【第一部】第十一章 稲姫の力
――アレンの部屋――
泣きやんだ稲姫から話を聞く。
稲姫は妖狐という、狐の妖獣だった。その中でもかなり偉いらしく、ちょっと得意気だ。
ミハエル戦でのゴーレムや<ロックブラスト>、エリス戦(?)での<ファイアボール>を無効化したのは魔法ではなく、種族特性に近い能力らしい。
妖狐は魔素の操作が得意であり、魔法から魔素を吸い取ることもできるとのこと。その対象は魔法に限らず、魔素の影響下にあるものに有効と、かなり汎用性の高そうな能力だった。
「吸い取った魔素はどうしてるの?」
エリスも興味津々だ。
「ごはんにしてるでありんす」
人間と違い、妖獣は魔素を使って肉体を構成している。こんな言い方をしたら稲姫がすねちゃいそうだが、人よりはモンスターに近い在り方だな。
モンスターとの違いは諸説あるが、俺は、人との関わり方にあると思う。敵対的か、それだけでない何かがあるか。そもそも、これらの呼び分けは人が勝手にしているだけだからな。
「凄いな。食べ物が無くても魔素さえあれば生きていられそうだ」
これはカールだ。
稲姫は首を横に振る。魔素を使ってはいるが、肉体を構成する物質を取り込むには、やはり食事は大事とのこと。人間と同じだな。より効率的に成長できるって感じかな?
「他には何ができるの?」
エリスもすっかり稲姫と打ち解けたな。さっきまでの殺気が嘘みたい……おっと、こっちを見た。なんて勘の鋭さだ。
他には治癒魔法が使えるらしい。人間のように体系化したものじゃなく、魔素操作で直接対象の肉体を再生できるとのこと。
症状に合わせた適切な処置ができる様で、人間のものより優れていそう。――あの時、麻痺毒も瞬時に解除してくれたし感謝しかない。
「前はもっと力があったでありんす……」
稲姫は無念そうに言う。
「何があったんだ?」
稲姫は俺の顔を悲しげに見つめ、
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