第20話 克服!

 毎日毎日、雨の日も雪の日も散歩は続くのである。

 トイレは九割がた家で出来るようになってきた。だからお天気が悪ければ散歩に行かなくても良いわけだが、それは人間の事情であってひなには関係のない事。

明はと美佐は合羽を買い、長靴を買い、ひなにもレインコートを買い、防水スプレーを買い、兎に角公園に出かけていった。特に雨の日は人も犬も少ない。

そうなのだ。遊び放題なのだ。

明お手製の長ーいリードは、水を含まない。軽い。危なくない。竿下まつこで乾く。の三拍子揃った優れ物である。

それまで、煮詰まり気味だった美佐の呼び戻し、待て訓練も、ボール遊びで上手く出来るようになった。

その一方、ひなの大型犬に対しての反応は、良くなるどころか悪化の一途を辿っていた。

 

 九月に入っても残暑は続くある朝、少し遅めの散歩に出た三人は、

ゴールデンレトリーバーの男の子とアメリカンコッカースパニエルの男の子を連れたママさんと遭遇。当然ひなは唸る、吠えるの大騒ぎ。連れているワンちゃんたちといえば、しっかりお座りをしている。2頭は流石に拙いと思ったのか、明はひなをその場から離す。と、その方が、

「ご主人! 駄目駄目! もっとそばに来て。挨拶させてあげなきゃ可哀想よ」

と声をかけてきた。明は一瞬戸惑ったが、これも勉強だと思い、尻込みするひなを引きずり近寄ってきた。

「ママさんは、この子達を撫で回して。これをしばらく続ければ、必ず大型犬も大丈夫になるから。飼い主さんは辛いだろうけど、この子は犬社会のルールが判ってないだけなんだから。頑張って!」

それから、ほぼ毎日その時間に公園ヘ向かった。

吠える。唸るひな。撫で回す美佐。

一週間を過ぎた頃から、ひなは唸るのをやめた。吠えながらも自分から近づいて、2頭のお尻の匂いを嗅ぎ始めたのだ。あちらの飼い主さんも、ひなちゃん、ひなちゃんと、可愛がってくれる。そのお陰でひなは、大型犬の恐怖を克服させて貰い、それ以後一切大型犬に吠えなくなった。


兎に角飼い主の様子を良く見ているひな。美佐は初めてのワンちゃんに対して、誰よりも先に近づき触れる。をやり通した。怖いけど!ひなの事だけを考えていた。


それから美佐は、いつしか犬大、大、大好きおばさんと呼ばれるようになるのであった。


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