第10話 「ショボン玉ぷーかぷか……」
「ショボン玉ぷーかぷか……」
私は昨日の残りの、ヤシで作った泡玉を魔法で飛ばしながら、トボトボと廊下を歩いていた。
あれから、先生にこっ酷く叱られ、さらに風呂嫌いにさせてしまった。おまけに、先生のアソコは見れなかった。
「ショボボン玉ぷーかぷか……」
「えいっ」
泡玉を飛ばしたら、横から指で刺されパチンと消された。
「イアリちゃん……」
「まーた派手にやらかしていたみたいね、ミッチー」
「そうそう、こっちまで聞こえてきたよ、アイファの怒鳴り声」
「オネット教授……」
二人に挟まれ、頭を撫でられた。
「今度は何をやらかしたの」
「……風呂嫌いな先生のために、一石三鳥な洗浄脱毛泡風呂を作ったの」
「それで?」
「効果ありすぎで、アソコの毛までツルツルになるとこだったって、怒られた……」
「はははっ! 相変わらず君はすごいなー」
オネット教授は目に涙を溜めながら笑った。
「すごくないです……」
「いやっ、すごいよ。あいつのあんな大きな声、久しぶりに聞いたからっ」
「それはまぁ、確かに」
先生は普段、ぼそぼそ喋るか、淡々と話すから、大きな声をあまり聞いたことがない。
「だからね、やっぱり君は、あいつにいい変化をもたらしているんだよ」
「そうでしょうか……」
「うん。君という新種の植物は、謎だらけで興味深いけど、どう扱ったらいいかわからない、だけだと思うんだ」
オネット教授は、空中に指で光る魔法文字を“アイファ“と書いた。
「今まであいつの周りはさ」
Teや、≧など、“アイファ”の周りを、たくさんの記号などが円状に並んでいく。
「植物と数字だらけだったんだ」
「はい……」
「そこに、君が現れた」
“アイファ”の隣に“ミッチェル”と書かれた。
すると、周りに書かれてあった記号などが混ざり合い、“恋”という文字に変わり、ハートの形を作った。
「そして、恋が生まれたんだよ」
「私だけですけどね……」
「ああ、まぁ、うん。“今”はそういうことにしておこうか。いずれわかるよ、君は、アイファにとって、少なからず、“特別”であるということが」
「だと、いいんですが……」
「じゃあ僕は、足毛ツルツルになったあいつをからかいに行ってくるね」
オネット教授は、爽やかにウインクし、手を振り第二研究室に向かった。
「ミッチー」
「なーに、イアリちゃん」
「ナイスガッツ!」
グッとイアリちゃんは親指サインをした。
「ナイスガッツなのかなー……」
私はまたしょんぼりと、ショボン玉を浮かせたのだった。
***
あとがき。
ショボン玉をパチンと割ってあげたい、などなど思ってくださった方。
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