第31話 変身してみた
俺は時空魔法を使い、全員を亜空間に連れて行く。
全てが白い空間だ、テレサの所をイメージしてるからな。
「ここは・・・」
「ここは亜空間だ、神界をイメージしている」
「ここがテレサ様のおられる場所と同じなのですか?」
「まあ、そんなところだ」
セイラが感動しているようだ。
「アサトよ、ここでれっどふぁるこんとやらを見せてくれるのか」
「ああ、ビビってちびるなよ」
「なっ、何を言ってる、1日2回もちびる訳無いだろ」
「「「「「2回もっ?」」」」」
「なっ、なんでもないから気にするなあ」
ソフィアが顔を真っ赤にして悶えている。
「朝人さん、変身してあの姿を見せてくれるんだよね」
「そのつもりだけど」
「うふっ、うれしい」
そう言いながらリアが抱きついてきた。
狼狽える俺。
「ど、どうしたリア」
俺ってただのファンだよね、ファンのはず。繋がってはいないはず。
「リアは貴方にぞっこんなんだから」
「そうだよね、最愛の人って言うくらいだし」
優子ともうひとりの美由紀って子が言ってくる。
「えっ、そうなの?」
今日出会った時に聞いた最愛の人ってマジだったんだ。
「そうそう、平山が告った時に死んだ奴の事なんかって言ったら、見てるこっちが凍ってしまうような冷たい目をして、憤怒の炎で焼き尽くさんばかりの勢いで文句言ってたもんね」
「あれは見てるこっちが怖かったよね」
「・・・そっか、ありがとなリア」
そう言いながら抱きついているリアの頭を撫でる。
「にゃあ」
ネコのような声を出し、頭を俺の胸にグリグリ擦りつける。
かわいい、かわいくてたまらないが
俺はリアに残酷な現実を突きつけなければならない。
もしかしたらリアを傷つける事になるかもしれないが、
これだけは言っておかないと後悔する。
俺は意を決して言う。
「俺って犬派なんだけど」
そう言うと、リアは一瞬固まるが、何事もなかった様に
「くうーーん」
って言い換えてグリグリしてくる。更にかわいい、かわいくてたまんないけど、
お前、ネコ派じゃないのか、なんだその見事なまでの手のひら返しは。
そう思いながらも甘えてくるリアの頭を撫でていると、俺ってリアの最愛の人って言われたが、リアってアイドルなんだよな、ファンを裏切るような真似はさせたくないし、アイドルを辞めさせるなんて以ての外だ。このまま元の世界に戻れないのなら、
リアとこの世界で暮らすって事も出来るが帰れるらしいからダメだな。
なんか平山って奴から睨まれてるし、なんでかセイラとソフィアからもジト目で睨まれている。平山から睨まれているのは分かる、リアに告ったみたいだしな、でもあの2人は何でだ?もしかしてあいつらに言った言葉を鵜呑みにしているのか、
抱きしめてやったり、お姫様抱っこしてやったりして
ちょっと甘い言葉を囁いただけで俺に惚れたか。
まったくちょろい女達だと、リアに抱きつかれたまま考える。
しばらく抱きつかせたままでいると、セイラがつかつかとこっちにやってきて、
「リア、いつまで抱きついているのですか、貴女のせいで話が進まないんですけど」
えらく刺のある言い方だなと思っていると、ソフィアまで
「癒しの勇者様、もういいでしょう、お離れになってください」
「ちょっとリア、いいかげんにしたら」
優子までもが言ってきた。
「ちぇっ、皆ケチだ」
そう言いながら離れるリア。
「では、アサト様、そろそろよろしいでしょうか」
「ああ、ホントは見せるもんでもないんだがな」
俺は皆から少し離れ向き合う。巨大化したら踏み潰すかもしれないしな。
俺は顔の前で腕をクロスさせて、腰のところまで振り下ろす。
「ダァァァ」
その瞬間に俺は光に包まれ、見ている奴らは腕で顔を覆って光を遮る。
光が治まってくると、そこには身長60mの正義のヒーローレッドファルコンの姿があった。
リアは頬を染め、目を潤ませて見上げている。他の勇者達も感動しているようだ。
この世界のセイラ、ソフィア、ザック、ミラは見上げたまま驚きのあまり尻餅をついて、その姿勢のまま固まっている。よく見るとソフィアはワンピースだったからスカートの中が丸見えでおまけにちびっていたが見なかった事にしといてやろうと、こっそりとクリーンの魔法をかけといてやる。
もういいかと変身を解いて朝人に戻ると、リアと優子が飛びついてきた。
「すごーい、本物だ、本物だぁ」
「ちょっと優子、なんでアンタまで抱きついてるのよ」
「私達は本物見るの初めてなんだよ。TVとかでは何回も見たけどさ、やっぱ感動するじゃん」
おいおいと思いながら2人を抱きしめてやる。
すると、セイラが駆け寄ってきていきなり土下座する。
「今までのご無礼大変申し訳ありません、何卒何卒お許しくださりますようお願い申し上げます」
いきなり何言ってるんだと思いながら
「どうしたんだセイラ、顔を上げろよ」
「いいえ、とんでもございません、まさか戦いの神ファル様とは思いもよらず、大変失礼な物言いをしてしまいました。何卒お許しを」
俺がファルってどういう事だと考えていると
「お許しは・・・していただけないのですね、かくなる上は私の命で償わせていただきます」
そう言うと身体を起こし、どこから取り出したのか、護身用と思われるナイフを両手で逆手に持って、自分の首に突き刺そうとしたので、慌ててリアと優子を引き離し、一瞬でセイラの元へ行き突き刺さろうとしていたナイフを押さえ止める。
「お願いします、止めないでください・・止めないでぇ」
ダメだ正気を失って暴れ叫んでいる、面倒くさくなった俺は、セイラの口を俺の口で塞ぐ。
「うぐっ」
目を見開いてなすがままのセイラ。セイラの口内を蹂躙しつくして口を離すと、
セイラの顔は真っ赤に染まり目尻に涙を溜めたまま口を半開きによだれを垂らして惚けていた。
その時、背後から殺気を感じ取る。ここは俺が作った亜空間だ、そこに入り込んで身の毛もよだつような殺気を放つとは只者ではない。まさか魔王か。
俺は意を決して振り返ると、そこにはさっき聞いたような氷の目をしたリアがいた。優子とソフィアも冷たい目で俺を見ている。
リアはわかる、勘違いしてるソフィアも何となくわかる、でも優子よ、なぜお前もそんな目で俺を見るんだ。そう思っていると、にっこり笑いながらリアが近づいてくる。笑顔だが目は冷たく俺を射抜いている。
俺は惚けているセイラを放置し立ち上がる。
「朝人さん、今何していたのかな?」
「いや、取り乱していたセイラを宥めていたんだが」
「キスしてたように見えたんだけど」
「狂乱している女を宥めるには、あれが一番なんだ」
「ふーん、セイラって美人だもんね、しかも巨乳だし、朝人さんがどさくさに紛れてキスしたい気持ちになってもしかたないよね」
「いや、あれは人工呼吸と同じようなもんだし、俺が本当にキスしたいのはリア、お前だけだぞ」
「えっ・・・・ほんと?」
「ああ、前から言ってるだろ、大好きだって、愛してるって」
リアのSNSに良く書き込んでいた。
推しのアイドルに好き好き言うのって普通だよね。
「うへへっ、いやだなあもう、恥ずかしいじゃん」
身体をくねくねさせながら頬に手を当て顔を真っ赤にして照れている。
こいつもちょろい女だった・・・
「アサト、お前聖女であるセイラ様にキスするなんてちゃんと責任取るんだろうな」
ソフィアが詰め寄ってきた。
「キスくらいで責任って何言ってるんだ」
「何言ってるんだって、お前、セイラ様は聖女であり、王女なんだぞ」
それを言うならマリアやセラはどうなるんだ、あいつらキスどころか
俺に全てを捧げても責任取れなんて一言も言わなかったんだが。
それどころか、俺に孕ませてくれとまで言ってたからな。
「だからなんだってんだ、俺にどうしろって言うんだよ、このお漏らしちゃんは」
「なっ、何を言っている」
「しっかり見えてたし、乾かしてやったの俺だから」
「・・・・くっ、殺せ」
「うわあ、すごーい、本当にくっころって言う人がいたんだ」
美由紀が珍獣でも見るような目でソフィアを見ていた。
「それに、俺達の世界ではキスは挨拶って国もあるんだぞ」
頬にだけどな。
「キスが挨拶だと。なんて淫らな世界なんだ・・・・だが、こっちでは唇を許すのは結婚した相手だけだ、それを結婚もしていない男に奪われるなど、聖女様は傷物になってしまわれた」
「じゃあ、結婚もしていない男の前でお漏らしするのはいいのか」
「くっ・・・・・」
何とか言ってみろとソフィアを見ていると、いつの間にか復活したセイラがこっちに来て俺を見上げながら
「アサト様、いいえファル様、先程は取り乱した姿をお見せして申し訳ありませんでした」
「それはもういい、だがファルと言われても俺はこの世界に来たのは今回が初めてだし、まったく心当たりはないぞ」
「そうでございますか、ですが貴方様の見紛うことのないあのお姿。戦いの神ファル様其の物でございます」
「とりあえず一回会議室に戻ろう」
「はい」
俺は魔法を解除してギルドの会議室へ戻る。全員席に着くとセイラが話し始める。
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