第34話 後は、時間との、勝負。

「…………」


 先生の解剖所見によると、あの伝染病は皮膚からじわじわと進行するものだ。

 だから、せめて、角質層で止める事ができれば!

 けど、今の状況から、それは無理だ。もうさらに深く進行している。……ならば、胚芽層はいがそうで止めるんだ!

 真皮までいくと、おそらくもう手遅れだ。

 毛細血管や神経細胞が侵され、皮下組織、筋膜、筋肉とどんどん侵攻する。


 じゃあ、胚芽層で、止めるには!?


「……筋弛緩剤、の逆だ。緊張させて流れを止めるんだ!」


 一時的に緊張させ、皮膚を硬くして進行を止める。その間に感染してしまった部分を切除、縫合する。


 そのために必要な植物と式は!


「うっ、あ……」


 視界がぐらりと歪み、朝食べた物が胃から込み上げてきた。けど、急いで口を手で押さえ飲み込んだ。本当はこういう時は、吐いてしまった方がいいんだと思う。でも、今は、吐くのに使う体力も惜しい。


「はぁ……、はぁ……。筋肉を、緊張、させる、植物、は……」


 目を閉じ、頭の中で数式を展開させる。


 猛毒だけど、毒性を減じて麻酔にも使うツヅラカズラ! あれを使うんだ!


 ツヅラカズラは、お湯で熱し細かく刻み水溶液にすることで、筋弛緩剤としてよく使われている。


 だけど、あれは、火で炙れば、緊張させる効果と変わる性質がある!

 炎魔法なら、先生もイアリちゃんもオコジョさんも使える!


 だから! 導きだせる数式はこれだ!


 

 Tk〻3≫∽∬∪=K£


 Tkツヅラカズラを、で、3回、熱すると、化学反応を起こし、緊縮効果に代わり、液状になる。そして、K£筋緊縮剤の完成だ。

 それを伝染病になってしまった人に投与し、筋肉が緊張している間に、オコジョさんたちに皮膚を食べてもらい、先生により縫合。イアリちゃんには、先生が行くまでに擬似的な皮膚を魔法で作ってもらう! これしかない!


「行って! 魔法郵便MP!」


 淡く光るピンクの小鳥の形を模した魔法郵便MPを飛ばした。これが一番いい、私が思っていることも、数式も、全部伝えられる。



 後は、時間との、勝負。



 先生や、イアリちゃん、オコジョさんたちと、時間との勝負じゃない。


 みんななら、やってくれる。“プラスの確信”だ。



 時間との、勝負なのは、私。



 段々、酷くなってきている頭痛と、戦っている私、と、時間の、勝負……。

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