第15話 「だから嫌だったんだ……」(ジェン視点)
「ミッチー! ねぇ! どうしたの!」
後ろから倒れたクロウくんを受け止めながら、イアリが悲痛の声で叫ぶ。
「ミッチー! 返事して! ミッチー!」
「気を失っているだけだ」
顔を歪めながら、アイファがクロウくんの顔を覗き込んだ。
「シューラー教授! ミッチーは何で!」
「……そいつは、ミッチェルは、天才ではないからだ」
「どういう、こと、ですか……」
「…………」
アイファの顔がどんどん歪んでいく。
「……ミッチェルは天才なんかじゃない。人と、普通の人間と脳の作りが違うんだ」
「脳が……?」
「ミッチェルは……、人より左脳が格段に発達していた。……左脳が、右脳より大きいんだ」
「だから……、どんな難しい数式も瞬時に……」
「ああ。左脳を使って、数式を解くたび、左脳は拡大し、それに比例して、右脳は萎縮している」
「え……」
「その積み重ねの代償が……、とうとう来てしまった……」
脱力したように、糸を失った糸操り人形のように、アイファは座り込んだ。
「ミッチーはそれを知って……」
「知っているはずだ……。だが、幼い時はそんな事はわからず、数式が解けるのが面白いから、今以上に酷使していただろう……」
「そんな……」
「だから、だから嫌だったんだ……。こいつを助手にするのは……。だが、悪用されないためには、こうするしかなかった……」
アイファは自分を責めるように言うと、項垂れた。
「……シューラー教授は、ずっと前からミッチーのことを知っていたんですか?」
「ああ……」
「それは、どうして……」
「…………」
アイファは少しだけ顔を上げ、今にも泣き出しそうな顔をし、口を開きかけ結んだ。
「アイファ、辛いなら僕から話そうか」
「頼む……」
何とか絞り出したような声でアイファは言った。
「イアリ、僕とアイファが魔法薬理学者を目指したのはね、ある人の影響なんだ」
「ある人?」
小さいクロウくんを、ぎゅっと抱き締めながらイアリは僕を見た。
「そう。クロウ先輩のね」
「クロウって……」
「…………」
クロウ先輩の名に、アイファの肩がぴくんと跳ねた。
「うん、クロウくんの、ミッチェルくんのご両親さ。二人は僕らの憧れの先輩だった」
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