第21話 一難去ってまた一難
ひなが家族になって五ヶ月が過ぎた頃から、噛んでいるおもちゃに血が付いていた事があった。
美佐は事前に明から乳歯から永久歯の生え変わる時期に入っていると聞いていたので、とうとう来た! ひなも大人になるんだと喜んでいたが、現実はそう甘いものではないと言うより、超厳しいものであった。
早々に歯磨き問題勃発! 歯ブラシ、歯磨き粉、ガム、例によって美佐は本と首ぴっきで、絵にかいたような歯磨きをやろうとしたいた。
当然、ひなは口を開けるわけない。口を開かせるのは難しくはないが、ひなも全力で阻止するわけだから、美佐の指がタイミングによってひなの口に入るとガブッとやられる。痛くないわけがない。喧嘩勃発。ひなVS美佐。大概はひな勝利で集結してしまう。
そのうち、美佐が歯ブラシを持ち出すと、キャリーバッグに入り込み唸りだす始末。うっかり手をいれようものならガブリとくる。
こうなると、美佐は意地でも引かなくなる。一日中セットを持ち歩く。何をって? 決まっているではないか! 歯磨きセットに!
ある秋の夕暮れ。散歩に出た二人と一匹は、シェパードを二頭を従えた若い女性と遭遇した。特に一頭はかなりの体格をしていた。
ノーリードで歩いていた彼女が、少し小さいシェパード方の訓練を始めた。
その内容は、マテの姿勢を保ち微動だにしない。どんな誘惑があろうともだ。
もう一頭をボールで遊ばせる。そりゃ気も散れば、動きたくもなる。それを彼女は許さない。動いた瞬間蹴りを入れる。付けの練習も視線を一瞬でも外せば蹴る。下手をすれば虐待で通報されるレベルだが、ボールで遊んでいるシェパードは全てを完璧にこなしてみせた。
明は嫌がる美佐と吠えるひなを連れて彼女に近づき、休憩タイムを見計らい声をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます