第28話 「何とかしなきゃ」
あれから。
『いいかおチビ、一週間は安静にしてろ。研究室に来たら出禁にするからな』
と、先生に
そして、わかった。
一週間、頭を使わないなんて、
地獄! 生き地獄! 退屈なことこの上ない!
でも、出禁は嫌! 先生と一緒にいれないのは嫌!
だから、我慢した! 私、偉い! よく頑張った!
そして、やっと戻ってきた! 第二研究室! 私は先生の背にぴったり張り付いている。
「そういえばぴんぴん教授、じゃない、ラオザム教授ってあれからどうなったんですか?」
「一年の謹慎、減給処分だ」
「たった一年ですか! ここは優しいですねー」
「全くだ。
「ですよねー!」
「……で、おチビ。お前は何で俺の背中に張り付いてる」
「ビッグボインさんのバックハグを防ぐためです!」
私は先生に背を向け、スポーツ選手のように両手を広げてマークしていた。
これなら大丈夫! 先生が植物や数式に夢中でも! 先生を守れる!
さぁ! 来い! ビッグボインさん! ビッグビッグボインさんでもいいぞ!
お! なんか足音がこの研究室に近づいてくるぞ! さぁ! 来い! 誰でも迎え打——。
「助けてくれぇ!」
つ?
研究室に入ってきたのは、ここで働いている研究者の方だった。
「どうしたんですか? ビッグビッグビッグボインさんでもやってきましたか?」
「猛獣が! 猛獣がラボの中に!」
「猛獣?」
先生から離れ廊下を見てみた。誰もいない。
「猛獣なんかいるわけねぇだろ。ここの入り口は指紋、声紋、顔認証、暗証番号が揃わないと入れないんだ。誰かが招き入れない限り入ってこられるわけがねぇ」
先生も私の上から顔を出し、廊下を覗いた。
「ですよねー」
「いる! そこに!」
「どこにですか」
「そこ!」
研究者の方は、私たちを指した。
「いや、私たちしかいないし」
「お前たちの近くに!」
「だから私たちしか——」
「助けてぇー!」
また廊下から声がした。覗いてみると。
「何が起こってるの……」
入り口側からたくさんの人が必死の形相で逃げてくる。ラボ関係者でない人が。
みんな、何かに怯えている様子だ。これはもしかして……。
「助けて、くだ、さい……」
とある人が這って私たちの所にやってきた。その人を見てみると、皮膚が灰色になっていた。
似ている……。
「死にたく、な——」
私たちに向け手を伸ばし、そのまま、息絶えた。
「——……」
先生が息を呑む音が聞こえた。
「アイファ!」「ミッチー!」
第三研究室から二人が血相を変えてやってきた。
「何なのこれ!」
「……イアリちゃん、これはね、多分」
「アイファまさかこれは……」
「……ああ」
「両親がなった伝染病だよ」「先輩方がなった伝染病だ」
先生の言葉と重なった。
「でも、先輩方の時は皮膚が白く——」
オネット教授の言葉を。
「バハハハハハ! 死ね! ボクぴんをバカにする奴らはみんな死ねー!」
狂ったラオザム教授が遮った。
教授の手には割られたプレパラートが握られていた。
「まさか!」
先生は急いで開かずの間を魔法で現し、中に入った。そして、すぐに激怒しながら戻ってきて。
「てめぇ! 俺が大切に保管していた先輩方の皮膚を取ったな!」
ラオザム教授の胸倉を掴んだ。
「バハハハハハ! そうだ! ボクぴんが有効活用してやった!」
「何が有効活用だ! 俺がどんな思いで先輩方を解剖したと思っている!」
「知るもんか! ボクぴんをババババババカにすすすすすすする奴は! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ね死ね死ねねねねね」
「…………」
やっぱりこれは、あの時の助手さんと似ている。いや、同じだ。
「ねぇ、ミッチー。ラオザム教授おかしくない?」
「……イアリちゃん。ハシリドイモの恐ろしいところはね、植物の中で唯一毒素を気化できることなんだ」
「え!? じゃあ、まさか……」
イアリちゃんは私を見ると、ラオザム教授を見て顔が青ざめた。
「そう。偽万能薬を作るために、ハシリドイモの気化された毒素を自然に吸っていた。液化されたものを
「どうすれば……」
「ハシリドイモは根を刈ってもダメ、燃焼すれば逆効果。だから、凍結するしかない。でも、その前に」
入り口を見た。
何かに怯え逃げてくる人や、やっとの思いでここに来たのに、皮膚が灰色になり涙を流し亡くなっていく人ばかり。
「このパニックを何とかしなきゃ」
***
あとがき。
やらかすことしかしない、それが、ぴんぴん野郎。謹慎だろうが減給だろうが、ぴんぴんしている。それが、ぴんぴん野郎(笑)
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