第24話 「心配かけてごめんね」じゃなくて

 何だろう? 雲の上かな? ふわふわぷかぷかしている。


「ん?」


 遠くから誰かが手を振り、両手でバツ印を作っている。


 あの二人は……。


「お母さんとお父さん?」


 銀のロケットペンダントを開いた。


 白衣をきて褐色肌に薄いクリーム色のボサボサ短髪の男性と、私のように小さく外跳ねなピンクに近い赤髪の女性が幸せそうに笑って写っている。


 段々と近づく二人を見てみた。


 同じだ。


「お母さん! お父さん!」


 透明な雲みたいな道の上を走ると、二人はレポート用紙にペンで大きく何かを書き、私に見せた。


「うん? まだ早い? 来ちゃダメ?」


 私がメッセージを繰り返すと、二人は大きく頷き、両手で丸を作った。


 そして、また、レポート用紙にペンで何かを書いて、見せてきた。



『アイファを頼む』



「——うん!」



 私はグッと親指サインを見せた。


 二人も同じようにサインをくれ、ニッと笑った。


 それを見て、私は二人に背を向けて、歩き出した。



 ***



「ん……」


 目を開け、見えたのは、ラボの医務室の天井。


「ミッチー……」


「ん?」


 横を向くと、床に座りベッドにうつ伏して寝ているイアリちゃんがいた。


「ペチャパイ嫌なら……、半分あげるから……。だから……、死なないで……」


「ふふっ、半分あげるって、イアリちゃんらしいや。……でも、かなり心配かけちゃったな……」


 体を起こし、イアリちゃんの体を揺すった。


「イーアーリーちゃん。あーそーぼっ」


「うん……?」


 イアリちゃんは目を擦りながら起き、私を見ると。


「——ミッチー!」


 ぶあっと泣き出し、ぎゅっと私を抱き締めた。


「ミッ、ミッヂィー! よかっだぁー! もうダメかど思っだぁー!」


 ボロボロ泣くイアリちゃんを見て、もらい泣きしそうになった。


 でも、湿っぽいのは嫌いだし、私らしくない。


 だから、こういう時は「心配かけてごめんね」じゃなくて。わざとらしく。


「ミッチェル・クロウ! 只今生還しました!」


 兵隊さんみたいにびしっと敬礼、が、私らしいよね。



 

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