第34話 アリア

「アリアって言ったか、セイラを運ぶけど、ちょっと服着てくるからマリアを頼む」


「はーい」


俺は着替えてセイラをお姫様抱っこでセイラの部屋まで運んでベッドに寝かせる。

アリアも付いてきていた。


「姉様はウブなのかカマトトぶってるのかほんとわけわかんない」


「お前とセイラは姉妹なのか」


「そうだよ」


「その割に性格が違いすぎるような気もするが。それに男の裸にもなれているような気がするし。」


「慣れている訳ないわよ、もうドキドキでこっちが気絶しそうだったんだから。それに姉妹ってそんなものじゃないの?なんでもはいはい言って大人の言うこと聞いてきた姉様を見て、私はもっと自由に生きたいって思って大きくなったから」


なんか、マリアとセラを見ているようだな、王女として厳格な教育を受けて育ったマリアと公爵令嬢ながら自由を望んだセラ。


「じゃあ、アリアは成人したらどうするんだ?」


「どうするって、他国との関係を強固にする為にその国の王族に嫁ぐか、教会の枢機卿あたりに嫁ぐ事になるに決まってるでしょ」


「自由になりたいんじゃなかったのか」


「だってしかたないじゃない、それが王族としての努めなんだから」


「つまらん人生なんだな」


「私だって本当は好きな人を作って結婚して子供をたくさん産んで、いつも家族が一緒に居て笑い合えるような人生を送れたらいいなって思ってるわよ、でも王家に生まれた以上夢物語だってわかってるから」


「それはお前次第じゃないのか。

俺の知っているある国の王女は、王位継承権1位の次期女王だけど、結婚できなくてもいいからと言って、好きな男に抱いてと頼んで全てを捧げた奴がいるぞ」


「うそっ、ありえないわ、次期女王なのに傷物になってしまったら結婚できないじゃない」


「そいつは、好きな男の子供を孕むことを願っていたし、もし孕んでいたら結婚せずに王位を継いで女王になるって言ってたな」


「ありえない、そんな事を国王様がよくお許しになったわね」


「まあ、それは相手の男次第だろうな」


「・・・そうよね、国王様ですら認める相手、王家にその男の人の血を取り込むことが何をおいても重要なら・・・ハッ、もしかしてその男の人って・・・アサト様?」


「やっぱわかったか」


「やっぱりそうなのね、ねぇ、貴方って何者なの?姉様の報告を聞く限りだと、SSランクの冒険者で、未走破のダンジョンを数時間で完全走破して勇者様達を助けたって事だったけど。でもそれだけで他国の王女様が貴方の子を望むとは思えない」


「そこは俺の人間的な魅力だろうな」


「・・・・そうなの?」


「そう言えば、勇者にも男が2人いたじゃないか、どっちかと恋愛すれば国王も認めてくれるんじゃないか?」


「それは無理ね、一人は性格良くなさそうだし、リア様にぞっこんだし。もう一人は性格は良さそうだけど、顔が好みじゃない」


平山はリアにぞっこんなのか、でもリアは俺にぞっこんみたいだしな、かわいそうに。


「そうか、世の中うまく行かないな」


「・・・ねえ、アサトさんが私と姉様を娶ってくれないかな」


「それは無理だな」


「だよねえ・・・じゃあ、抱いてって言ったら?」


「さっき、お前が言ってただろ、傷物になったら結婚できないって。それだけの覚悟があるのか?マリアやセラの覚悟は相当なもんだったぞ」


「えっ、マリアってオルグ王国のマリア王女?それにセラってオルグ公爵家のセラ様?」


しまったな、つい口走ってしまった。


「他言無用だぞ、まあ、あいつらが孕んでしまってたら正式に発表されるだろうが」


「そうなんだ、あんな大国の王女様が結婚しないでアサト様の子を産むことを選んだのね、と言う事はアサト様ってそれだけの価値のある人なんだ」


「おい、なんだ、その獲物を狙う獣のような目は」


「気のせいだよ・・・色々話がしたいから今夜部屋に行ってもいい?」


「いや、今夜はリアが来ると思うからダメだな」


「えっ、リア様も抱いちゃうの?」


「違うぞ、何言ってる」


「まあ、強い男に抱かれて子種を欲するのは女の性だからしかたないか、異世界の勇者様でもそこはやっぱり女なのね」


「違うって、俺はリアを抱くつもりはない」


「なんで、リア様もちっちゃくてかわいい美少女じゃない」


「それはそうなんだが、何と言えばいいのか。元の世界での俺とリアの関係性って言うか」


「元の世界って・・・もしかしてアサト様も異世界人なの?」


「そうだ」


「そうなんだ、マリア様たちも知ってるの?」


「知っている」


「だから、抱かれたのかな」


「いや、それを教えたのは抱いた後だったな、抱いた後でオルグの王たちとこの国の事を話している時にな」


「この国ってアストラ国の事?」


「そうだぞ、状況によっては俺はこの国を滅ぼすつもりだったからな」


「なんでっっ?」


「勇者を召喚して、無理矢理戦わせようとしているんだったら、勇者を保護して国を滅ぼそうと思ってたんだ、違っていたけどな」


「あっぶなっ、ちょっと対応間違っていたら今頃焼け野原だったんだね」


「まあ、な、でもセイラを見てたら、そんな酷いことする様には見えないし、リア達に聞いても、皆いい人で良くしてくれてるって言ってたし」


「で、リア様が抱いてって迫ってきたらどうする?」


「うーん、悩ましいな、まあ、拒否するよ・・・でもリアが一番好きなんだよな」


「そうなんだ、リア様が一番好きなんだ、じゃあマリア様達は好きなの?」


「そうだな、あいつらは俺がこの世界に来て初めて出会ったこの世界の人間なんだよ、だからか特別な感情は持っていたし、ひたむきに俺の事を慕ってくれる態度に愛おしく感じたことは確かだな」


「私が先に出会っていたら抱いてくれたかな?」


「それはわからないが、お前の事は嫌いじゃない、寧ろ好みだな」


「ほんとに?じゃあ今はそれで良しとしとこうっと、いつか私を抱きたいって思ってくれるように頑張るよ」


「そうか、まっ、頑張れ」

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