第29話 「だから何ですか」
「バハハ! 何とかできるのか!」
先生に胸倉を掴まれながら、ラオザム教授が私を見た。
「忘れているようだが! ボクぴんもあの場所にいたんだ! 一部始終聞いていたんだぞ! 君は天才じゃない! 脳が普通の人間と違うだけ!」
「そうですが」
「しかも、左脳を使って数式を解けば! 右脳は萎縮する! バハハハ! できるの!? キミに! ボクぴんは町中でハシリドイモを燃焼すると共に! キミの両親の皮膚を混ぜ! 伝染病も広げた!」
「なんて事を!」
オネット教授が叫んだ。
「閃けるの!? チミに! 解毒と伝染病の治療の数式を同時に! 脳を酷使しすぎて死んじゃうかもしれないねー! バ——」
「だから何ですか。黙ってくれませんか? もう考えているので。余計に頭痛が酷くなる」
「頭痛って、ミッチー!」
イアリちゃんは私の両肩を掴み、泣きそうな顔をした。
先生の解剖所見と一緒にあった、私の脳のレントゲン。面白いほど、フェイク写真かと思うほど、大きい左脳と小さな右脳。生きているのが、何も障害なく生きているのが、不思議なくらいだった。
それを見て、すぐにわかった。
数式を解く度に増える、立っていられないほどの頭痛や、吐いてしまうほどの頭痛の原因が。
だから、それが何だというんだ。
脳の作りが違う、使えば使うほど、死に近づく、右脳が萎縮していって、楽しいだとか、先生が好きだとか、そういう感情的なものが消えるかもしれない。
だから?
そんなのは、動きを止める理由にはならない。
でも、ここで考えてちゃダメだ。時間の無駄だ。
町の人を診ながら考えるんだ!
「先生は、そのおバカ教授を押さえていてください」
「おチビ、まさかお前っ!」
「町に行ってきます!」
***
あとがき。
止まらぬミッチェル。故に、次回アイファ視点となります。
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