第14話 エキセントリックひな
そろそろひなが来て三カ月。
三種混合を打てば、いよいよ公園デビューだ。美佐は辛うじて待てできるようになったが、呼び戻しが上手くない。
いや……目下の美佐の悩みは、ひなの夕方から始まる、テーブル周り猛烈ダッシュ・デモンストレーションだ。
それは突然始まりもう一週間続いている。
夕方五時頃になると、ひなが狂ったように、ダイニングテーブルの周りを猛烈ダッシュで走り出すのだ。
最初はなにが起きたのか判らず固まる美佐。あまりのスピードと鳴き声に、途轍もない恐怖が襲ってくる。それでも頑張って見て見ぬふりを為ていると、ひなは美佐の足に飛びついて、履いていた白いソックスを思いっきり引っ張り始めた。
やっとのことで片方のソックスを脱ぎ捨て、美佐は椅子に飛び乗る。が、ひなはゲージを飛び越えんばかりのジャンプ力を持っている。椅子なんて今にもよじ登りそうな勢い。キヤンキャンキャンキャンと吠えまくる。
我慢の限界はとっくに過ぎている美佐は、もはやなり振り構ってはいられない。テーブルに上がると号泣。ひなはずっと吠えている。傍から見ればなんと滑稽だろうか。いい年の大人が片方裸足で、まだ赤ちゃんのひなに脅かされている。そしてひとり号泣の図。
そこへ健が帰宅した。
「如何したの? なにやってるのよ~だいたい何処に乗ってるの?」
事の顛末記を話すと、健はひなを抱っこし、
「早くおりなさい~ったくもう……泣き止みなさいよ~」
美佐は降りなかったと言うより恐怖で動けないのだ。
明が程なく帰宅し健からその話しを聞きくと、
「美佐はまたキャァキャァ言ったんでしょう? それは遊んでくれてると思うんだよ」
いや! あれは何の前触れもなく始まるんだから! と必死に説明為ている美佐を笑いながら宥める夫と息子。
それからひなのルーティン。
夕方五時近くなるとテーブルの周りを猛烈ダッシュ! 美佐は何気ない素振りを見せながら、目を合わさないように、そっとテーブルの上で静かに座っている毎日が始まった。
後から本を読めばストレス解消だと書いてあった。確かに彼等は走るのが仕事な訳で。それをこの狭いうちに閉じ込めているんだから……ストレスが溜まるのは仕方ない。けど、やっぱり怖くて仕方ない美佐なのだった。
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