第12話 わたしには無理……
美佐は一日中ひなと過ごしている訳で。だから明も健も見たことないひなの姿を知っているのだ。
例えば、ゲージに入れておくと、ジャンプ力が凄くて、上半身が柵を越えて飛び出してしまい、肝を冷やすとか、出すまで吠えてるとか。それだけ? と言われればそれまでたが、足を痛めるかも、声が枯れるかもとか考え出したら買い物にもおちおち行けないのだ。
ひなのゲージの中には、トイレトレーと寝る場所があるが、どうやらひなはそれが気に入らない らしい。美佐もあんな狭いところにひなを入れとくのは忍びないと思っている。もっとひなの好きなようにさせてあげたい。それには躾けが……その躾けだが、明はの方針でひなに覚えて貰うのは、お座り、待て、伏せ よしの四つだけになった。ひなが人と暮らして行くのに、これさえ出来れば問題ないと言う事らしい。
美佐は明のお手本通りにボーロを手に持ち、お座りからやってみる。明は上手い。飛び跳ねているひなの目の前にボーロを見せながら上を向かせると、自然にお座りする。美佐の番だが、幾ら見せても飛び跳ねていてやらない。
「お座り! お座り! ひなちゃん!」
何度やっても上手く行かない。美佐はへとへ。明に宿題を出されて、日中は声を枯らすほどやったが駄目だった。お座りが出来なければ、待てもなにもあったもんではない。
帰宅した健がやってみると、なんと一度てクリアした。もう! なんなの? 美佐はがっくりと肩を落とす。最早やる気はとうに失せている。
明と健はお座りからの伏せも、クリアした。伏せは目の前からボーロを下に降ろしていくと自然伏せになる。
最近美佐は良く泣いている。
何一つ進まない自分には、もう無理……本当無理……そう思えてならないのだった。
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