【第一部】第十九章 <創造―岩人形―>
「俺も魔法を鍛えたいんだが……」
そう言うのはカールだ。どうやら、アレンとエリスの魔法が大幅に強化されたことに、置いてきぼりにされるかもしれないと焦りを感じているようだ。
ただ、どうやって教えたらいいものか。アレンのは、稲姫の<魔素操作>を一族の権能である<神託法>で使った、一種のチートのようなものだし。エリスのは――
「大事なのは、
エリスが、これこそがコツであるというように、人差し指を立てながらカールに伝える。
確かにエリスの場合は、アレンの部屋に女の子がいるということに対し怒りの感情が爆発し、能力の限界突破に繋がったようだが――
「それはエリスだけじゃ――」
エリスに
「先生、お願いします!」
教官――じゃなくて、稲姫にお願いする。稲姫は「キュイ」と返事をすると、他の生徒や教官から離れた場所にまで俺達を連れて行った。
◆
「こんなところで何をするんだ?」
辺りを見回しながらカールが聞いてくる。土の地面しか見当たらない。稲姫はその言葉を待ってましたとばかりに、魔素を地面に流し込んでいった。
すると、地面からゴーレムのようなものがせり上がってきた。これはつまり――
「ここでゴーレムを造る練習をするってことか?」
アレンが聞くと、稲姫は「キュイ♪」と返事をする。どうやら正解だったようだ。
「ミハエルが使ってた<
エリスの言う通り、これは土属性の中級魔法だ。初級から習得していってる俺達にはまだ早いかもしれない。――いや、そうか!
「確かに中級魔法だが、今稲姫がやったように、まず地面に魔素を込めて造形するのが第一段階。そして、その岩人形を意のままに操るのが第二段階で、二工程に分かれてる。そのうちの造形工程を、<魔素操作>のできる俺や稲姫がフォローすれば、あるいは――」
カールが指を鳴らす。
「負担を減らせれば、今の俺でもやれるかもってことだな!」
俺と稲姫がうなずいた。
「さっそくやってみていいか? 悪いけど、頼むわ」
手を合わせてお願いされた。別に全然構わないのに。
◆
話し合っていた通り、俺と稲姫が魔素を操作し、カール周辺の地面に魔素を込めていく。土属性の魔素が凝縮し、地面が黄土色に発光する。
「おお、すげぇ!」
そう言いつつカールは、デバイスに登録されている中級魔法、<創造―岩人形―>の呪文を詠唱する。
地面からゴーレムがせり上がり、カールの意のままに造形される。ミハエルは騎士風に造形し、剣と盾を持たせていたが、カールのは、武骨な、がっちりとしたオーソドックスな岩人形だった。武器や盾も持っていない。
呪文の詠唱を終えると、術者であるカールと岩人形のリンクが確立されたのか、岩人形がカールの意のままに動く。
「ははっ! おもしれぇ!」
カールも大喜びだ。岩人形にダンスを踊らせたりしている。
「まだ時間があるな。少し難易度を上げるぞ」
そう言って、稲姫にも話し、次は地面に込める魔素の量を少し減らしてみた。
そしてカールがまた岩人形を造形し操る。ふんだんに魔素を込めていた一体目よりはちょっと辛そうに見える。その後も徐々に難易度を上げながら同じ特訓を続けたところ――
「ぷはぁっ! はぁっ……はぁっ……」
カールの息が荒いが、アレン達が魔素を込めなくても、なんとか一体なら岩人形を造形し操れるようになった。最初に比べれば、だいぶ小さいが。
「なんとか人型程度の大きさなら、カールだけで創造できるようになったな」
「だいぶ連発で発動してたし、精神の消耗もしてるし仕方ないわよ」
エリスの言う通りだな。連続発動の魔素制御で精神をだいぶ消耗してただろう。万全な状態でやれば、もっと大きな岩人形を造ったり、複数体造れるかも。
それに、使い込むうちに精神も鍛えられるから、頑張ればより強力にしていけるだろう。
「今後のお楽しみだな」
――カールが明るくそう言うのと、訓練終了のチャイムが鳴るのは同時だった。
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