第8話 「こいつは俺の助手だ」

「君を見に来た他のラボの連中が、そんなことを話していると、アイファがやってきたんだ」


「先生が?」


「うん。そして、難問突破してキラキラした目をしていた君をひょいっと担ぎ上げ、こう言ったんだよ」



『こいつは俺の助手だ』



「ってね」


「…………」


 か、かっこいー!


「そして、いや私に! 俺に! ウチのラボに! と、諦め悪い連中に、まだ助教だったあいつは」



『なら、この数式を解けるか』



「と、床に数式を書いたんだ」


「誰か、解けたんですか?」


「解けなかった。いや、んだよ」


「どういうことですか?」


「後で、あの数式の答えを教えてって言ったら」



『わからん。ついさっき見つけた新種の植物を元にした、俺が考えた新薬の数式だ。この数式が。だから、わからん』



「と、言ったんだ」


「…………」


 か、か、か、かっこいー!


「だからね。小さな君を悪用されないように守る意味もあったと思うけど。それ以上に、君という女の子に興味を持ったんだと、僕の幼馴染おさななじみアイが言っていたよ」


 右人差し指で目尻を指しながら、オネット教授はウインクした。爽やかー。


「そうだといいんですけどねー」


「そうだって。そうじゃなきゃ、二十年以上、君を助手にしていないよ」


「そうかなー? うん、なんか、そうな気がしてきました!」


「うんうん」


「そうしたら、先生に会いたくなってきました! 研究室に戻ります!」


「うん、そうしな」


「はい! バイバイッイアリちゃん! さようならオネット教授!」

 

「バイチーミッチー」


「またね」


 私はぶんぶんと大きく手を振り、大研究広間を出た。






「ホント、可愛くて好きだわー。落ち込んでも一瞬で立ち直るとことか」


「わかるわかる。きっとあの子なら、できるんじゃないかな、あいつの心に、火を灯す事が」

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