特訓
そうとなればすぐに特訓だ。
翌日。俺は畑仕事を終わらせると、エイラとリザちゃんを連れていつもの草原へと向かう。
「ここに来るのは2回目ね」
爽やかな風の中、エイラは深呼吸をした。
そういえばそうだった。
なんだかんだエイラとは来たことがある。
ちなみにリザちゃんと来るのは初めてだ。
「相変わらず何にもないだろ?」
俺はそう言うが自慢では無い。むしろ自虐に近い。本当にここには何も無いのだ。広がるのは一面の草原ばかり。
「そうね。でもこんな場所だからこそトレーニングに集中できるのかも」
へぇ~むしろこっちの方がエイラは好きなのね……。
彼女は頭の後ろで手を組んで身体をほぐす。
リラックスしているのかもしれないが、かなり発育が顕著なメロンも主張している。
だいぶスケベボディになったものだ。
けしからん。
……おっといかん。
最近そんなことしか考えてないな俺……。
どうしたんかな、疲れたかんな?
目頭を抑えるが大して気持ち良く無い。
悲しいことに、いよいよ俺の頭は壊れたかもしれない。いや…前からか。
「私も強くなりたい!」
リザちゃんが可愛くそう意気込んだ。
それにエイラも同意するように首肯する。
あの事件後、なんだかんだ2人は俺のトレーニングに同行したくなったようだ。
エイラいわく、弱いだけじゃ何も守れない。
あの一件後それを強く自覚した。
…と。
自分としてもこの意見には大いに賛成できる。全く持ってその通りだ。
もし俺がおじさんの倉庫から内緒に本を持ち出していなかったら、ひょっとしたら村が無くなっていたかもしれない。
しかしそうならなかった。
なぜなら俺が強かったからだ。
そしてこの弱肉強食の世界ではそれが全てなのだ。
相手だってこちらが弱いから村を蝕んでいたし、こちらが強くなったから逆にあちらを蝕んだのだ。強さがなければ正義もクソも無い。そして最強の禁術師、最強の裏の支配者には強さが必須なのだ。
その事は痛感している。
だから早速、特訓といこうか。
「では特訓を受けるために2人のステータスを確認させてもらう。一応前も見たけど確認って意味でな」
「ええ」
「うん!」
「ステータスオープン」
2人の情報が3D化して立体的に見れるようになった。まずはエイラからだ。
本名 エイラ
種族 人間 女性
年齢 15歳
職業 村人Lv1
体力 9
MP 17
力 10
身の守り 7
素早さ 13
賢さ 13
ギフト
業炎の絶閃
これがあいつのステータス。
身体能力部分は大体俺が1Lvの頃と一緒か少し低めくらいだ。それと彼女の注目すべき点はなんと言ってもこのギフト。業炎の絶閃。
なんちゅうおどろおどろしいギフトなのだろうか。業炎と付くからものすごい熱なのだろうが、絶閃とは何だろう?
たぶんものすごい熱が一瞬で襲ってくるという事なのかもしれない。自分のギフトには攻撃として使えるギフトがないので、少し羨ましい。ただこんな草原では絶対に試してはいけないだろう。自分が予測しているほどの火力なら少なくともこの草原が大火災につながる。やめてほしい絶対に。
次にリザちゃんのも見てみよう。
本名 リザ
種族 人間 女性
年齢 12歳
職業 村人Lv1 祈祷師Lv1
体力 5
MP 20
力 5
身の守り 6
素早さ 10
賢さ 30
ギフト
世界樹の再誕
光玉の至宝
改めて確認したがよく分からないギフト達だ。
世界樹の再誕と光玉の至宝。
初めて聞いたが一体なんの能力なんだ?
そして俺、エイラとリザちゃんのステータスを見て思う。この世界ではギフトというものは選ばれた者しか備えられない至高の御技ではないのか?こうも簡単にポンポンと付いているがこの世界は一体大丈夫なのか…?
もし野蛮な者に恐ろしいギフトがついていたら、世界を転変させる事も可能かもしれない。
そんな恐ろしい力を持っているギフトというものが3人中3人付いていたら、それはもう奇跡でもなんでもないと思うのだが…。
流石にいくらなんでもヤバすぎだろ…。
よくこの世界今まで続いてきたな…。
呆れたいところだが自分が最も多い数のギフトを持っているので、なんとも言えない。
村の中でギフト所有者は俺たちだけみたいだけど、今まで戦ってきた奴の中でギフトを持ってた奴はいたのか?
唯一持ってそうな奴があの神?
なのかよく分からない存在だったが、それらしきものも確認できなかった。というか確認などしている暇がなかった。
それにこれはあくまで村人だからステータスを盗み見る事ができているが、鍛えられた戦士や魔法使いは相手にステータスを見られないように対策をしているかもしれない。
……後はエイラとのステータスとそこまで大差もないな。
最初から職業がもう一つあるのが気になるところだが、ギフトに比べたらそこまででもない。一応身体能力がかなり低めなのが心配ではある。
これは成長前だからとかそういうものは関係するのだろうか?そこら辺はよく分からないから、これから経過観察してみる必要があるな。
とりあえずエイラはギフトからして攻撃魔法タイプ、リザちゃんはなんとなく祈祷師という職業があるから回復タイプなのではないだろうか。
とにかく試してみよう。
「私のステータスはどうだった?」
エイラがデカいぱいおつを張って聞いてくる。
「エイラはそうだな…炎魔法を練習してみるか。ギフトのこともあるけど、アニメだと赤髪のやつは大体炎系使うからな」
「え…今なんて言った?あにめ?」
彼女の顔にハテナマークが浮かんだ。
「あ~ごめんごめん。俺の独り事」
赤髪だったら炎魔法。金髪だったら光か雷魔法。緑だったら自然系の魔法。ファンタジー系のアニメだと鉄則のルールだ。例外もあるが。
「この本を見てくれ。とにかく練習あるのみだよ」
そう言って彼女に一つの本を渡す。
「分かったわ」
「リザちゃんは回復魔法や光魔法を練習してみる?」
「うん!お兄ちゃんが私を助けてくれたみたいに誰かを助けたい!!」
あぁ~良い子だ。前回疑ってしまったがやっぱりこの子に反抗期などないのだ。もしよければ一生このまま天使でいてほしい。
「じゃあリザちゃんはこの本を読んでね。
その後に2人とも指導するから。まぁ、俺の出来る範囲内だけど」
ギフトのこともあるし2人のこれからが楽しみである。あぁそれと、俺も最近ステータス確認してなかったな、久しぶりに見てみるか…。
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