第7話 当面の目標


その日の夕食は、お米と干し肉でかなりリッチな感じになりました。


おにぃ「うんめ~、肉なんて久しぶり~」


ねぇね「美味し~、ホント美味し~」


「しょっぱい干し肉と、甘いお米が合いますね~」


ワタシも久々のタンパク質に舌鼓を打ちました。



翌朝、屋台のお店で購入した硬い黒パンをかじりながら、今後のことを相談します。


「ねぇね、おにぃ、ちょっと聞いて欲しいお話があるのです」


ねぇね「なあに?」


「ワタシたちの今後のことなのです」


おにぃ「今後?」


「今のままだと、ここの生活、スラムから抜け出せないのです」


ねぇね「それは、そうでしょうね」


「だから、目標を決めて、少しずつ、生活を改善していきませんか?」


おにぃ「改善? どうするの?」


「まずはですね、身ぎれいにしましょう」


ねぇね「身ぎれいに?」


「そうです。ワタシたち、はっきり言って、汚いのです」


ねぇね「スラムに綺麗な人なんていないでしょ」


おにぃ「まあ、そりゃそうだ」


「汚いから、町のお店にワタシたちは入れてもらえないのです」

「身ぎれいにすれば、ちゃんとお客さんとして扱ってもらえると思うのです」


ねぇね「う~ん、そうなのかな~?」


「きっとそうなのです。だから、まずは、身ぎれいにすることから始めましょ?」


おにぃ「身ぎれいって言われてもな~、どうするの?」


「まずは毎日体を洗うこと。そして、お洋服を洗濯すること」


ねぇね「お洋服を洗濯したら、着るものがなくなっちゃうよ?」


「そうです。だから、まずは、もう一着お洋服を買いましょう」




ということで早速お買い物に出かけます。


行き先は、何でも売ってるスラムの屋台のお店です。



店主「よう、坊主ども、昨日も来たが、今日もなにか要りようか?」


ねぇね「お洋服が欲しいの」


店主「洋服だぁ? 高いぞ、そんなもん。金あるのか?」


「とりあえず、見せてほしいのです」


店主「お? おチビ、いたのか。まあ、見るだけならタダだもんな?」


そんな会話の後、子供服と思しきものを店の裏から持ってきた店主さん。


女の子用の小さなワンピースが3つと、男の子用の長ズボンと長袖Tシャツのセットを見せてもらいました。


「これは、全部でおいくらですか?」


店主「そうだなぁ、着古したヤツだし、買い手もあまりいないからなぁ~」

店主「全部合わせて150リルってとこかな?」


ねぇね「ひぃ~」


おにぃ「たけ~」


(ワンピース3つと長ズボンと長袖Tシャツ、5点で150リル)

(1点平均30リル、大体4,000円ぐらいかな?)

(たしかに中古のお洋服にしてはお高く感じますね~)

(でも、見た感じは綺麗だし、必要経費ですよ!)


ということで、


「買います。全部くださいな」


ねぇね「え?」


おにぃ「ホントに? 買うの?」


「ええ。今後のための必要経費です!」


店主「なんだか知らねえが、買うんだな?」


「はい。お願いします」


店主「それじゃ、150リルだ」


おにぃ「はい。小銀貨と、大銅貨5枚・・・」


ねぇね「あぁお金が・・・」


店主「まいど~」




ワタシの野望の第一歩は、こうして進められたのでした。


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