第17話 「ど? 興味を持ってくれたかな?」(ジェン視点)

やかましいでしょー? ごめんねー」


 ジョリー先輩は文字通りディック先輩を尻に敷いて、ディック先輩の腹の上に座って言ったんだ。


「いえ、何というか……。電光石火のような方ですね」


「うるさいって、はっきり言ってくれていいんだよー?」


「うるさかったです。口を縫ってやりたかった」


 アイファは、いずれ憧れの先輩になる人に、失礼なことを言ったんだ。


「アイファ!」


「あっはっは! あなた面白いわねー。この人が言っていたけど、『マジアプランツェラボM・P・L』を目指しているの?」


 ジョリー先輩はディック先輩の腹を、トランポリンみたいに尻で跳ねさせながら言ったんだ。


「は、はいっ。あのラボが一番、設備などが整っているし、歴代学者は素晴らしい方が多いですから」


「そっか。ちなみに何学?」


「物理にしようかと」


「物理か! 物理も面白いよな!」


 突如、目覚めたディック先輩に。

 

「あなたは寝てる」


「ぐほぉ!」


 ジョリー先輩は思いっきり体重をかけ、ディック先輩に座り直したんだ。


「ねぇ、君たち」


「はい」


「魔法薬理学者、目指す気はない?」


「魔法薬理学、ですか」


「薬理学は面白いよー!? 無限だよー!? あと、物理にも似てるかな」


 あの時のジョリー先輩のキラキラした瞳は、『マジアプランツェラボM・P・L』に入所した時のミッチェルくんそのものだった。


「物理と?」


「そ。物理は自然界の現象とその性質を、物質とその間に働く相互作用によって理解すること、及び物質をより基本的な要素に還元して理解すること。でしょ?」


「はい」


「だから、薬理学では複数の薬物、あるいは食物などに含まれる成分が摂取されたとき、その薬効あるいは副作用などに単独で摂取した場合と比較して相違がある場合、これを相互作用というの。この薬理学的相互作用は、二つに分ける事ができる」


「二つに?」


「そう。一つは、吸収、体内分布、代謝、排出において、ある薬物が他の薬物の濃度を変化させる。もう一つは、薬効や副作用に直接関わる段階で薬物間の影響があるの」


「それは、例えば」


 アイファがずいっと前に出て食いついたんだ。それを見たジョリー先輩はニヤリと笑い。


「ど? 興味を持ってくれたかな?」


 と、言ったんだ。


 僕らはあっという間に、植物と魔法薬理学の可能性に惹かれていったよ。

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