第11話 まだまだ辛い時期は……

 明はほとほと困っていた。

トイレトレーニングができてないせいで、ひなはあちこちでするようになっている。

このトレーニングをしっかりやれなければ、ゲージから出して飼うなどできはしない。

うち全体が自分の縄張りになってからでは遅い! 手は尽くしているのだか。

例えば、トイレトレーを増やして

ひなが為ている所に置く。

然しそれを避けてするから敵もさるものだ。

それ以外にもトイレシートをリビングじゅうに敷き詰め、して欲しくない所には苦手な柑橘系の匂いを付けて置く。

そうやって頻繁に為ている場所を

特定し狭めていく作戦。

言うのは簡単だか、しそうになるのを見てソワソワ始めたら、誘導為たり、もっと言うなら抱えてトイレトレーに乗せるなんてこともしなくてはならない。

それをやるのは、ほぼ美佐なのだが……なんせ馬鹿にされているので逃げ回ったり、甘噛みされたり

不意打ちを喰らったりしている。   


 飼ってからひと月を過ぎる頃から美佐は心身共に疲れ果てて、可哀想に自律神経がやられている。帰ると泣いていたり、放心状態でひなを見ていることも屢々。

「美佐、今日は如何だった?

少しはリズムとか判ってきた?」

半泣きの美佐はただ首を横に振るだけ。

「私には無理……今は後悔……」

明は美佐を抱き寄せると

「こら~それは言わない約束だ。

最初から上手くは出来ないんだよ。ほらこれ見て」

明は携帯のあの画像を見せた

夜中にひなに寄り添っている美佐の画像だ。

「こんなの撮ってたの?」

「うん、美佐は毎日起きてこうやってあげてたんだ。ひなだって判ってるよ。だからみんなで頑張ろうな」

「可愛いね~本当可愛い!家のひなは」

少しだけ気持ちが盛り上がって来たようだ。

「明日は仕事休みだから。色々試してみよう。それからこれ」

明は何冊かのウエスティの本を渡した。

「有り難う! こんなに買ってきてくれて」

「おーい飯出来たよー」

健が夕飯を作ってくれていた。

「悪いね。助かるよ」

「茫然自失のおかん見たら仕方ないよね。今夜は炒飯と冷凍餃子です!」

なんと良くできた息子ではないか。

美佐のお陰だよ! だから自信持ってひなにも関わろう。なっ!


  




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