第3話 ドジっ子侍女と昔話

「失礼いたします」

「し、失礼いたします!」

「それではメリッサ様、お嬢様。私はこれで」

「ええ、ありがとう」

「あとはよろしく頼みます、ミシェル」

「はい」


 先にいた侍女が退出し、入れ替わりで入ってきたのはこれまた二人の侍女。

 ミシェルと呼ばれた女性は、毅然とした態度で優雅にお辞儀をした。ショートヘアにした沈香茶の髪と、深い織部の瞳が特徴的だ。年季の入った姿は完璧な侍女を彷彿とさせた。

 もう一人はまだ若い。十代前半くらいだろう。おでこを出しているのが可愛らしい。髪は短めに見えるが、くるくると巻いた三編みが目立つ。緊張しているのか、強張った面持ちでティートローリーを押していた。


「メリッサ様、お嬢様。お茶をお持ちしました。どうぞご休憩ください」

「ごごご休憩ください!」


 小さい侍女が、焦点の合わない瞳で懸命に繰り返した。その視線もアリスたちの少し上、どこか遠くを見ているようである。


「ほ、本日は! メリッサ様がお見えになるということで! しふぉっ……ケーキをおみょちしました!」


 噛んだ。しかも二回も。

 真っ赤になってぷるぷるしながらも、びしっとした姿を取る。後ろでミシェルが『ふぅ』と息を吐いた。

 未熟な侍女の態度に不機嫌になることもなく、アリスもメリッサも微笑んだ。


「ありがとう、コリーナ」

「ありがとうございます、コリーナさん」

「ふ、ふわああぁぁあぁ……!」


 美女二人のふわりとした微笑み。その破壊力は抜群だ。背後に色とりどりの花が咲き乱れたように見えた。心なしか、部屋の色彩も数段階引き上げられた感じがする。

 そんなものを直接向けられた若輩侍女、コリーナはあっさりと意識を手放した。


「コリーナ、準備をお願いします。 …………コリーナ?」

「ふは……はおあぁ……」

「コリーナ。コリーナ、こら、ちょっと」


 ミシェルが肩をぽんぽんと叩いた。


「はっ!?」

「大丈夫ですか、コリーナ」

「だだだだ! 大丈夫です! すみません、すみません!」


 何度も何度も『すみません』とぺこぺこしながら、ソーサーとカップをテーブルの上に置いていく。ぶるぶる震えているそれは、傍目に見ても気の毒なくらいだった。

 見かねたアリスが声をかける。


「コリーナ、どう? お仕事には慣れて?」

「はぇあ!?」


 がっちゃん。

 ぶぅん、と勢いをつけられたカップが、ソーサーとぶつかって派手な音を立てる。置いたカップを手に取ったまま、コリーナは固まってしまった。

 き、気まずい。


「ご、ごめんなさいね……そんなに驚かれるなんて思わなくて……」

「…………っ!」


 残像が見えるくらいにぶんぶんと首を横に振る。

 首の骨は大丈夫だろうか? メリッサが心配そうに見つめている。


「コリーナ……気持ちはわかりますが、それでは失格ですよ」

「ミ、ミシェル様!」

「ご自身から申し入れたのです。しっかりとやりなさい」

「は、はい! メリッサ様、お嬢様、失礼いたしました」


『いいえ』と声が被る。

 ミシェルから叱咤激励され、コリーナは気合一発、ぱしんと己の両頬を叩いた。その行い自体が失格物だが、少なくとも冷静さは取り戻せたようだ。


 今日はコリーナの初給仕だった。相手はアリスとメリッサだけだ。

 アリスもそうだが、メリッサも他者の失敗には寛容である。アリスは侯爵令嬢として身につけた雅量として、メリッサはギルドの仕事人として。それぞれが深い優渥さを身に着けていた。


 つまり体のいい練習台でもあるのだ。メリッサも事前に知っている。本来、お客様であるメリッサには大変に失礼なことなのだが、快くオーケーしてくれた。刺繍の先生でもあり、侍女訓練まで引き受けてくれるメリッサは、とても面倒見の良い女性だった。


 シフォンケーキが切り取られて各々の目の前に置かれる。ちょっと形が崩れかかっているのはご愛嬌だろう。卵とバニラの良い香りが漂ってくる。


 おいしそう、とメリッサが両手を合わせた。

 彼女はあまり甘いものを好まない。だからアリスは、甘さ控えめのこのケーキを提案した。


「メリッサ様の好みに合わせましたの」

「まぁ。アリス様、ありがとうございます」


 それぞれが向かい合って微笑み合う。

 さすがに二回目もあってか、コリーナも態度を変えなかった。ちらちらと見てはいるし、少しばかりお茶を淹れる手付きが危うかったが、給茶はわりとコリーナが得意としていたため事なきを得る。


「ど、どうぞ! お待たせしました!」

「ありがと」

「ありがとうございます」


 二人が香りを楽しみながら口にする。丁度いい温度のそれは、刺繍と諍いに疲れた口と喉を癒やしてくれた。


「ミシェルもすっかり先達ね。私の入浴の世話をしたいと、昔はごねていたのに」

「恐れ入りますがお嬢様。その仕事は、今も誰にも譲る気はございません」

「そ、そう。それはよかったわ……」


 アリスは少しばかりからかう気持ちで言ったはずだった。だがその相手がずい、と身を乗り出してきたため言い淀んでしまう。なぜだろうか、身の危険も感じた。

 その様子にメリッサが微笑む。


「ミシェルさんは、アリス様のことが本当にお好きなのですね」

「はい、お嬢様は私の全て。私はお嬢様の全てでありたいと思っています」

「なんだか言い方が気にかかるのだけれど……」

「そんなことは」

「兄さんのことも、それくらい愛してもらえると嬉しいです」


 ミシェルがぎし、と固まった。

 ぎ、ぎ、ぎ、と音が聞こえてくるくらいの動きで、メリッサを見る。


「メリッサ様」

「はい、なんでしょう」

「あ、いえ……」


 にこにことしているメリッサに、ミシェルは何も言えなくなる。

 からかう気持ちとかは微塵もないような、純粋な笑顔。ミシェルは大人しく頭を下げた。


「了解しました」

「ありがとうございます。兄さんにも伝えておきますね」

「メリッサ様!?」


 ぽやぽやしているメリッサに翻弄され続けるミシェルを、コリーナが興味深そうに見ていた。

 なかなか進まない給仕に、アリスが横から口を挟む。


「とにかく。これからもよろしくね、ミシェル」

「あ……はい、お嬢様。これからもいつでもどこでも、お嬢様のお世話をいたします」

「うん」


 どうやら話を変えることに成功したらしい。これで給仕も進む。アリスはほっと息を吐いた。

 そこで終わっときゃいいのに、ミシェルは身を乗り出して続けてしまう。


「差し当たって、まずは歯磨のお手伝いもさせていただきたく」

「それは自分でやるからいいわ」

「そんな」


 即時で出された却下に目を見開いて固まった。

 何をそこまで、とアリスが思う。入浴や着替えの世話はしてもらっているが、さすがに口の中までお世話になる気はない。

 だというのに、ミシェルはメリッサに泣きつくような真似をした。


「あんなに無垢で可愛らしかったお嬢様が、すっかり大人になってしまいました、メリッサ様」

「あらあら」

「なによ、いいことじゃないの」


 成長しているのだから、悪いことじゃないだろう。

 アリスはそう思うが、なおもミシェルは泣き真似を続ける。


「昔は『ミシェウ、ミシェウ』と、ことあるごとに呼んでくれたのです」

「まぁ! それはひょっとしてアリス様の?」


 メリッサが口元に手を当て、驚きに声を上げた。


「はい、お嬢様はら行言葉がお上手ではございませんでした」

「それ、もっと聞きたいです!」

「こ、コリーナも!」


 ポットを手に持ったまま、コリーナまでもが話に加わってきた。


「ちょっと待って」


 なんですか。なんでしょうか。な、なんでしょう!

 なぜ自分の過去を暴露されないといけないのか。しかも記憶に薄いことを。

 そう思ったアリスが止めようとしたが、三人からそんな目で見られて言葉に窮してしまう。


「……そんな昔のことなんて覚えていないわ」

「私はハッキリと覚えています。あれはそう、私が就任して半年の頃でした」


 ミシェルが愛おしい過去を思い出すかのようにうっとりした。メリッサもコリーナもわくわくした様子だ。アリスはなんだか嫌な予感しかしなかった。


「当時、私はまだ新任の侍女見習いでした」

「ええ! ミシェル様もそのような頃があったんです!?」


 すでにポットを置いてしまったコリーナが目をむいた。給仕は完全に忘れているようだ。


「当然ですよコリーナ。私をなんだと思っているんですか」

「え、そ、それは……お、鬼の──あいたっ!?」


 コリーナの教育係をしていたミシェルのチョップが、彼女の脳天に直撃した。


「それで、旦那様と奥様、そしてお嬢様はその日、領地にある小さな水辺にピクニックにお出ででした。私はその付添でしたね」


 何事もなかったかのようにミシェルが続きを話し始める。

『それで?』とメリッサが続きを促した。涙目のコリーナも頭を押さえて黙って聞く。

 それを横目で見ながら、アリスはがぶがぶとお茶を飲み干していった。彼女が『お茶がない』と言っても見向きもしない。ミシェル劇場に誰もが興味津々だ。

 おかしいでしょこれ、私は侯爵家娘なのよ、さっきまでコリーナを点付けしていたくせに、などと思う。


 ぷんぷんしてシフォンケーキをつまむ。『あら』と美味しさに口を押さえた。伝えた通りに優しい甘さでしっとりしているそれは、心と腹を満たしてくる。

 だがしっとりしつつも、やはり口の中の水分は奪われていった。空っぽのカップを逆さにする。


「お嬢様は、それはもう元気いっぱいにはしゃいでおられて……はしゃぎ天使でした」

『はしゃぎ天使』


『見たかった……』と、メリッサもコリーナもぼぉっと空を仰いだ。


 のけものにされたアリスが、とうとうお茶を自分で淹れ始めた。

 はしゃぎ天使ってなによなによと憤慨しながら注いだそれは、慣れないこともあってカップに並々と入っている。別にいい、喉が乾いているんだからと無理やり納得して口に運ぶ。

 自分で淹れて自分で飲む。侯爵令嬢が、しかも客も侍女もいる前では、ありえない姿だった。


「お嬢様は湖が陽の光を反射する様子を、『きあきあしてるわ! きっと女神様が唄っていうのよ!』と、まるで女神がそこに降りられているかのように、手を合わせて拝んでおられました」

「それ、アリス様が女神様ですよね」

「はい、眩しくて直視できませんでした」

「そんなのコリーナもとても見れそうにないです!」


 アリスがふと思い出すように考え込む。

 はっきりとは覚えていない。鮮明に思い出せるのは、洗礼を受ける少し前から。

 ピクニックに行ったことは、覚えている。だが、どう頭を捻り倒しても普通に楽しんで普通に帰ってきた思い出しかない。どうやら恥ずかしい記憶は奥底に引っ込んでしまっているらしい。


「それから」

『それから!?』


 なおもお囃子は続く。

 まだあるのか。たかだか一回のピクニックに引き出しどんだけよ。作り話じゃないのそれ。

 アリスは展開されていく話の信憑性を疑うが、話し手の口はあまりにもスムーズである。どうやら事実と認めるしかなかった。


「森の中を探検したい、とお嬢様がおっしゃいました。旦那様と奥様に許可を得て、ほんの少しだけ、森の奥に入ったのです」

「ふふ、探検って可愛いですね」


 木の枝をぶんぶんと振り回す幼きアリスが、一人を除いて皆の脳内にイメージされた。


「しばらくすると、風でも吹いたのでしょう。ざわざわと木々が揺らいだのです。けっこう大きな音でしたね」

「それは……幼いアリス様は怖い思いをされたでしょう?」

「ええ、一目散に私に抱きつきに来られて、『ミシェウ、もいの神様が怒っていうわ……もどいましょう? もどいましょう?』と、大きな瞳に涙を浮かべられ、上目遣いで……」


 そこでメリッサが急に真顔になった。


「そんなの爆発してしまいます」

「コリーナも爆発します!」

「ええ、私は爆発しそうになりました」

(爆発? 爆発ってなに?)

「なんとかこらえて、『大丈夫ですよ、ただの風です』と言っても、『やだ、やだぁ……もどう、もどうぅ!』と、更に強く抱きしめられまして」

「そんなの達していまいます」

「コリーナも達します!」

「ええ、私も達しました」

(達するって、なにによ)


 心の中でいちいち突っ込みを入れながら、お茶とケーキを摘んでいく。

 話はさらに続けられた。


「そのあと抱きかかえたまま森を出まして。これまた奥様に抱き抱えられたまま屋敷に戻りました。そしてそれはその夜起こったのです」

「ま、まだこれ以上があるんですか!?」

「コリーナはもうダメです……」

「侍女の就寝時間に、私の部屋にお嬢様が来られまして。『ミシェウ……一緒に寝て……一緒がいいの……一緒に寝たいの。ダメ?』と。私の精神は限界を迎えました」

「な、なんか……それだけ聞くと、もの凄く顔が熱くなってきますね……!」

「あふぅ……」

「それは嘘よ!」


 ここまで黙って聞いていたアリスだったが、さすがにないだろそれは、とようやく反論する。


「ミシェルの部屋は離れじゃないの! 子供が夜に向かうなんて許されることじゃないわ!」

「ええ。ですからその時も、母君様に抱きかかえられてこられましたよ」

「そうなの!?」

「はい」


 反論はあっさりと翻され、さらにその内容に彼女は驚愕した。

 夜遅く、使用人が住む離れを訪れる、しかも母親に抱きかかえられて。

 率直に言って、とんでもない迷惑な話だ。幼いのだから仕方ないかも知れないが、あまりにお転婆な姿だった。


「このように、お嬢様と過ごす毎日はそれはもう幸せいっぱいでした。そのあと少ししてから急に大人ぶり始めたのも、もの凄く可愛らしく……」

「そ、その話も聞きたいですが……でも、それはそうでしょうね、誰だって幸福になってしまいますよ、それは。なんだか私も子供が欲しくなっちゃいました……」

「なので、今からでも遅くはありません。あの頃の口調に戻してみませんか?」


 わりと真面目に真剣な顔で、ミシェルが提案した。


「戻るわけないでしょう!」


 しばしの沈黙。


「そんな」

「だからなんで『うそ』みたいな顔をするのよ!」


 アリスほどの歳が言う。『ミシェウ、ミシェウ』と。おバカな子以外の何者でもなかった。


「もう子供の頃のことよ」


 会話を強引に終わらせ、お茶アピールをする。シフォンケーキも食べ尽くしてしまった。


「失礼いたしました。つい話に夢中になってしまいました」

「ふふ。私は楽しいお話が聞けました。それにアリス様、顔が赤いですよ」

「ふん!」


 つんとして顔をカップで隠す。

 大人げない気もするが、仕方ない。誰だって幼い頃の話をされたらこうなる。


「コリーナ、給仕を……コリーナ?」


 そういえば先ほどからコリーナの声がない。

 見ると、ふらりふらりと揺れてしまっている。声をかけられても反応が薄い。

 敬愛するお嬢様の可愛らしい姿を思い浮かべてしまったコリーナは、ニ度、意識を手放していた。


「大丈夫かし──あらら?」


 ぽふふん。

 そんな音が聞こえた気がした。

 ゆらり、とついに倒れてしまったコリーナの先にいたのは、椅子に座るアリスだった。


「ふぅ。私がいてよかったわね」


 無防備で床に倒れていたら、下手すると命に関わる怪我をする。その場合、自分やミシェルが癒すのだろうが、何もわざわざ痛い思いをしてほしくはない。


「ふぁぁ……」

「ほら、しゃんとしなさいコリーナ」

「ん……あれ、アリスお嬢様……?」

「ええ、アリスお嬢様よ」

「えへ、柔らかくて……いい匂い……」


 ぽわんとしたコリーナが、目の前にあるその大きくて柔らかそうな胸に、ぐりぐりと顔を押し付けた。

 実際柔らかいそれは、動きに合わせて柔軟に形を変える。


「ちょっと、こーら」

「えへぇ……」

「もう、仕方ない子ね」


 アリスから見ると、コリーナはどこか妹のような存在でもあったため、ついつい甘やかしてしまうことが多い。


(昔の自分もこんな感じだったのかしら?)


 小さな頭を撫でながら、さっきの話を思い出す。


「…………」

「ミシェル? どうしたの?」

「…………いえ。コリーナ、不敬ですよ。離れなさい」


 それを黙って見ていたミシェルが、小さく頭を振って気を取り直したかのように、今も抱きついているコリーナを叱りつけた。

 ピンと来たアリスが、相変わらずふわふわしているコリーナをそっと横に置く。そうして次は両腕を伸ばした。

 まるで『おいで』と言っているように。


「お、お嬢様」


 ミシェルが目に見えて狼狽える。


「ほら、ミシェルも」

「……いけません。今は仕事、給仕中です。それに侍女が主に抱きつくなど──」


 二人だけの時は別だが、今はメリッサもコリーナもいる。侍女として先達として、思うところがあるのだろう。ミシェルはおろおろしながらも断った。

 しかしアリスはお構いなしに、


「さっきまで昔話で放置していたくせに、今さらなに言っているの」


 ほら、と腕を伸ばして再度促す。

 ミシェルは迷った様子を見せたが、最後は静かに寄り、その体にぎゅっと抱きついた。

 二人は身長差があまりない。椅子に座るアリスに抱きつくために、ミシェルは中腰になっている。


「いつもありがとう、ミシェル」

「…………ん」

「ふふ、さっきの話と立場が逆ね」


 ミシェルの猫と思えるような手触りの髪を、優しく撫でていく。


「……お嬢様は、今も昔も変わりありませんよ」

「そう?」

「そうです。こうやって、いつもいつも、私の心を乱して」

「ミシェル?」

「…………」

「ずっと一緒にいてね」

「……っ! は 、はい……はい、お嬢様……!」


 抱きついてくる力が強くなる。どうやら今度は真似ではなく、本当に泣いてしまったようだ。

 このままではドレスが濡れてしまうが、アリスは特に気にもせず、なで上げる力をほんの少し強くした。


「あ、あの……私もいいですか?」

「コリーナもぉ……」


 そんな二人に感化されてしまったのか、おずおずもじもじとメリッサが言った。

 息を吹き返したコリーナも、もう一回、とねだるように身を寄せる。

 ミシェルはポジションを奪われたくないからか、なかなか離れようとしない。


「ええ、どんと来いよ」


 こうなったらもう誰でも来なさい、と言わんばかりに許可を出す。

 そうしてアリスは、代わり番こに抱きしめては撫でる羽目になった。


 その後、けっきょく使い物にならなくなったコリーナをミシェルが連れていき、『そろそろお暇です』と言ったメリッサを見送ったあと、部屋に戻ったアリスはまったく進んでいない刺繍のそれを見て愕然とした。

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