【第一部】幕間【三十三章後】同衾は権利です?

「ほほう……一緒に同衾どうきん、ねぇ?」


 稲姫いなひめ琥珀コハクの昔語りを聞いたエリスの第一声がソレだった。


「い、いや、もっと他につっ込むところあるじゃん? 色々と」


 アレンが話題を切り替えようとするも、エリスは逃がしてくれなかった。


「まさか、今も二人と一緒に寝てるんじゃないでしょうね?」


 気まずくなり、神楽は思わず目をらす。


「にゃはは! ご主人と一緒だと、ぐっすり寝れるにゃ♪」

「琥珀ちゃんと同じでありんす!」


 まったくわるびれもしない琥珀と稲姫の主張にエリスは口の端をヒクつかせる。


「そ、そう……今までも寝てたのね?」

「アレン、お前……なんてうらやましいんだ」


 アレンは、エリスからは怒気どきを、カールからは嫉妬しっとを向けられる。


「で、でも。“えにし”を結ぶとそういうことすることもある……らしいぞ?」

辞世じせいの句はそれでいいのかしら?」


 ダメだ、言い訳が通じない!


「なら、エリスも一緒に寝るでありんすよ!」


 稲姫の無邪気むじゃきな提案に、今度はエリスがたじろぐ。


「ふ、普通は“結婚”してもいないのに、そんなことしないのよ!」


 顔を真っ赤にしてエリスがそう主張した。



「結婚って、パートナーみたいなものにゃ?」

「なら、わっちらは問題ないでありんすね♪」



――「ね~っ!♪」っと笑顔で言い合う琥珀と稲姫を、エリスは苦々にがにがしげににらむのだった。


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