【第一部】第三十六章 稲姫の“主様”
――神楽の家――
「ふん♪ ふん♪ ふ~ん♪」
「あら?
稲姫は腰に手を当てながら――
「わっちも神楽と『
そう言うと、ドヤ顔を決める。
「あらあら……神楽、大丈夫だったの?」
料理皿を運んでいる神楽に春が心配そうに聞く。
「ああ。特に問題ないよ。むしろ、すごく相性がいいって、団長や神主さんから誉められたくらいだよ」
神楽が頬をかきながらも、そう答えた。
儀式中、二人の入った輪の外に灰色の粉がまかれたが、これは、儀式の成否を見極めるためのものだった。
縁結びが問題なく成れば、灰色の粉は輝きを放つ。その色合いは当事者によって様々であり、神楽と稲姫の場合は、
その輝きが常の儀式よりも見事なものであり、「これ程のものは見たことがない」と称賛されたという訳だ。
「ちょっと悔しいけど、うちとの時よりも見事だったにゃ。……でも! 今やれば、きっとうちだって負けないはずにゃ!」
テーブルを
「お兄ちゃんも罪深いね……」
鍋で調理中の
◆
「いただきます!」
皆で夕飯をとり始める。
「で、稲姫ちゃんにきちんと里の案内はしてあげたの?」
春が神楽に話を振る。
「ああ。――学び舎、商店街、自警団本部、神盟旅団本部……主要施設は周ったよ」
神楽がなんとはなしに答えるが――
「お兄ちゃん、色気無さすぎ……。綺麗な風景の場所とか、おいしい食事処とか、もっと色々あるでしょうに」
楓があきれたように苦言をも、らす。
「し、仕方無いだろ? 流れで“縁結び”をすることになって、他の場所には行けなかったんだよ」
「でも、ご主人らしいにゃ」
たははと琥珀が笑う。すると――
「なんで琥珀ちゃんは神楽のことを
稲姫が、なんとなく気になってたいという感じで琥珀に聞いた。
「うちにとっての特別な人だから……かにゃあ」
頬を赤く染めながら「照れるにゃ」とこぼし、話を切り上げてしまった。見ると、神楽も赤くなっている。
稲姫は「むぅ~っ!」とうなり、
「じゃあ、わっちは今から、神楽を“
思わず神楽がお茶をふく。稲姫としては、琥珀と同じ呼び方は何となく嫌だけど、
「神楽、お行儀が悪いですよ?」
「お兄ちゃん汚い!」
春と楓からたしなめられるが、神楽は――
「ちょ、ちょっと稲姫? 別に呼び方は変えなくていいよ! それになんか、こそばゆいよ……」
神楽はそう言うと、赤くなり頬をかく。
稲姫はそんな神楽の態度に気をよくし――
「嫌でありんす! これからは、神楽がわっちの主様でありんす!♪」
主様呼びすることを譲らなかった。
「稲姫ちゃんも中々やるにゃあ……」
「ふふん♪」
琥珀と稲姫が視線で火花を散らしていた。
――そうして、神楽は稲姫の
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