第2話 うちの子になります!

 前の晩、ひとり息子の健と話したことを思い出していた美佐。

「犬を飼おうと思うんだよ。おばあちゃんも散歩させたいし。どうかな?」

「どの犬?」

息子は子犬の写真を十枚くらプリントしたのを見ながら、

「良く判んないなぁ……でも……俺はこの子なら来ても良いよ。て言うか、母さん動物駄目でしょ。俺も苦手だしなぁ」

そう言いながらヒラヒラさせていたのが写真があの子だった。

「お父さん……健はあの子が来ると思ってるよ……」

ミニチュアピンシャーを見ていた明は少し考え込んでいたが、

「確かになあ……違う子がいたら、ハッ?とか言って面倒見ないとか言いそうだしな。あの子にするか」

「じゃぁ、あの子で決まりだね」

美佐は急いで1階に降りていくとあの子と目が合った。


確実に目が合った。


「もう~何処にいた? 私はここ!」とハッキリ言われた。

美佐はスタッフに、

「この子、この子連れて帰ります」

そう言ったままケースから離れない。離れられなかったのだ。


見つめあう……まさに見つめあっていた。

全て明が済ませて、美佐に声をかけた

「終わったよ……後は細かいもの選ぶから」

美佐と明はリードやハーネスを選んでいる。

あの子は爪や耳を綺麗にして貰っていた。

時折目が合う。笑っている!

「お父さん! 笑っている!」

明は黙って頷くだけだ。


あの子を段ボールに入れて帰ってきた。

 車中大人しかった。

ワンとも鳴かない。

物凄く良い子だと美佐が感心していると明は、

「さあね如何だろ~兎に角頑張ろうな」

美佐は、段ボールを覗いて

「何を頑張るのよね~大丈夫だよね」

などと超能天気な事を言っていた美佐とそのこ子犬が、この後数カ月間死闘を繰り広げると誰が予測出来ただろか……

それが居たのだ……たったひとり そう……あの男だ。

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