。
息をつきながら着陸した天使は、いの一番、ゲッと言葉を発する。エヴォルターの耳がぴくぴく動く。
「今の言葉は誰に向けられたもんなのかなあ?」
「あ、あはははっなんでもないです。うん」
「どうしたの?」
「どうしたも何も! このままじゃあ危険ですか逃げましょうってことを」
「逃げるわけねえだろうが。逃げるのは剣士の恥だ」
「どう見たって剣士じゃないですけど……」
「ああん?」
「なんでもありません!」
「ごめん。わたしも逃げられないかな。早くしないと、みんなが心配だから」
「みのりさん……」
今にも泣きだしてしまいそうな顔つきになった天使が、ラブシャインを見た。天使にはどうすることもできない。ラブシャインに変身できるものならやっている。できないから、指をくわえてみているのだ。それがどれだけ悔しいことか。どれだけ悲しいことか。肩を震わせている姿を見れば痛感できた。
だからこそ――天使のためにもどうにかしなければ。
決意を新たにしたラブシャインは、隣に立つライバルへと目を向ける。これまで戦ってきたものの、ここまで近くに立ったことはない。隣で、弾丸を取り出してはあーでもないこーでもないと打開策を練っているエヴォルターは新鮮だ。
と――。ラブシャインの視線が、弾丸へと吸い込まれていく。
花の刻印が施された黒の弾丸。
ラブシャインは腰のホルダーから、自らのカプセルを取り出す。
透明な液体に花が浸るハ―バリウムのような白のカプセル。弾丸と自らのそれとを見比べると、明らかに似ている。
「ねえ天使ちゃん」
「なんですか?」
「このカプセル、エヴォルターのものに似てないかな」
「あっホントだ」
二人の言葉に気が付いて、エヴォルターがカプセルに視線を向けた。
「そりゃあ似てるだろ。あたしはあんたに対抗するためにつくられた存在。変身システムだって模倣してるんだ」
「じゃあさ。入れ替えて使うこともできるんじゃない……?」
エヴォルターがきょとんとする中で、天使が手を叩く音が響いた。
「なるほど。でも、どんな効果が現れるか――」
「わからない?」
「は、はい。何しろ、そのカプセルからは負の感情を感じます。わたしたちがつくりだしたものとは正反対の禍々しい力……」
「…………」
確かに、エヴォルターが手にする弾丸からは強烈な力を感じる。
燃えるような怒り、焦がすような嫉妬、雷雨のような悲しみ……。
それらは、エヴォルターから感じるそれと何ら変わらない。人間が持っている、負の感情だ。ラブシャインが行使するポジティブな感情とは正反対のもの。だが同時に、根本的には同種といえる。――人の感情由来という意味で。
相性が悪いとは断言できない。いやむしろ――。
ラブシャインは、エヴォルターへと白百合が揺蕩うカプセルを差し出す。
「これは?」
「わたしが変身するときに使うカプセル。なんだかいろんな意味があったけど忘れちゃった」
「ふうん」
純潔そうなカプセルをためつすがめつ見たエヴォルターは、漆黒の弾丸を取り出し、放り投げる。キャッチして見れば、黒百合が刻み込まれて
いた。
「もしかして、これがあなたの……」
「そうさ。これで変身してた。つまり、そういうことだろ」
エヴォルターがくつくつと笑う。
ラブシャインとエヴォルターが姉妹だとしたら、白百合と黒百合で対になっているのは、偶然とはいいがたい。キョムーンの研究者がわざとしたのだろうか。それにしても出来すぎている。エヴォルターが笑うのも無理はない。ラブシャインもまた笑う。
「おねえちゃんと同じでよかった」
「……理由は?」
「相性がいいかもしれないから」
エヴォルターが口を閉ざす。ラブシャインはそんな彼女へと赤みがかった笑みを返した。
「ちぇっ。そこはあたしが好きだから、とか言えよ」
「それはそうだけど、今はそれどころじゃないから」
「それもそうだ。これ、使うってことでいいのよな?」
ラブシャインは頷く。
二人が変身に用いられるツールは、システムが似ている。エヴォルターが言った通り、ラブシャインのそれを模倣してつくられたものなのだから当然だ。規格が一緒であれば、恐らくは相互に使用できるはず。もっとも、それによって何が起きるかはわからない。
しかし、カプセルと弾丸に込められているのは感情。そして、エヴォルターのリボルバーは感情をミックスさせる装置でもある。ラブシャインだって、いくつものカプセルを交換し、感情の力をその身に宿す。
それならば、正反対の感情であっても行使できるはずだ。少なくとも、理屈の上では。
できるはず。
そう思ってはいても、恐怖が湧き上がる。ラブシャインの手は震えて、弾丸が上手くはまらない。カチカチと音を立てるばかり。それを見たエヴォルターが派手な金属音を起こす。
見れば、シリンダーを出し、しっかりと装填していた。視線に気が付いたエヴォルターが不敵に笑った。
「こうなったら一蓮托生。あんたはどうする?」
「わたしは……」
手のひらの弾丸に目を落とす。その弾丸からは不吉なオーラのようなものをひしひし感じた。そこに巣くう負の感情が、自分のことを染め上げてしまうかもしれない。
――怖い。何ものにも染まらない純白が汚されることが、怖かった。自分が自分でなくなってしまうのではないか。
ラブシャインは、隣に立つエヴォルターを見た。彼女はいつものように飄々としている。その姿は、頼もしい。だが手に握られた、リボルバーはかすかに震えていた。それは、期待によるものなのか、それとも。
ラブシャインは、手渡された弾丸をきつく握りしめる。
そうだ。エヴォルターも覚悟をしているのだ。そんな小さな気づきが、エヴォルターも自分と同じ存在であることを教えてくれる。
ラブシャインの小さな手が、弾丸を杖へと差し込む。杖が白と黒に点滅する。黒い電光と白い電光が、スパークとなって弾けた。
とくん。
杖の異常とともに、心臓が跳ねた。予感がする。何かが変わるような、期待と不安が入り混じった予感が。
エヴォルターの方を見れば、リボルバーもまた、モノクロの光を明滅させていた。
瞳と瞳が合う。
頷きあい、二人は天へめがけて、己が変身道具を突き上げた。
光が、二つの装置からほとばしる。白に絡みつく黒。黒に絡みつく白。遺伝子のような二本の光は、火花を散らしながら絡み合い混じりあい、白とも黒ともつかなくなく。
灰色の光が勢いよく弾け、ドーム状に広がった光が二人の少女を覆った。
ともすれば銀色にも見える光の中で、ラブシャインとエヴォルターの輪郭が曖昧なものになる。放出された感情と同じように、彼女たちの体もまた溶けて、一体化していく。
二つの幼いからだが完全に一体化する。それと同時に、輪郭がはっきりとする。露わとなったボディラインと、玉のような肌を覆い隠すように、白金色のキラメキがいくつも生まれ、服を形作る。それはラブシャインが身に着けていたメイド服とデザインが似ていたが、白と黒と銀を基調としており、ピンクを基調としていたものよりもずっと気品がある。光が弾けるたび生まれるフリルだって、ずっとボリュームがあった。手首に光が瞬けば、腕輪のようなリボンがしゅるりと巻かれる。髪が光に包まれると、二人のトレードマークであったピンクと黒が、銀へと変化する。それと同時に、髪が伸びた。腰まで伸びた髪が、光を受けてキラキラと輝きを放つ。
黒かった銃が、いぶし銀に。白とピンクの杖が、白銅色に。
ヒールを高らかに鳴らし、少女が地面へと降り立つ。その瞬間、光は完全に弾けとんで、その姿が大地に顕現する。
ふうと、ラブシャインとエヴォルターが揃って息を吸う。
「あなたのハートにずっきゅん!」
「あんたのハートを撃ちぬいちゃうぜ?」
決め台詞が、同じタイミングで放たれる。息がぴったりなのは、彼女らが姉妹だからだけではない。その声は、同じ場所から発せられていた。
互いが互いのことを見ようとする。だがしかし、相手の姿は見えない。ラブシャインからすればエヴォルターがおらず、逆もまたしかり。
二人はシンクロしたように困惑の声を上げた。その声すらも、同じ場所から生じた。
自分の体の中からしたような気がする。いや、気のせいではなかった。
「なんでおまえの声が体んなかからすんだ?」
「わたしの方が聞きたいですっ」
「あ、あの」
声をかけてきた天使に対して、エヴォルターが見る。少なくとも、彼女はそうしたつもりだ。
「なんだ」
「ひいぃっ! そ、そのお二人は一緒になっちゃったみたいです……」
「一緒に?」
優しく問いかけたのは、ラブシャインだ。彼女は何気なく質問をしたつもりだ。だが、天使はますます困惑したようで、おずおずと手鏡を差し
出してくる。
鏡に映る姿を見た時、あーっ、と声を上げたのはどちらなのか。
映るのは、ラブシャインともエヴォルターともつかない少女。――天使が言う通り、二人は一つの存在となっていた。
「なんてこったい」呟いたのはエヴォルター。
「何か起こるとは思ったけど、まさか合体するなんて」困惑の声を上げたのはラブシャイン。
だが、その言葉は一つの口から生まれていた。
二人が合体して生まれた少女が、説明を求めるように天使へと向き直る。
「え、えっと。想像ですけど、使ったものが似たようなもので、親和性が高かったんじゃないかな」
「想像ってどういうことだよ」
「だって、こんなの想定してませんよっ!」
涙目になって言う天使を見て、舌打ちが響く。まあまあ、と舌打ちした口から即座に出るものだから、はたから見ると気持ち悪い。鼻をすするようにしていた天使もぎょっとしていた。
しかし――。ラブシャインは、自らに意識を向けてみる。
イレギュラーな存在にしては安定している。変なところは――二人の意識が混ざり合ってしまったことを除けば――なかったし、マイナスの感
情に襲われることもない。むしろその逆だ。精神は凪いだ日の海のように穏やか。それなのに、力は奥底から無限に湧いてくるかのようだ。
「でも、これなら」
「ああ。おまえもそう思うか」
「お前じゃなくてみのりだよ、おねえちゃん」
「――――」
目をぱちくりしている姿が容易に想像できて、みのりはクスリと笑う。笑うな、という言葉がやってきて、ますます笑ってしまった。どこからどう見ても照れ隠しだったから。
「ごめん。こんな人だとは思わなかったから」
「……そりゃ、あたしが言いたいよ。正義の味方がイジメてくるなんてな」
「イジメたつもりはないんですけど。おねえちゃんだからかな」
「今の今まで忘れてたくせに」
「それについては許してください」
「ふん……いいよ。今はそれどころじゃねえからな」
「うん。今なら、あれを倒せる気がする」
少女が、道路の向こうを見る。そこには、ノープの姿がある。新たなる姿にメタモルフォーゼした魔法少女への怒りを覚えているのか、その体が大きく震える。
ノープの顔のようなパラボラアンテナから、音波がまき散らされる。超高音のそれは憤怒の叫び。わずかに残されていた窓ガラスが木っ端みじんに割れていく。
咆哮に怯えた天使を庇うように、少女が立ちふさがる。天使を安心させるように微笑みを向ける。ノープへと向き直ると、少女に似つかわしくない獰猛な表情が浮かぶ。
「どうするの?」
「どうするもこうするもない。行くしかないだろ!」
叫びとともに手持ちの武器が淡く光る。
杖の側面には黒く『EVOL』と。リボルバーの銃口には白く『LOVE』と。
ラブとエヴォル。
鏡のように相反していた存在は、今一つとなった。
ラブエヴォル。
それが銀の少女の名。
右手に杖を左手にリボルバーを携え、ラブエヴォルが踏みしめる。刹那、ノープの眼前にまで移動している。振り上げた杖が、黒の刃でノープの体を切り裂かんとする。だが、杖は空中で止まった。バリアが、前回と同じように攻撃を受け止める。
「二度も同じ手が通じると思うなよ!」
言葉とともに、リボルバーが独りでに回転する。白のカプセルが瞬時に装填された。念じるだけで、それができた。
がちりがちり。
確認することなく、トリガーが引かれる。
銀の銃口から発せられるは白の光。それは、ラブシャインが有していたカプセルの力だ。それが刃を受け止めていたバリアを襲う。
引き金を引くたび、エネルギーがほとばしる。
「なんだこれ……っ! 無限に力が出てくるみたいじゃねえか」
それに同意するかのように、杖から生み出される刃は大きくなった。求めれば求めるほど、活力が湧き上がる。自分たちでも驚いてしまうほどに。
すぐに、刃と弾丸がバリアを食い破った。光の弾がノープの体を襲い、そのたびに苦悶の声が街中に響く。
「このっ!」
ラブエヴォルを叩き潰そうと、腕が迫る。その腕めがけて杖を振るえば、いとも簡単に切り裂いていった。前に戦ったときは、鋼鉄のような硬さに思えたのに、今ではバターのようだ。
それだけ、力が増しているのだ。
二人の力が一人に集約されたから――だけでは言い表せない強さが、そこにはあった。
ノープが苦し紛れに、音波を飛ばす。傷ついているにもかかわらず、その強さはいまだに健在。たじろいだところへと、ビームが殺到する。それを宙がえりで回避。
距離を取ったラブエヴォルは、ノープと向かい合う。
「一気に決めんぞ!」
「はい!」
言葉にせずとも、何をするかが伝わる。その通りに体が動く。
リボルバーの銃口の先端に、黒百合が花開く。ラッパのような花弁の中心は、ちょうど杖と同じ口径。差し込んでくださいと言わんばかりのそこへと杖を押し込んだ。リボルバーと杖が混じりあい、それはライフルのような形になった。ライフルと違うのは、シリンダーが埋まっていること。
それを開くと、弾丸とカプセルが三つずつ現れ、勝手に装填された。
ガチャンとシリンダーがもとに戻る。リボルバーの時と同じように、発射を待つ光が明滅する。だが、その銀の光はリボルバーのものよりもずっと強くて温かい。
銃身上のサイト越しに見るノープもまた、光を集中させていた。向こうも終わらせにかかってきている。
心の中で、互いの意識を重ねあう。互いが互いの存在を感じる。銃を抱えた体を包み込むように、ヒトの熱を感じる。
重なり合う互いの存在を感じながら、ラブシャインとエヴォルターは引き金を引いた。
銃口から、あふれんばかりのプラチナの輝きが飛び出した。それは一直線に、ノープへと向かっていく浄化の光。一瞬遅れて、紫の光が飛び出した。
光と光の衝突。
爆弾が炸裂したような音と光。暴風が爆心地から生まれ、何もかもを吹き飛ばさんとする。ラブエヴォルの体も吹き飛びそうになったが何とか踏ん張る。
不断は車でごった返しているメインストリートに伸びる二本の光線。ぶつかった地点から、飛び散った光の残滓が、がれきを焦がしていった。
二人の少女の入り混じった声が、轟音の中でこだました。
ラブエヴォルの気迫に答えるかのように、銃口から伸びる光線が一層勢いを増した。釣り合っていたバランスが崩壊し、紫色の光線を押し切った。
銀の光線が、ノープの体へと迫る。その一撃を受け止めようとした腕ごと、ノープの体は穿たれた。
巨体が動きを止め、パクパクと喘ぐように動く口から絶叫がほとばしる。
ラブエヴォルは何も言わずに、背を向けた。その背後で、巨大な爆発が起きた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます