【第一部】第三十四章 村里案内
――“御使いの一族”の村里・神楽の家――
「おはよう」
「おはようにゃ」
「おはようでありんす」
翌朝、
「おはよう」
「おはよう。ゆ、
楓と春もあいさつを返す。春は、昨晩、神楽と琥珀、稲姫が三人で寝たのがやはり気になるようだ。楓はどことなく、ムスっとしている。
「うん。ぐっすりにゃ♪」
「気持ちよかったでありんす!」
二人の元気のよい返事に――
「き、気持ちいい!?」
春は動揺してしまう。
「“ふかふかのお
一応、神楽が
「そ、そう。――お布団が小さかったら言ってね?」
やはり春は誤解しているようだが、もうみんな気にせずスルーした。
◆
「いただきます!」
「お魚にゃあ♪」
琥珀の好物である魚料理があり、朝からハイテンションだ。稲姫も嬉しそうに食べている。
「神楽、今日は何か予定あるの?」
「ん~、特に無いなぁ」
春の問いに、神楽が答える。長老からお呼びがかかるのを待ってはいるが、今日はこれといって予定はない。
「じゃあ、稲姫ちゃんを里の中、案内してあげたら?」
春の提案に稲姫の狐耳がピンッと立つ。
「行きたいでありんす!」
しっぽをフリフリ、稲姫はご機嫌だ。昨日は元気が無かったけど、一緒に食事を取って寝たら、少し緊張が取れたのかもしれないな。
「うちも行くにゃ!」
「そうか、じゃあ琥珀も一緒に行こうか」
神楽と琥珀で稲姫に里を案内することにした。
◆
「――って言っても、昨日行ったとこもあるから、そんなには残ってないけどな」
そう言って神楽は、昨日は通らなかったルートで案内を始める。
「ここは学び
里の中心近くにある、大きな建屋を案内する。と言っても、
「小さい子がたくさんいるでありんす!」
「みんなで一緒に教えてもらうんだよ。集団行動のルールを学ぶためにもな」
「みんな可愛いにゃあ♪」
◆
「次は商店街。物が要り用の時は、ここで買って
「たくさんのお店があるでありんす!」
「おいしいお魚もここで買えるにゃ♪」
たくさんの出店が並ぶ区域を案内する。まだ早朝だが、店には活気があり、それ程多くはないが、人で
◆
「ここは
学び舎よりも大きな施設だった。大人達が大勢いるのが遠目にもわかる。
「神楽や琥珀もそうなんでありんすか?」
気になったので稲姫は聞いてみた。
「俺と琥珀は、“各地にいる神様達に会いに行ったりして仲良くなる”のが仕事、かな?」
「そうにゃ。そっちにも行ってみるにゃ」
琥珀の提案に神楽がうなずき、三人は次の場所に向かった。
◆
村里の北にある小高い丘の上にある大きな屋敷に着く。そこは村里の中でも一番大きな屋敷だった。昨日の長老宅よりも大きいだろう。
「ここが俺達の所属する“
「うちは所属というよりも、ご主人と“
神楽と琥珀が稲姫にそう教える。稲姫は昨夜からずっと気になっていたことを聞く。
「“
神楽と琥珀が顔を見合わせる。そして、神楽がどこか
「簡単に言うと、『ずっとお互いに仲良くいよう』って約束した関係って言うのかな……」
「照れるにゃ……♪」
神楽と琥珀が
それを聞いた稲姫はというと――
◆
「琥珀ちゃんだけずるいでありんす! わっちとも『えにしを結ぶ』でありんすよ!!」
それは
「琥珀だけじゃないんだけど……まぁ、今はそれはいいか。――でもな、稲姫。“縁を結ぶ”には、大事な約束を
そこで神楽は一度言葉を区切り、稲姫がきちんと理解できる様にかみ砕いて説明する。
「『あなたとずっと共にあり、決して裏切りません』っていうような約束を。それは、神様の側にとっても大事な約束で、後になって
神楽はそう言って稲姫に優しく
「約束できるでありんすよ? 神楽はできないでありんすか?」
稲姫がどこか怒った風に神楽を問い詰める。
「
神楽が
◆
「はっはっは! 神楽、お前の負けだ。その方と縁を結んではどうだ?」
「だ、団長! いつからそこに!?」
気付いた神楽が敬礼する。稲姫はよくわからず、置いてきぼりだ。団長も神楽に敬礼を返し――
「お前たちが来てからずっとな。新しい神様が気になってな」
そう言うと、団長は稲姫を見る。
「先程この神楽から説明がありました通り、一度“縁を結ぶ”と、例え神様と言えど、約束を破ることはできません。最悪の場合、死んでしまうこともあります」
団長は神楽が言いにくくて伝えられずにいたことにも言及し――
「それでも、この神楽と縁を結んで下さいますかな?」
まっすぐ稲姫の目を見て問いかける。稲姫は――
「わっちが神楽を裏切るなんて
何が問題なのかわからないというように首をかしげて返す。
「はっはっは! 神楽、お前も稲姫殿を裏切る気など
「あ、当たり前です!」
神楽も当然だと返す。
「ならば、“縁を結ぶ”といい。俺も立ち会わせてもらおう!」
――団長は神楽と稲姫、琥珀を連れ、とある場所に向けて歩き出した。
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