【第一部】第七章 ミハエルとの決闘【三】そして勝負は
――闘技場――
急にアレンの動きが鈍くなり、ゴーレムの一撃を受けて吹き飛ばされた。それをエリスは観客席から見ていた。
「――――アレンッ!!」
アレンは身じろぎもしない。意識が無いのかもしれない! ゴーレムが止めを刺しにアレンに近づいていく。
「もうやめて! この闘いをもう止めて!!」
エリスが泣きそうになりながら大声で審判に向けて叫ぶも、審判も戸惑っているのか、ソワソワするだけだ。
事態の急変についていけていないのだろう。まだ青年で、経験が浅いのかもしれなかった。
「おい審判! 見てるんだろ! 止めろよ!! 戦闘継続できないのは明らかだろうが!!」
カールも叫ぶ。だが、審判は戸惑うだけだ。
◆
暖かい光だった。そして、ひどく懐かしい。
「キュイ」
鳴き声が聞こえた。可愛らしい声だ。もう一度鳴き声が聞こえた途端、アレンは自身の身体が再度光に包まれ、体調が急速に回復するのを感じていた。
身体を起こし周囲を確認する。
土の塊がある。他には……
“何か小さな生き物”がこちらを見上げてしっぽを振っている。
「キュイ♪」
――可愛い。
狐だろうか? 鮮やかな黄金色と純白の体毛をしている。でも、なんで狐がここに?
それに、何故
見ていると、酷く懐かしくて泣きたい気持ちになる。
「……おーいっ! 大丈夫か!? 戦闘継続できるかぁ~い!?」
焦っている青年が大声で呼び掛けてくる。
(……誰だ、あいつ?)
周囲を見渡すと、なんか観客が大勢……って――あっ!? アレンはミハエルとの決闘中だったのを思い出した。
意識が飛んでいたのかも……。当のミハエルは、驚愕からか硬直しており、反応を示さない。
「やれます! まだ全然大丈夫です!!」
「そうか! なら継続しよう! ミハエルさんもいい?」
ミハエルはかろうじて
「一応、念のために確認するけど……
顔を引きつらせながら小動物を指差し、審判が問う。ここで答えをミスると終わる。
「俺の召喚魔法です」
(たぶん……)
「そんな魔法、聞いたこともないけど……デバイスにも登録無いでしょ」
「審判さん! 今は決闘を再開すべきかと! 俺はルール違反は何一つしてません!」
アレンは、戸惑いからザワつく観客席を指差し言う。
「そ、そうだね。ともかく決闘を再開しよう!」
――そうして、決闘が仕切り直された。
◆
そこからは一方的だった。
アレンの肩に乗った小さい
ゴーレムは無駄と悟ったのか、ミハエルは<ロックブラスト>の連打に切り替える。その<ロックブラスト>もアレンへの着弾前に、ゴーレム同様、土に還る。
アレンはそれを
……少しミハエルに対し同情と罪悪感を感じなくもないが、あいつ、動けない俺に割りと本気で止めを刺しにきていたし、こちらも遠慮なしでいく!
観客席は戸惑いと歓声、そして、『可愛い!』の入り交じったカオスな状況となっていた。アレンは難なくミハエルのもとにたどり着く。
ミハエルは、もう半ばヤケクソ気味に剣を抜き取り応戦するも、三合も続かずアレンに剣を弾かれた。
首元に剣を当てられ、
「参りました……」
――アレンの勝利が決まった!!
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