【第一部】第八章 決闘の後に
――闘技場――
よっしゃあ! 勝ったぞぉ!
キュイ~!♪
めでたし、めでたし♪ で終わる程、世の中甘くはなかった。
ミハエルとの決闘で
どこから出したの?
召喚魔法? そんなの聞いたこともないよ?
この子の使った魔法も見たことないよ?
新種の魔法なんじゃないの?
デバイスに登録されてないよね? 大発見だよね!?
私も欲しいんだけど、もう一体出せない?
大体がこんな感じだ。まぁ、気持ちはわかる。俺が逆の立場でも同じ問い掛けをするだろう。
中には勝負の不正を意見する者もいた。ミハエルの取り巻き共だ。「ミハエルはさんざんゴーレムを造って手駒を増やしてたのに、なんでうちの子はダメなの?」と応戦するも、能力が卑怯やら何やらイチャモンをつけてきた。
意外なことに、事を収めたのは当のミハエルだった。潔く負けを認めて取り巻きを抑え込んだのだ。
戦ってみてわかったのだが、こいつは普段はチャラいし、思い込みが激しいという欠点はあるが、勝負や約束事については
でもやはりミハエルもこの子が何かは気になるようで、他の人と同じような問い掛けはしてきた。
他の人に対して同様、召喚魔法で押しきったら、それ以上は追求せずに引き上げていったが。
◆
――寮の一室――
「で、ほんとにこの子は何なの?」
エリスが狐――らしきものを指差しアレンに尋ねる。
時は移り祝勝会。アレンとエリス、カール――そして狐らしきものはちょっと奮発して店で高級食材を買い込み、寮の一室で鍋を囲んでいた。
もちろん、今回のMVPである狐様には、専用の小皿に特別いい部位を取り分けてあげる。食べやすいように小さくカットも忘れない。
決闘が終わり二人に戦勝報告をしに行った時は、それはもう大変だった。エリスは
「狐――だな」
「ふざけないで」
「ごめんなさい」
数瞬、どうしようか悩む。
「ちょっと長くなるし、面白い話じゃないぞ?」
「お願い」
カールも頷く。
お腹いっぱいになってご
そんな狐様の背を優しく手で
ルーカスというおじさんに拾われたこと
それ以前の記憶がないこと
名前もわからず、ルーカスが名付けてくれたこと
ルーカスと一緒に各地を旅したこと
大事な用事にルーカスが一人で旅立ったこと
アレンは学校に預けられたこと
ミハエルとの決闘中、ピンチになり走馬灯が見えたこと
そこには記憶にないものも多かったこと
気づいたら狐様が助けてくれていたこと
狐様の見た目も声も能力も、なぜか懐かしく思えること
狐様や走馬灯は記憶の手掛かりかもしれないこと
アレンは要点をしぼり
金髪碧眼の少女が気になることには触れずにおいた。言うか悩んだが、情報が足りなさすぎる。
でも自分にとって、とても大切な人なのはわかる。
――彼女を探したい。
(……そう言えば、なんでピンチになったんだっけ?)
「あ゛ぁっ!!」
「なによ!」
「どうした!」
「キュイィ!?」
大事なことを思い出し、
「忘れてた! ミハエルとの決闘中、毒針の攻撃を受けたんだった!」
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