第14話 新居


荷物を満載したリアカーを引いて、スラムのねぐらからハンターギルドの裏庭の広場に戻ってきたワタシたち3人。


アルミ製のリアカーのノーパンクタイヤとベアリングがいい仕事をしてくれまして、おにぃひとりでも全然余裕でリアカーを引けました。


5歳のワタシは体力的にアレだったので、途中からリアカーに乗せてもらいました。


(ワタシを乗せたから、荷物の総重量的には100kg近くになったと思うんですよね)

(それでもおにぃひとりで引っ張ってこれるんだから、このリアカーは当たりですね)



そんなことを考えていると、


おにぃ「オレたちの新しいねぐらの場所、どこにする?」


ねぇね「私、あまり目立たないところがいい」


そんな会話が始まりました。


改めてハンターギルドの裏庭の広場を見渡してみると、手前には小石やちょっとした雑草が生えている程度の比較的整備されている場所があり、更にその奥には、背の高い雑草が生い茂っている場所が見えます。


それを見てひらめいたワタシは、


「一番奥の背の高い草むらとの境目にしましょう」


おにぃ「そんなに奥? 草むらが邪魔じゃない?」


「草むらを利用して、目立たないように生活するのです」


ねぇね「目立たないのは賛成~」



ということで、ハンターギルドの建物から一番遠い場所、2メートル近い背丈の雑草が生い茂る所の手前に陣取ることにしたワタシたち。


その理由は、ちょっと思いついたことがあったからです。



まずは、整備されている裏庭の広場の一番奥、草むらの手前ギリギリに、スラムのねぐらから持ってきたボロ布や木の板などを組み合わせて、テント(のように見えなくもないモノ)を建てます。


そして、そのテントの裏側、奥の背の高い草むらの雑草を踏み倒していき、子供ひとりが通れる道を作っていきます。


そして、草むらを5メートルほど進んだら、そこに、さらに5メートル四方の広場を作っていきます。


(広場といっても、ただ雑草を踏み倒しているだけですけど・・・)


そんな感じで準備ができたら、


(ここは仮住まいだから、移動できて、お家にできるモノ・・・)


(よっし! 外国製の大きなキャンピングカーを【想像創造】!)

(・・・ん? あれ? 創れない?)


(それじゃあ、もっと小さなヤツで、軽トラベースのキャンピングカーを【想像創造】!)

(あれれ? これもダメ?)


(それじゃあ今度は、軽のワゴン車を【想像創造】!)

(むむむっ? これもダメか~)


(もうこの際、中古の安い軽のバンでいいから、【想像創造】!)



【サンバーバン 660 4WD 3AT シルバー 走行距離15.5万キロ 148,000円】



「やったー! やっと創れた!」


(【想像創造】って、創れるものとダメなモノがあるみたいだね)

(その差はなんだろう?)

(大きさかな? それとも重さ?)

(でも、軽ワゴンと軽バンは大きさも重さもほぼ一緒だし・・・)

(ん? もしかしたら、お値段かな?)

(あんまりお高いモノは創れないのかな?)

(これは今後、検証してみる必要がありそうですね・・・)


私がひとり物思いにふけっていると、ねぇねとおにぃが騒ぎ出しました。


おにぃ「な、なんだ? これ」


ねぇね「なあに? このキレイな銀色の鉄とピカピカのガラス窓?」


「これは、またの名を『群馬のポ〇シェ』と一部で呼ばれているかもしれない、リアエンジンの自動車」

「ワタシたちの新しいねぐら、軽パコ(ケッパコ)です!」


ねぇね「ケッパコ?」


おにぃ「なんだ? それ」


「まあ、アレです。雨風しのげる移動可能なお家だと思ってください」

「これはなんと、イザとなったら移動することができるんですよ?」


おにぃ「へぇ~、なんだかわかんないけど、ここに住めるのか?」


「今からこれが、ワタシたちのお家なのです!」


ねぇね「やったー! キレイなお家~!」



そんな感じで、スラムのねぐらからのお引っ越しは無事終了です。


ハンターギルドの裏庭の広場の一番奥で、草むらの手前のボロテントモドキで生活しているように見せかけて、実際はそのさらに奥の草むらの中、軽パコの中で生活するワタシたちなのです。


(とりあえず、一応、脱スラムできました!)


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