第13話 うだるような熱気と眠気
大きな硝子の向こうに浮かぶ太陽を見つめながら、春子は欠伸を噛みしめる。昨夜、城を抜け出し、朝に帰宅したせいか寝不足だ。眠たくて仕方がない。猛烈な眠気に負けぬよう抗うが、アランが去って、食堂に一人残されると負けてしまいそうになる。
うつらうつらと船を漕ぐ。重心がやや前のめりになる。机に顔が近づく度に意識が覚醒し、飛び起きるがそれも一瞬のこと。直ぐにまた船を漕ぎはじめる。
(……ぽかぽかと気持ちがいい。……お昼寝には最高だわ)
鬼無よりヴィルドールのほうが気温は高いが、湿度は低いため暑くても、じっとりと肌が汗ばむことがない。絹布で作られたドレスは肌触りが良く、鬼無の伝統衣装と比べると厚みも薄いため、風通りがいい。
煉瓦造りの屋敷がひんやりと冷たいのも相まって快適すぎる。
(アラン様はまだかしら)
ふわぁ、と大きく欠伸をする。大きく口を開くなど、はしたない行為だが今ここにいるのは春子一人。咎める者はいないのだから許して欲しい、と心の中で呟いた。
(……ああ、無理だわ。もう限界)
眠気は最高潮。抗うのも無理だと悟った春子は机に伏せると瞼を閉ざした。
扉の向こうから聞こえる喧騒を子守唄に、春子はまどろみに意識を沈めた。
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