【第一部】幕間【二】そして彼女は今
そこは薄暗い室内だった。いくつもあるモニターからの発光に目を細める。
ここに来たのはとある報告の
「博士。以前脱走したS―03の所在がわかりました」
「ん~?」
あまり興味も無さそうに博士が先を
「“エルガルド大陸”の“小国リムン”にある“エクスプローラー養成学校”に在籍しています」
「で、そんなどうでもいいことを伝えるためにわざわざここに来たのですか?」
博士の声に若干の
今まで博士の
「い、いえ。S―03の
「妖狐っ!!」
突然博士が大声を上げる。どうやら正解を引き当てたようだ。密偵は
◆
「<魔素ドレイン>の使用も確認しましたので、まず間違いないかと」
「あれは凄い力ですね~♪
博士は残念そうだ。そして、ふと――
「“
「は?」
何を聞かれているか理解できずに密偵は戸惑う。
「“しっぽ”は何本だったかと聞いているのですよ」
「し、失礼しました! 一本です! 間違いありません!」
「ということは、力は……なぜ無事だったかですねぇ……」
密偵を放置して博士は一人、ぶつぶつと
「気が変わりました。運用試験も兼ねて、“Dナンバーズ”にS―03から妖狐を奪って来させなさい」
「お言葉ですが、この施設にある設備でないと、S―03からの引き剥がしはできないかと」
――そう。単純な力のみでは不可能なのだ。
『ふっふっふっ……よくぞ聞いてくれました!』とばかりに博士は笑う。
「ついに完成したこの“
自慢げに頭上に掲げた。……使い方やら自慢点を早口でしゃべっている。密偵は
「任務、果たして参ります」
音も無く室内から退室した。
◆
密偵が去り、急に静かになった室内。博士は機嫌よさげに室内を歩き出す。
「妖狐ですかぁ……楽しみですねぇ……」
ふと、とある培養槽の前で立ち止まった。
「お前の大事な
反応を期待せず博士は問い掛ける。
すぐさま、また違うものに興味が移ったのか、室内から鼻歌混じりに出ていく。
取り残された薄暗い室内、とある培養槽の中で、
――その培養槽には、“
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