第7話 「いらん」
「それにしても、どうして胸を大きくする。という発想に至ったんだい?」
オネット教授は、伸びた私の胸を見て笑いながら尋ねてきた。
「……アイファ先生が、私を見てくれないのは、女の魅力が足りないからだと、思ったんです」
「うん、それで?」
「そうしたら、イアリちゃんが盛ればいんじゃね? と、アドバイスをくれたので、薬で盛ろうと思ったんです……」
「またイアリの入れ知恵かー」
「だってせんせー。あーんなに可愛いミッチーが悩んでいるんですよー。構いた、助けたくなるじゃないですかー」
「イアリちゃん、構いたいって言いかけたでしょ……」
「アハハッ、そんなわけないじゃーん。ミッチーヘイッパース!」
イアリちゃんは足下に落ちていた解服薬の瓶を拾うと、放り投げた。
「ありがとー……」
私はそれを両手でキャッチし、キュッキュと蓋を回して開け、一気に。
「ん、ん、んー! これは不味い!」
飲み干した。
またしても、大胸筋と小胸筋が引っ張られたように痛み出した。そして、ひゅんっと縮み、ペチャパイに戻った。
「…………」
私は平な胸を見下ろし、足元が見えやすくなり悲しくなった。
「んー、気にしなくてもいいと思うけどなー、胸の大きさなんて」
オネット教授は、イアリちゃんと並びやってきた。
「でも、先生はちっとも私を見てくれないんです……」
「あいつは昔からああさ。うん、じゃあ、あいつの幼馴染として、アドバイスをあげよう」
オネット教授はアイファ先生と幼馴染なんだ。……オネット教授の方が若く見えるけど。
「あいつはね、クロウくんのことを何気に気にいってるよ? “天才”だからじゃなくて」
「そうでしょうか……」
「そうじゃなきゃ、いくらこのラボの試験を突破した四歳児を助手になんかしないさ。あの助手落としのアイファが」
助手落とし。アイファ先生の別名だ。変人で海藻頭の教授。でも、知識と未知の植物を見つける行動力などは抜群で、先生の助手になりたい人はたくさんいたらしい。
でも、どんなに有能な人が、名乗り出ても。
『いらん』
の、一言で追い返していたそうな。
そんな中、現れた謎ベビー私は、四歳で入試難問を突破、ラボ入所。
だから、ただ、珍しかっただけじゃないかなー。
「君は覚えていないかもしれないけど。あのベビーが入所した! って、他のラボでも大騒ぎだったんだよ」
「そうだったんですかー」
そう、ラボは他にもいくつかある。まぁ、私は、先生のいるここしか、アウトオブ眼中だったけど。
「それで、悪用しようとしていた奴もいたらしいんだ」
「悪用? 何をですか?」
「君を。まだ幼いことをいいことに、これは人のためになる薬だと毒薬を開発させようとしていたり。最悪の場合」
「最悪の場合? なんですか?」
「君の脳みそを取り出し、そこから色んな情報を取り出す。もしくは、君を機械化させ、永遠に働かせる」
「えぇー……、気持ち悪!」
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