第33話 見られた、いいや見せつけた
俺達は王都の街中を散策しながら、屋台で串焼きを買って広場のベンチに座って食べる。
「なあ、今更なんだが、お前達は自らセイラ達に協力してるのか」
「そうだよ、ラノベ組は召喚された時からノリノリだったからね」
「ちょっ、リア、ラノベ組ってやめてよね」
「ぷっ、ラノベ組って・・・笑わせるなよ」
「もう、笑わないでくださいよ」
「悪い悪い。さっきもラノベの主人公がって言ってたからラノベ好きなんだなって思ってたよ、まあ俺も良く読んでたからな」
「えっ、そうなんですか、どの作品が好きですか?」
そこからしばらくラノベ談議で盛り上がる。
俺はこいつらが進んでセイラに協力している事を知り、セイラやソフィア達の事を知り、この国を滅ぼすことはやめとこうと思った。
「そろそろ帰るか」
「「「うん」」」
歩きながら美由紀が
「ところでさっき思ったけどアサトさんって容赦ないよね」
優子も
「うん、私もそう思った」
リアまでも
「なんせ聖女であるセイラを道端で土下座させたもんね」
「あれはあいつが勝手にやった事だろ」
「でも、知らない人が見たら聖女で王女のセイラが土下座で謝ってるんだから。
周りの人達って朝人さんの事を畏怖の目で見てたよ」
「そうなのか?」
「うん、皆なぜそんな事になっているかわかんないから、その状況だけで判断するんでしょ」
「はぁ、全部終わったらオルグに帰ろう」
「えっ、日本に帰らないの?」
リアがびっくりした様子で聞いてきた。
「だって、俺は元の世界では死んでるんだぞ。帰れるわけないだろ」
「そんなぁ・・・でも朝人さんがファルコンだって知られてないんでしょ、だったら人間として帰れば大丈夫なんじゃないの?」
「それはそうだけど、あの時の災害で行方不明と言うことになっていると思うし、そこにのこのこ戻ってもなあ、それにSNSで知られてるんじゃないか、優子たちだって朝人って名前に反応してたし、リア達もファルコンの時の俺に朝人さーんって呼びかけてだろ」
「うっ・・・たしかに叫んでたけど大丈夫だって、人の噂もなんちゃらって言うじゃない。
神隠しに遭ったと言うことにすればいいよ」
「でも、この世界には宇宙の禁忌もないし、住みやすいんだよ」
「あっ、それ聞きたいと思っていたんだ、それって何なの?」
「それは帰ってからゆっくり説明するよ、それにセイラの帰還魔法って召喚した奴らを戻す魔法だろ、俺は召喚されたわけじゃないから無理だろ」
「そうなんだ、一回セイラに聞いてみるよ」
そう言って俺はリア達の案内で王宮へ行くと、セイラが出迎えてくれた。
「ファル様、お食事はどうなさいますか?」
「そうだな、さっき串焼き食ったけど少しだったしいただくか」
「畏まりました、こちらへどうぞ」
俺は食事をした後、それぞれ部屋に戻り一息ついた。俺にあてがわれた部屋はオルグの時のような貴族が泊まるような立派な部屋だった。マリアやセラは元気にしているかなと思いながらあいつらとの情事を思い返していると、ドアがノックされ、
「アサト様、湯浴みの用意が出来ましたのでご案内いたします」
と、メイドが迎えに来たので付いて行く。
このメイド、13歳くらいだろうか、幼いのに品があり普通のメイドとは違うようだが、どこぞの貴族の娘が行儀見習いにでも来ているのだろう。
脱衣所で服を脱いでいると、メイドが出て行かないので聞いてみる。
「いつまでそこにいるんだ?」
「湯浴みのお手伝いをさせていただきます」
「そうか、ありがとう」
「いいえ、お客様をおもてなしするのも私共の役目でございます」
そう言いながらメイドが服を脱ぎ始めた。普通はお手伝い用の服だよね、背中を向けているが、なんで全裸になるのかな。うほっと思っていると、大きめのタオルを身体に巻きつけて隠しやがった。
まあ、当然だよなと思いながら浴場に入り風呂椅子に座って身体を洗おうとすると、メイドが手に石鹸をつけて背中を洗ってくれるが気持ちいい。さっきまでマリアやセラとの事を考えていたからか、俺の俺が元気になってくる。
「では、次に前を洗わせていただきますのでこちらをお向きください」
そう言って前で膝立ちになるメイド。
「頼む」
そう言いながら胸を張ると胸から腹へと手が降りてくる。腰に巻いてあるタオルが盛り上がっているのも気にせずに洗ってくれるが、よく見るとメイドの顔がほんのりと赤くなっており、呼吸も荒くなっている。
普通のラノベの主人公なら、浴場だから体温が上がって顔が赤くなっていて呼吸も荒くなっているだけだよねって思って手も出せないヘタレだろうが、俺はちゃんと分かっている、浴場だからじゃなく欲情していると。
「タオルをお取りしてもよろしいでしょうか」
なんだと、そこまで洗ってくれるのか、いくらなんでもそこまではと思い
「頼む」
そう答えてしまう俺だった。だがメイドがタオルを取ろうとした瞬間に風呂のドアがバーンと勢いよく開けられ
「何してるんですかアリア」
と、セイラが飛び込んできた。
「チッ、気付くの早かったですね、姉様」
俺の方がチッ、だよ。って言うか姉妹だったのね。
「当たり前です。ファ・・アサト様の事を陛下に報告している時の貴女の顔を見てたら想像つきます、それに何ですか、殿方の前でそんな格好をして」
「本当は自分だってしたいくせに」
「ちょっと待てセイラ、俺、裸なんだけど大丈夫か」
えっ、と言いながら俺を見ると顔が真っ赤になり、その場に座り込んでしまった。
俯いてハァハァ言っている。俺は心配になりセイラに近づき立ったまま声を掛ける。
「大丈夫か」
セイラは顔を上げたところで固まりその位置で俺を見続けているが、突如意識を失い倒れ込んだので、慌てて支える。どうしたのかと下を見ると、腰に巻いてあるタオルが無かった。
つまりセイラは元気になっている俺の俺を目の前でモロに見てしまい気絶したのだ。
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