第32話 「無限大へと進化するのさ」(アイファ視点)

「わからない、が、答え、か……」


 戻ってきた視界で、光る式をぼんやりと見上げた。


「そう、だから。クロウくんは優しいから、最初から答えを書いていてくれたんだよ。クエスチョンって。アイファがすぐに、追いかけてこられるように」


「……何でもお見通しかよ」


「だからアイファ」


 ジェンが俺の両肩を痛いほど強く掴んだ。


「お前はクロウくんを早く追いかけるんだ。ここは僕に任せて。きっと医師免許を持つお前にしかできないことがあるはずだ」


「そう、だな。わかった」


 ジェンに背を向け、二人が去った方向を見据えた。


 幻影か、残像か、今でも二人の背中が見える。


 小さな“可能性”と、それを支える“希求性ききゅうせい”が。


 助手の二人が臆する事なく進んだ道を、教授の俺が何を尻込みしている。


「ジェン」


「ん?」


「このパニックを何とかできたら、朝まで飲み明かそうぜ」


「もうそんな歳じゃないけど、わかった。喜んで付き合うよ」


「年代物の酒を頼むな!」


 魔法で研究室に置いてあった黒いドクターバッグを喚び出し掴むと、町へ向かった。





「バハハ! 君たちに何とかできるわけが——」


「お前は、クロウくんを甘く見ている」


「ハ?」


「クロウくんは、ミッチェルくんは“可能性“だ。どんな小さな“可能性”でも諦めない、僕らの胆力たんりょくだ。そこに僕の自慢で愛する助手のイアリ、以前の自分を取り戻し、また恋を始めたアイファ。三人が合わさるとどうなると思う」


「さ、三人が合わさっとて、何も……」


「三人が合わせれば、“可能性”は“無限大“へと進化するのさ。だから、お前は終わりだ」


「ぐっ……」

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